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この木何の木気になる木

「あのベリアルさん。お願いがあるんです」

「なぁに?」


 私は食器を片付け終わってから、さっき思ったことを緊張しながら話してみる。

「あの、先ほどベリアルさんは家の裏で畑をやっているって言ってたじゃないですか。それであの、プレジールの種を植えたらどうかなって思って、だから、いえ、植えてたいんです。お願いします」


「そうねぇ育てば大きな木になるから、少し離れたところになら植えてもいいわよ」

「ほんとですか!嬉しい~ありがとうございます。いまお時間ありますか?早速行きましょ」


 ベリアルさんを半ば強引に連れ出し、裏の畑に行く。

 そこには広い畑にすごく立派な野菜や薬草、果実などが生っていた。

「これ、ベリアルさんが一人で育てているんですか?」

「そうよ、すごいでしょ。意思の力のこと話したでしょ。植物は特にその力を大きく影響しちゃうの、だから他の人に任せたくなくて全部自分でやっているのよ。大変なこともあるけれど、私、野菜の気持ちもわかっちゃうのよねぇ~」


「えっそうなんですか!野菜と会話ができるなんて素敵ですね、だからあんなに味の濃い美味しい野菜ができるんですね」

「ふふっみこちゃんは素直ねぇ、私の言うこと何でも信じちゃいそう」


「えっ嘘だったんですか?あ、でもだってベリアルさんは私のこと助けてくれたし、優しくて、冷静で、でも暖かい人で、ベリアルさんの住むこの家だって心地よくて、それってベリアルさんの心そのものなのかなって、安心感があって落ち着きます」


「そんな純粋に手放しで褒められると私が恥ずかしいわ」

 ベリアルさんが顔を少し赤くして照れているのがわかる。さっきは私に自信持ってって言ってくれたのに、ベリアルさんの新しい顔を発見して嬉しかった。


 こんなにも心穏やかに思ったことを伝えられるって幸せなことだと思う。

 それにいままで他人に自分の思いだけでなく、いいと思ったことも伝えることをしてこなかったことに気が付いた。


 仕事が忙しい両親からもあまり褒めてもらった記憶もなかったから、褒められた時の反応もわからなかったし、人を褒めると自分までも嬉しくなるなんて知らなかった。


「ベリアルさん、ありがとうございます」

 知らなかった感情をしって、ついお礼を言ってしまう。


「あら、何のありがとう?」

「可愛いベリアルさんの一面が見られたことですかね」

「もう、みこちゃん意地悪ね、ふふっ」




「さてと、この辺りなんてよさそうね」

「はい」

 私は、畑から離れた場所に2cm位の大きさの種を一つ植えた。ジルはその植えた周りをグルグル走りだした。

「ジル、実がなればたくさんプレジールが食べられるね」

「にゃー」


 実がなったら街の人に食べてもらうこともできるかもしれないし、更には枯れてしまったプレジールを世界中に復活させることもできるのかもしれないな。

 私はただぼんやりとそんなことを想っていた。


「ベリアルさん、ありがとうございます」

「いいえ。じゃあお店は終わりにして街に買い物に行きましょうか。女の子には色々と必要なものもあるでしょうしね」

「街ですか!ぜひ行ってみたいです」 



 街は、森の外れのこの家から意外にも近く歩いて20分位で着いた。

 わぁ~石畳のヨーロッパ風な街並み、すごくおしゃれ~。肩の上のジルにも素敵ね~と話しかけながら街並みを見ていた。

 でも、こんな素敵な街並みなのに、街の人達はあまり活気がなくただ生きていくだけの生活をしている感じが気になった。行き交う人達に全く笑顔がない。これもアインスさんの心の闇の影響なの?


「活気がないでしょ?」

「はい、素敵な街なのに何だか寂しそうです」


「そうね、これでもよくなって前は暴れる人も多くてこんな風に街に来ることも難しかったのよ。王宮の方でも色々と手を尽くしたり、私が作った野菜を食べて元気になってもらったりしてよくはなっているのだけど思った以上に闇の影響の範囲も広く心への影響も強くてね。他にも何か出来ることがあるんじゃないかって思うのだけど手探り状態でね...だから、いまは少しずつでも、私に出来ることをって思っているのだけどね...」


「...」

 ここの街はベリアルさんの家とは空気が全然違って、胸が締め付けられる感じがする。


 もし私がこの世界に来たことが偶然じゃないのなら、こんな私にも何か出来ることがあるのかもしれないな...



引き続き読んでくださってありがとうございます。

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