初めての友達
新キャラ増えます。
やっと女の子がきた。
「さあ、みこちゃんこのお店よ」
「うわぁ、可愛いお店~」
広場から少し歩いたところに、白壁にアイビーのツタが程よく伸びていて、小窓にオシャレな木のドア。お店の前には寄せ植えした鉢植えに、アンティークな椅子、ウェルカムボードも飾ってある素敵なお店があった。
「気に入った?」
「はいっ!中に入るのが楽しみです」
「ここのお店には私の作った洋服も置いてもらっているの。それにみこちゃんと同い年かしら、リリーがいるから色々と相談に乗ってもらうといいわ」
そう言ってベリアルさんのお店の中に入って行った。
「いらっしゃい!あらベリアルさん久しぶり、新作できたの?」
お店に入ると私と同い年位の、桜色の髪を2つに分けて、ふんわりとした三つ編みに結った可愛い女の人がいた。
すごく可愛い子。自然な桜色の髪、素敵~。
「ふふっ今日は違うの。リリー、この子に必要なものを揃えてあげて欲しいの」
リリーさんが私を見た。
ドキッとして身体に緊張が走る。いままで周りと上手く馴染めなかったせいで女の人、特に同年代の人と話すのは苦手だったりする。
「やだ~っなにこの可愛い子。この辺りには見ない顔だね、名前聞いていい?私はリリー、ここは私のお店でね、主に洋服やアクセサリーとか身の回りのものを売っているの、よろしくね」
リリーさんは笑顔で話しかけてきてくれた。
「あ、えっと、私はあの、美琴って言います。えっと、今日からベリアルさんのお店に置いてもらえることになりました。あ、この子はジルです。よろしくお願いします」
「にゃー」
ジルも挨拶をした。
「あは、緊張してる、可愛い~。みことって呼んでいい?私のことはリリーでいいよ。歳も近そうだし、嬉しいな~。ジルもよろしくね。ベリアルさんのお店可愛いよねぇ~」
リリーさん、いや、リリーはすごく元気で気さくな女の人だった。思わず自然と笑みがこぼれる。
「リ、リリー」
「なあに?みこと」
リリーさんが笑顔で返事をしてくれた。物心ついてからは名前でしかも呼び捨てでお互いに呼べる友達なんていなかったから、こそばゆい感じもするけど嬉しい。
私が照れて顔を赤くしてわたわたしてしまった姿を見てリリーが笑った。釣られて私も笑って、いつの間にか自然に緊張も解けていった。
「リリーはね、基本誰とでも自然に話ができるし、リリーがいるといつの間にか空気がよくなっちゃうのよね。だからかしらね、闇の影響をあまり受けなかったみたいで、私の野菜食べてもらっていままで以上に元気になっちゃったのよね~」
「あはは、いままで以上は言い過ぎ。深く考えるのが苦手なだけだよ、楽しいことが大好きだし、人と話すのも好きなの、自分の知らない色々なことを聞けるとワクワクするじゃない!」
「リリーのそういうところいいわよねぇ」
「でしょ!自分でもそう思う」
「あらあら」
二人が楽しそうに話している姿を見る。
「...」
リリーの明るさに触れて、自分の中の嫌なドロドロしたものを感じる。リリーは自分がなりたくてもなれなかったものを持っている人だ。
どうしよう、自分の笑顔が段々と不自然になっていくのがわかる。顔上げていられなくてうつむき始めると...
ぷにっ。
突然リリーに両方のほっぺをつままれた。
びっくりして顔を上げると
「みこと、ダメだよ」
「えっ」
「そんな顔しちゃダメ。急にどうしたの?何か嫌なことあった?それならちゃんと話聞くから話してよ。そんな顔してたら幸せ逃げちゃうよ。幸せはね、幸せにしている人のところにくるんだよ。笑顔でいると笑顔が集まるの、だからみことも笑わって、可愛い顔しているのに暗くしてたらもったいないよ」
「リリー、リリーは何でそんなに優しくしてくれるの?私、リリーの明るさが羨ましくて、私がほしかったもの持ってるリリーのこと...妬んだの、ごめんなさい」
「みこと、みことはずるい」
「へ?」
「私だって、みことみたいに胸が大きかったらいいなとか、見て私のこの絶壁」
あ、確かにまっ平...
「あ、いままっ平って思ったでしょ」
「いや、あの、えっと...」
「それに髪の毛も真っすぐでツヤツヤしてて羨ましい、私どうしても広がっちゃうから、こうして三つ編みにしたりして、結わいているの。みことみたいにおろしても広がらない髪の毛羨ましい」
「えっリリーの桜色の髪の毛すごく可愛いくて、いいなって思ってた。ふわふわな髪も可愛いし」
「ふふっありがとう、私もこの髪色はすごく好きなの」
あ、素直。思わず笑みがこぼれた。
「ほら、笑ったみこと可愛い。それにそう言うと顔を赤くして照れるところも可愛いって思うし、みことにはみことの良さがちゃんとあると思うよ。もっと自分のいいところたくさん見つけてられていないだけだと思うよ。だから自分の嫌なところにばっかり目が行って、自分はダメなんだって思っちゃうんじゃないのかな」
「私のいいところ...考えたことなかったかも...」
「ほーら。もっとみことのいいところ見つけていってそれを受け入れて、それを伸ばしたらもっと自分に自信が持てると思うな。それにぶっちゃけ長所も短所も紙一重なんだから、人によっては私みたいなのうるさくて嫌だって人もいるだろうし、もちろん元気でいいねって言ってくれる人もいるけどね。だからどの角度からみるかによって全く違うんだよ」
リリーに言われるまで、自分のいいところなんて考えたこともなかった。卑屈な自分を責めることしかしてこなかったことに気が付いた。
目から鱗とはこのことかな。
「リリー、私、自分のいいところ見つけられるかな?」
「大丈夫、絶対に見つけられるよ!」
「リリーはすごいな。やっぱり羨ましいよ」
「ふふっありがとう。私が人と話すのが好きなのって自分と違うからなんだよ。みんな自分と全く同じだったら逆に怖くない?気持ち悪いよ~、みんな個性があるから素敵だし、話していて楽しいんだって感じるの。今日もみことと話せて楽しいよ、これからみことが自分のいいところどんどん見つけて変わっていく姿、いまから楽しみだもの!」
「リリーありがとう。私リリーに出会えたことが最高に幸せだって思うよ」
「ふふっ」
「やっぱりリリーはさすがね。何なのかしらね、リリーに言われるとそうかって素直に受け入れちゃうのよね。不思議よね~」
「ベリアルさん、おだてても何も出ませんよ。いいえ、むしろもらいますよ」
「あらあら、うふふっ」
ほんとリリーさんて不思議な人。私の悩みが何だかすごく小さいものに思えてきた。いいところ探し、楽しみになってきた。
それから女の子同士の話もしたいからと、ベリアルさんにはお店の外の椅子で待っていてもらった。
リリーに相談しながら必要なものを色々と揃えてもらった。リリーとは気が合うみたいで話をするのは楽しくて、いつものように相手の顔色を伺うことなく自然に話が出来るようになっていた。
リリーに異世界から来たことも話したら、あっさり信じてくれて、異世界ってどんなところと目をキラキラさせて聞いてきたけれど長くなりそうだから詳しい話はまた今度お茶をしながら話そうってことになって次合う約束した。まさかこんなに仲良くなれる女の子の友達ができるなんてすごく嬉しかった。
「ベリアルさん、ありがとうございました。結局全部買っていただいちゃって、ちゃんと働いてお返しします」
「いえいえ、女の子は色々と必要だしね。リリーともお友達になれたみたいでよかったわね」
「はい!今度お茶会をする約束もしました。いまから楽しみです。ベリアルさん、リリーに会わせてくれてありがとうございます」
私は嬉しさを隠せずにしばらくの間、ずっとニヤニヤ、にこにこしっぱなしだった。
そんな私をジルもベリアルさんも何も言わずに優しく見つめていた。
「さあ、暗くなる前にお家に帰りしょう。私お腹空いちゃったわ」
「はい、夕食の下準備は出来ているので帰ったらすぐに用意しますね。あと、デザートにプリンもありますので一緒に食べましょう」
「プリン、わぁ楽しみ♪」
「にゃー」
その後、ベリアルさんとジルと夕食を食べて、美味しいってすごく喜んでもらえた。
3階の屋根裏部屋を私の部屋にしてくれて、隠れ家的空間、うん最高です。天窓から見渡せる星空がすごく綺麗で、星空を見ながらここに来るまでのことを思い出した...
突然、人生がいままでとは全く別のものになった。でも新しい人達との出会いや、たくさんの初めての経験をして、気付いたことがたくさんんあった。
お母さん気質の頼れるベリアルさん、真面目で面倒見のいいゼファイルさん、そして一緒にいると元気になれるリリー。
私のいいところを褒めてくれて、ダメなところもちゃんと言ってくれる、素敵な人達。私も自分の素敵ないいところをたくさん見つけたら、ちゃんとお返しができるといいなって思う。
それに、お城で会ったアインスさん...私は森に捨てられたのに、何故か恨む気持ちになることはならなかった。むしろ私みたいに、アインスさんにも何か変わるきっかけがあればいいのにって思ってしまう。
そして、私は何かを決めてやるってことはこんなにも心が動かされるんだって知ることができたから、明日はどんな1日にしようかと、新たな人生に心躍らせながら眠りについた。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。