自由にしてくださりありがとうごさいます。
「レティシア・フローレンス、貴様との婚約を破棄する!」
学園の卒業パーティーの最中、第一王子のフィリップ様が叫んだ。王子の視線は婚約者である私、レティシア・フローレンスに向いている。周りの人たちは突然の王子の宣言にとまどっているようね。私は王子に視線を向ける。彼の腕にはかわいらしい薄桃色の髪の少女がくっついている。
なんども見たことのある光景だ。……画面のなかで。
私には前世の記憶がある。記憶がもどったのは6歳になったばかりのとき。そして、ここが前世でプレイしていた乙女ゲームの世界であることに気づいた。私が転生したのは悪役令嬢だった。ヒロインが第一王子ルートに進むと2人の恋を邪魔してくる王子の婚約者。
第一王子を攻略すると、レティシアはヒロインをいじめたとして国外追放になる。レティシアは公爵家の令嬢である。子どものいじめごときで国外追放になるなんて普通あり得ないが、そこはご都合主義ということで…。
王子と私が婚約したのは、私たちが8歳の時。殿下のことはタイプでもなかったし私にはすでに好きな人がいた。
しかし、第1王子と公爵令嬢である私の婚約は、政略であり回避は難しい。何より私のことを大切にしてくれている家族に迷惑はかけたくなかった。
だが、私は気づいてしまった。ゲームの時間が始まって王子がヒロインと恋におちれば私は婚約破棄されて自由になれることに。
「…ア、聞いて……か!レティシア!!!」
いけない、今は悪役令嬢の断罪の場だった。
「申し訳ありません。殿下が予想外のことをおっしゃるので呆然としておりました。」
嘘だ。王子が卒業パーティーで婚約破棄をすることは知っていた。
「ではもう一度言ってやる。貴様との婚約を破棄する。」
私は婚約破棄がおこなわれるように陰からヒロインと王子の出会いや逢瀬のお膳立てをし、情報操作によって事を円滑に進ませ、達成したあとの計画も考えてきた。
最後の仕上げだ。気を抜かないでいこう。これで私は自由になれる。
「婚約破棄は受け入れます。ですが、理由をお聞かせください。私はなにか殿下の気に障ることをしてしまったのでしょうか。」
「しらじらしい。貴様は俺がマリアのことを気にかけているのに嫉妬して、彼女のことをいじめていた。」
「なっ!私はそんなことしておりません!信じてください‼」
「言い訳しても無駄だ‼証拠や証言はそろっている。」
私はいじめをしていない。情報操作をし、いじめの主導をしていると思わせただけ。王子と親密にしていたら多くの女子から恨みを買うのは当たり前。私が手をまわさずともヒロインへのいじめは起こっていた。実際、私が彼女と関わったのは報告書の文字がほとんどで、話したこともない。
私はマリアをじっと見つめる。私は冷たい、キツイと思われやすい顔をしている。なので、見つめ続けると睨んでいるように見えるらしい。
「ひっ」
効果はてきめんね。王子はマリアの前に立って背に隠すと、私を睨んでから彼女に声をかける。
「大丈夫だマリア、俺が守るから」
あら、私にはそんな気遣う言葉をかけたことないくせに。それに優しい顔まで向けちゃって…。
「彼女が受けたいじめには命にかかわる危ないものもあった。そんな奴をこの国においておくことはできない。」
パーティー会場にいるすべての人が王子の言葉に耳をかたむける。
「レティシア・フローレンス公爵令嬢、お前を国外追放にする。直ちにこの国からでていけ!」
「……わかりました。」
頭を下げながら、私は笑みを浮かべる。




