奴隷のやきもち
最近、シロとイチャイチャしすぎて生活がままならない。
ここらで立て直さないと、授業も遅れ気味だ。
少し気になるのは、シロのこと。
付き合い始めたのは良いけれど・・・すごく良いけれど、今のままだとシロは外に出られない。
俺が外に出られないから。
シロの将来・・・
俺の将来・・・
これまでやりたいこととか、なかった。
働きたいとは思わないし。
就職なんて嫌なイメージしかない。
俺は誰にも会わずに、誰とも関わらずにこの部屋で静かに過ごしたかった。
だけど、シロと出会ってしまった。
付き合うことにしてしまった。
そしたら、シロの将来を輝かしいものにしたい。
し、幸せにしたい・・・
柄にもなくそんなことを考えてしまった。
ただ、外には出たくない・・・それも本当だった。
*
昼過ぎに大家さんがまたお菓子を持ってきた。
最近あんまり来なかったけれど、久々に来た。
シロが俺以外の人間と話す貴重な機会。
「こんにちわーシロちゃん!今日もお菓子持ってきたわよ!あがっていい?」
「いいよー」
「神様もこんにちは。お邪魔しますね」
「あ、はい。どうぞ」
大家さんは20代後半の女性。
確か名前は姫川さんだったか。
黒髪のきれいな人だ。
ニートなんて卑下して言っていたが、ちゃんとした女性だ。
シロがいなかったら俺は挨拶以外の会話をすることは無かったろうな・・・
大家さんはテーブルの椅子に座った。
いつもここに案内する。
「かみさま、アレしていいですか?」
「ああ、頼む」
「アレも出す?」
「ああ、せっかくだしな」
「・・・」
「あれ?どうしたんですか?大家さん」
「甘い!甘いわ~!」
大家さんがテーブルに突っ伏した。
急にどうしたというのか。
「はい、どうぞ」
シロがコーヒーを淹れて大家さんに出した。
「シロが特訓した成果です」
インスタントだけど。
「まあ、それは味わっていただかないと」
「あと、これも」
シロが冷蔵庫から、ヨーグルトチーズケーキを持ってきた。
コンビのスイーツを買いに行けなかったので、それに近いものをお取り寄せしていたのだ。
「まあ、ありがとうございます」
「コーヒーに砂糖とミルクはいりますか?」
「もう、甘々だから、この上お砂糖が出てきたら、お姉さんどうにかなっちゃうわ!」
大家さんはブラックでいいらしい。
ヨーグルトチーズケーキはそんなに甘くないというのに。
あとでやっぱりいるとかいうのかな?
3人でケーキを食べながら、どうでもいい話をする。
シロは俺のすぐ横でぴったりくっついている。
俺だけ折り畳み椅子に座っているので、少し高い位置に座っているのだが、シロの片手は常に俺の膝の上に置かれていた。
「神様、シロちゃんと何かあったでしょう?」
「え?いや、別に・・・」
できるだけ冷静に答えたが、大家さんの問いに俺はきっと赤くなっていたに違いない。
「もう、甘々なのよ~。空気というか、雰囲気というか・・・独り身には毒だわ」
大家さんは何のことを言っているのか。
珍しく俺と大家さんが会話していると、シロが割って入るように俺に抱き着いてきた。
『大家さんと話すのは私だ』的な感じか?
「うわー、ほんとに甘いわぁ。シロちゃん、大丈夫よ、大事な神様を取ったりしないから」
シロと大家さんだけは話が通じているみたいだ。
ヤバい。
俺ってコミュ障なのか?
それともガールズトーク的な?
男には分からない系の話なのか?
ちょうどその時テレビから、またあのコンビニスイーツのCMが流れてきた。
「あ、あれ知ってる?人気みたいなのよね。ヨーグルトのケーキ?」
「へー、そうなんですか。あ、もうすぐ販売終了だ。期間限定か。」
いいのかこれで。
恋人同士になったというのに、好きな子をデートにも連れていけないし、食べたいと言っているコンビニスイーツすら買ってやれない俺で・・・
シロもCMを見ていた。
俺の視線に気づくと、シロは少し慌てたようにケーキを食べ始めた。
ああ・・・気を遣わせてるな・・・
「あ、あれ、今晩あるの知ってます?」
また大家さんがテレビCMについて話題を振ってきた。
テレビに視線を送ると、家出人捜索の特別番組の番宣だった。
コミュニケーション能力高いなぁ。
どうでもいいCMで話題を振ることが出来るなんて。
「私、ああいうのとか、警察24時とか好きなんですよぉ」
「へー」
「家族に感情移入して見ちゃうの」
「はは、大家さん、良い人なんですね」
「え?そうかな?」
「俺なんてあんまり好きじゃなくて・・・」
「あら、そうなの?ごめんなさい」
「あ、すいません。そういう意味じゃなくて」
街で酔っ払いが暴れたり、おじさんが家族を置いて蒸発したり・・・何だか気持ちは良くないので苦手なのだ。
大家さんはシロと色々話して30分くらいしたら帰って行った。
きれいな人で、コロコロ笑う。
胸も大きいし、きっと多くの人に好かれるだろう。
ただ、その大家さんと話している間、俺が考えていたことは、ヨーグルトのケーキのことばかり。
シロに食べさせてやりたい。
せっかく、積極的に好きなったヨーグルト。
そして、興味を持ったケーキだ。
大家さんが帰った後、シロが抱き着いてきた。
「どうした?」
「かみさま、大家さんのこと好き?」
「うん?まあ、普通かな」
「シロとどっちが好き?」
ああ・・・これは・・・YAKIMOCHIだ!
こんな俺にやきもちを焼いてくれているのか。
そして、俺が考えていたことは『ヨーグルトのケーキ』のことだし・・・
うわー、はずかしー。
シロが首に回した手はそのままにして、シロの腰に手を回して抱きしめた。
「シロ、俺はシロが大好きだから心配しなくていいよ。大家さんは嫌いじゃないけど、普通だ。シロのことは好きの上の大好きだから」
シロが、花が咲いたように笑顔を見せる。
「ほんと?シロもかみさま大好き!ちゅーする?」
「んー、ちゅーする」
(ちゅっ、ちゅちゅ)
シロといる時はヨーグルトのケーキのことは考えていなかった。
1日4回更新になりました。
朝6時、昼12時、夕方は18時、夜は21時です。
よろしくお願いします。




