奴隷と算数
シロが教育番組を見るようになった。
最近は比較的調子がいい。
以前よりもトラウマが少なくなったような気もする。
朝は一緒にご飯を食べるので同じくらいの時間に起きる。
ご飯の間、情報番組を見ているので、シロも見るようになった。
夜逃げした人のニュースなどは見たことがないので、情報番組でもシロの親が出ることはない。
どんな気持ちでテレビを見ているのだろうか。
その後、俺は部屋の掃除をしたり、洗濯をしたりする。
シロも手伝ってくれるけれど、退屈な時間もある。
そんな時に、シロが教育番組を見るようになった。
他に見ていて面白い番組がないので、消去法で見るようになった気もするが・・・
「かみさま、教えてください」
「ん?何を?」
「算数って何ですか?」
「ん?哲学かな?」
「面積ってどんなときに求めたくなるんですか?」
「ああ、日常生活でってことか」
「はい」
「テーブルの面積とか求める時、縦と横の長さが分かったら・・・とか?」
「シロは、テーブルの面積が求めたくなったことがないです」
「あぁ、俺も」
「「・・・」」
待てよ、面積って何かで必要としたか・・・?
社会に出たら必要になるか?!
そう言えば、数Ⅰの二次曲線とか、その接線も日常生活で求めることってないな・・・
微分って傾きを求めて、積分って面積を求めるやつだったけど、学校以外では見たことない。
必要な知識なのか!?
日本の教育はスパイでも育てようとしているのか!?
「かみさま、分数も・・・」
「分数は任せろ。リンゴに例えると分かりやすい」
「1/2は・・・」
「シロと俺で2人だろ。リンゴを分けると1個を2つに分けて、その1個がシロの分で1/2だ」
「にぶんのいち・・・1/2×1/3は?」
「リンゴが半分しかない時、3人で分けた1人分ってことだ」
「?」
明らかに「ハテナ」が頭の上ににゅるーって出てる。
「リンゴが半分しかないとするだろ」
「はい」
「そこに、俺とシロと大家さんがいたとして、3人で食べたいときは、3つに割るだろ?」
「大家さんが帰ってから食べたらシロとかみさまで食べられます」
「うん、まあ、そうだけど、それだと1/2×1/2ってことになるな」
「にぶんのいちのにぶんのいち・・・」
「そそ。元々のリンゴから考えたら1/4ってことな」
「よんぶんのいち・・・」
時間はかかるけれど、理解は出来そうだな。
シロはしばらく紙に何個もリンゴを書いて考えているようだった。
小学生の子供を持つ親の気分ってこんな感じ?
俺は子供にちゃんと算数を教えられるだろうか。
一応大学生だし、自信はあるぞ。
「かみさま、分数の割り算はどんな時に使いますか?」
分数の割り算?・・・分母と分子を反対にしてかければ答えは出るけれど・・・
待てよ、割り算ってなんだ?
1/2は、1つのリンゴを2人で分けると、1人分が1/2個になるってことだから、1/2÷1/3は、1/2のリンゴを1/3人で割ると・・・ちょっと待て1/3人ってどういうことだ!?
胸から上部分くらいがないな。
そいつは死んでるな。
リンゴ必要ないだろ。
「シロ、すまん。俺では分数の割り算をリンゴで表せない・・・」
「そうですか・・・」
「いや、待て夕方まで待ってくれ。考えてみる」
「はいっ」
シロは仕舞いには実際のリンゴを出してきて、2つに割ったり、4つに割ったりしていた。
ナイフで手をケガしないか心配になって答えは少し遠のいた。
世のお父さんは小学生の子供にどうやって分数の割り算を教えているんだ!?
すげえな、世のお父さん、お母さん。
ちなみに、分かりやすい答えは『1/2÷1/3をリンゴで表すと、1/2のリンゴの中に1/3のリンゴは何個分入っているか』ってことだった。
念のため、解き方は、通分して『3/6÷2/6』となって、(3/6)/(2/6)となり、分子と分母に6をかけると3/2となる。
こんな難しいことに気づくなんてシロすげぇな。
とどめとして、『それはどんな時に使いますか?』と聞かれて答えられなかった。
俺とシロの中では『算数は不要』なものとなった。
シロは安心してリンゴを食べている。
現代の日本の算数は、シロに負けたのだった。
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