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五年目の飽食

作者: 泉田清

 田圃道をボンヤリ走る。「今年もあっという間ですね!」カーステレオから、お馴染みのセリフが聞こえてきた。赤信号で止まる。巨大な十字路。青になった。右折してすぐ、白いスニーカーが落ちているの発見した。誰かの落とし物か?今は先を急ごう。友人とのドライブに遅れてしまう。


 友人宅には五分遅れで着いた。彼が乗り込む。「おお、久しぶり」五年来の付き合い。彼とのドライブは彼を拾うまでがピーク。彼はとにかくしゃべりまくる。物価高騰、世界紛争、加齢、不味い料理、「全て政治が悪い!」の極論に至る。ウンザリだ。とはいえ、友人と呼べるのは彼しかいないのだった。


 昼過ぎ、市街付近の国道を走る。黄色い看板が見えてきた、いつものラーメン店の。流行りの店で時間をずらしていかないと行列ができる。彼と月一で会うとして一年で十二杯、五年で六〇杯。はあ。「昼はどうする?」という会話もなく、ラーメン店にハンドルを切った。

 車を降りる。辺りを見回す。ラーメン店の後ろには川が流れている。いつだったか、この国道沿いにある靴屋に彼といった。そこで一足のスニーカーに一目ぼれした。車に戻るなり「いや、いい買い物をした」思わず声が出た。しかしこのスニーカーに合わせる服が無い。「このスニーカーに合うものってなんだろうな」、「オレに聞かれてもなあ」ファッションに興味のない彼はウンザリ顔で応えた。


 六十一杯目を食べ終え我々は店を出た。「ちょっと行ってくる」彼が隣の公衆トイレに駆け込む。見晴らしのいい川の向こうには、青い山が霞んで見えた。国道、黄色い看板、公衆トイレ、背後には五年前から続く、お馴染みの景色が並んでいる。危機感を覚える。何か、何か変わったことは無いか?と、公衆トイレの奥に柵が覗いた。何のための?近づくと柵の向こうに橋があった。こんなところに橋があったなんて!気づかなかった。川の向こうへ行くのだ!使命感に駆られる。が、そのための一歩が中々踏み出せない。橋を見つめる。橋が伸びていく気がする。ドンドン伸びる。向こう側が遠ざかっていく・・・


 いつだったか。ボンヤリと、十字路へ向かっていた。曖昧にアクセルを踏む。「今年もあっという間ですね!」カーステレオからはお馴染みのセリフ。どこに行くんだったかな。まあいい。信号が青になった。右折してすぐ、何か落ちているものを発見した。それは白い、白いーーー


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