はじめの一歩
よろしくお願いします。
「「「ごちそうさまでした」」」
「にゃ~」
あぁ念願のフルーツタルト、やっぱり美味しかったぁ、満たされた~
二人もすごく美味しかったようで、無言で食べ進めてた。本当に甘いの好きなんだ。ふふっ男の人が甘い物好きなのって何かいいな。
ケーキを食べ終わってしばらくして、パンを紙袋に入れてゼファイルさんに手渡す。
「こんなに沢山、ありがとうございます」
「オーブンも2台あったので、手で捏ねられる限界の量で作りました」
「そうでしたか。あれ、こちらのパンは昼に食べたのとは違いますね」
「あ、それはイングリッシュマフィンなんですけど、横に切って卵や野菜とか挟んで食べたり、バターにハチミツかけて食べても美味しいんです。同じのだけじゃつまらないかと思って、と言うか私が食べたいって思ったものを作っちゃっただけなんですけどね」
「えー、みこちゃん、それ私も食べたい~」
「もうベリアルさん、私も結局食べてないので明日また作りますから、そのとき一緒に食べましょ」
「はぁい」
素直に返事をするベリアルさん可愛い。
「それでは私は帰りますが、後日このパンを食べた方がどうだったか報告に参ります。その結果によっては、美琴さんにまたパンを作っていただきますのでよろしくお願いします。それと、あのですね。あの、ケーキもまた作るようなら、えー、ぜひ食べさせていたただけたらと...」
歯切れの悪いゼファイルさん、ケーキ気に入ってくれたんですね。
「ふふっ、わかりました。その時はまた一緒にお茶しましょうね。ベリアルさんもゼファイルさんがいると楽しそうですし」
「えーっそうかしら。とにかくゼファイルお願いね。このパンを王宮の人が食べて、みんなが元々持つエネルギーを解放できれば、更なる道が開くわ」
私が出来る第一歩、上手くいってくれるといいな。
「ゼファイルさん、私からもよろしくお願いします」
「しかと受け取りました。それでは」
とにかく私のいま出来ることはした。もしダメだったら...って不安もあるけど、そのときはまたその時考えればいいんだ。勢いで行動しちゃったから、落ち着いてきたら気が緩んで何か色々と感情が出てきた。
うーん、自分に言い聞かせてもなんだか落ち着かない。
「みこちゃん、大丈夫よ。みこちゃんの作るパンは美味しいんだから、一度食べてダメでも何回だって食べてもらえばいいのよ。私は昨日今日ってみこちゃんの作る食事やケーキを食べて、とてもエネルギーが満たされて元気になったわ」
そう言いながら頭を撫でてくれた。あぁ何でこの人はこうも私が欲しい言葉をくれるんだろう。ダメだ涙腺が緩んてくる。
いままでは失敗することが怖くて、ダメな自分を否定するだけで何かをすることが出来なかったけど、失敗したっていい、失敗しても、もう一度頑張ればいいんだ。
いまはただ弱い自分を認めて、いまは素直にベリアルさんの優しさに甘えよう。
「ベリアルさん...ありがとうございます」
半泣きでお礼を言う。
すっと、心が軽くなるのを感じた。
どうもありがとうございます。