episode8. 初めての反抗
「随分と楽しそうだな。」
一人で笑っていると抑揚のない声がかかった。
えっ⁉ なんでいるの?いつもなら、もう王宮へ出ている時間でしょ⁉
何事もない様子を取り繕いながら振り向く。
こういう時、妃教育をしていた威力を発揮する。表情を取り繕うのも、感情を隠すのも息を吸うようにできる。
「あら、ごきげんよう。どうされました?登城なさるお時間では?」
「なぜ、一人で笑っていた。」
もしかして、笑い声聞かれてた?ヤバ。
「今日はとてもいいお天気ですもの。ここからの景色を楽しんでいただけですわ。」
「そうか。それにしては下品な笑い声だったがな。…‥で、なぜ食堂へ来なかった。私の名を勝手に使ったそうだな。」
カナリアのように美しい私の声が下品ですって!いや‥‥、確かにさっきの笑い声は気持ち悪かったかもしれないわね。
それはそうと…、いつもは丁寧な口調で全身で話しかけるなと言ってくるのに、今日はいらだちを隠しもしないのね。
「なぜって、旦那様がおっしゃったのですよ。好きにして良い、と。だから、バルコニーで食事をっとったのです。勝手に旦那様の名前を使ったわけではありませんわ。」
うわ~、本人に向かって旦那様とか、寒気がするわ。かといって、私の名前を呼ばない人をフランツ様だなんて呼びたくはない。
「‥‥そうか、そうだったな。勝手にするのはかまわなかいが、もう二度と、私の名を勝手に使うな。」
「わかりましたわ。その代わり、旦那様も屋敷の者たちに言っておいてくださいな。私の行動に口出しするなと。自由に行動することをご自分が許可したのだと。」
少し嫌味っぽくなってしまったけど、仕方ないわよね。せっかくの気分が台無しよ。