表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

episode7. 妻のいない朝食

ーいくら待っても妻が来ない。


「おい。あいつはどうした。なぜ来ない。」



 無性に腹が立つ。なぜ、私がこんなにあいつのことを気にせねばならんのだ。



 学園いたときからそうだ。あいつは完璧な淑女でありながら、いつもエラそうな態度で周りを見下していた。それに、あいつは無意識に、周りに自分を褒めるよう誘導していた節がある。そんな態度が鼻についた。


 

 シャーロット嬢が入学してきてから、それがより一層顕著になった。人目もはばからず、義妹を貶めるような発言をして、せっかく他の部分では完璧なのに、なぜ自らの評価を下げるような行動をするのか意味が分からなかった。



 ある日、あいつにいじめられているとシャーロット嬢から相談を受けた。聞けば、あいつは家でもシャーロット嬢の出自を理由にいじめを行っていたらしい。学園は人の目がある分、まだましなのだとか。



 殿下の婚約者として、努力を怠らないあいつを評価していた分、心底幻滅した。完璧な淑女を装いながら、裏でそんなことをする人間だったと知り、それから彼女の淑女としての振る舞いがすべて嘘くさく見えてならなかった。


 

 それから、シャーロット嬢への嫌がらせはどんどんエスカレートしていった。そのたびに、彼女へ失望していった。そんとき、シャーロット嬢が階段から突き落とされるという事件が発生した。その犯人は彼女だという。失望が軽蔑へと変わった瞬間だった。未来の国母が、平民出身というだけで、殺人未遂まで起こすのかと。



 だから、殿下からあいつと婚約破棄をして然るべき処罰を与えると聞いたとき、べつに反対はしなかった。殿下から婚約破棄をされるだけでも、貴族からすれば相当な醜聞だし、社交界から締め出されることになるだろうと思ったから。まさか、殿下が私に押し付けてくるとは夢にも思わなかった。

 


 初夜のとき、私の言葉にあいつはひどく傷ついた顔をした。迷惑していたのは本当だ。なのに、なぜこんなに罪悪感を感じねばならんのだ。


 

 それから、毎日朝食の席で顔を合わせたが、あいつは淑女の仮面をかぶったまま。特に変わりは見えなかった。女主人としての仕事をくれといわれたが、この屋敷には身分の低い使用人もいる。権力を盾に、使用人をいたぶられてはたまったものじゃない。だから、自由に過ごさせる代わりに権限は与えなかった。それから、彼女はさらに淑女の分厚い仮面をかぶり、私との会話も朝の挨拶だけになった。それでも、朝食の席を欠席したことはない。




 「おい、彼女は体調でも悪いのか?」

 

 彼女を呼びに行ったメイドに尋ねる。


 「それが、本日はバルコニーで朝食を取られると。旦那様から許可を頂いているといわれました。」


 私のいらだちに、少しおびえたようにメイドが応える。


 「私の許可があると?」


 あいつ、女主人として命令できないから、私の名を勝手に使ったのか?どこまでも卑しい奴なんだ。





 朝食を食べ終わって、あいつの部屋へ行くと、あいつの笑い声が聞こえてきた。人の名を勝手に使っておきながら、のんきに朝食とはいい度胸だな。



「随分と楽しそうだな。」




 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ