episode6. すがすがしい朝
鳥のさえずりで目が覚めた。窓を開け、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、朝日を浴びる。こんなにすがすがしい朝を迎えられたのは久しぶりだ。そうだ!今日はこのままバルコニーで朝食を取ろう。朝露に濡れる花々が、アナベルに朝の香りを運んでくる。
ここのバルコニーからはちょうど庭園が見渡せる。今日のような日にピッタリだ。
そこへ、私を起こしに来たメイドがやってきた。
「奥様、もうお目覚めでしたか。朝食の支度ができておりますので、身支度をいたしましょう。」
「いいえ、今日はこのままバルコニーで食べるわ。朝食を部屋に運んでくれるかしら?」
メイドが驚いたように言う。
「えっ?ですが、旦那様が食堂でお待ちです。」
「大丈夫よ。旦那様からは好きにしていいと許可を頂いているもの。だから、朝食をもってきてちょうだい。」
「そう、ですか。かしこまりました。」
「そうそう、前から言おうと思っていたんだけど、私、朝はコーヒーじゃなくて紅茶派なのよ。よろしくね。」
うふふ、今までおとなしかった私が、我がままを言い出して困惑しているみたいね。でもごめんなさい、これからは自由に生きると決めたもの。それに、フランツも朝から私の顔を見る必要がなくてうれしいはずよ。
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はあ~っ。あの堅苦しい場所で食べない朝食の、なんとおいしいことか!紅茶もスコーンとあっていて、大変満足!
庭園を見渡しながらのびのびと優雅な朝食をとり、これから何をしようかと考える。
とりあえず、今日は頼んでおいたドレスの打ち合わせと、別荘地の選定があったわね。それと、自分が自由に使えるお金も欲しいわ。一応、私用の予算があるとはいえ、女主人としての役割も果たしていない状況で、フランツに養われるのは気に食わない。それに、私の計画では3年間別荘地でのんびりゆったり暮らすつもりなのだ。お金はあればあるほどいいわね。あと、使用人も何人か私で選びたいし。
これからのことを考えると胸が躍る。
あっ!いいこと思いついた!そうねどうせなら、離婚後の計画も立ててしまいましょう。私を監視することが目的なら、そう簡単に離縁してもらえないかもしれないから、死んだことにするのが一番よね。名付けて、「死んだふり計画」!デュフフフフ。楽しくて笑いが出ちゃうわ!
「随分と楽しそうだな。」
一人で、笑っていると後ろから冷めた声が聞こえた。
びっくりして後ろを振り返ると、少しいらだった様子のフランツが立っていた。