episode13. 専属メイド
カシャー、とカーテンを開ける音とともに眩しい朝日が部屋の中に差し込んでくる。
う~ん、眩しい。
「奥様、おはようございます。お目覚めの時間です。」
「お手伝いいたしますので、朝の支度をいたしましょう。」
ルナとサナに起こされて目が覚める。
「う、うん?あれ?どうして二人がここにいるの?」
寝起きの働かない頭で二人に問いかける。私の専属侍女はいないけれど、起こしに来るのはいつも上級使用人のうちの誰かだ。
「奥様には専属がいらっしゃらないとお聞きしましたので、私たちがメイド長に志願いたしました。」
「奥様付きとなれば、街への付き添いもアリバイ工作も協力しやすいですので。」
よく気の利くメイド達だ。
それに、奥様付きは給料がいいので、と二人がボソッとつぶやいた。そっちが本音ね。まぁ、二人が私付きになってくれるのは正直嬉しい。
二人はテキパキと私の身支度を整えていく。実に手際がいい。双子だからか、口に出さずとも連携が取れている。
「奥様、ドレスはこちらでよろしいですか?先ほどクローゼットを確認させていただきましたが、どれも奥様にはお似合いにならないかと存じます。幸いこちらの一着だけは奥様にもよくお似合いになるかと…。」
サナがそう言って、一着の淡い色のドレスを差し出してきた。
「そんなドレスがあったのね、今まではっきりとした色のドレスしか着てこなかったから気づかなかったわ。私に似合うかしら?」
私はどちらかというと華やかな美女だ。実家でもここでも赤とか紫とか毒々しいはっきりとした色のドレスが多い。自分の好みで選んだわけではないけれどね…。それに、実家では趣味の悪いデザインで、ここではフリルのついたいかにも可愛い子に似合いそうなものばかり…。サナが選んだようなドレスを着たことは今までない。
「ええ、奥様は一見派手な見た目をしておりますが、淡い色でも上品なものを選べばよくお似合いになるかと。それに、夜会に行くわけではないのですから、目に優しい色をお選びになった方が気持ちも落ち着かれると思います。」
確かに、そうかもしれない。
「そう、そうね。なら、そのドレスにするわ。アドバイスありがとう。」
すると、今まで私の髪を梳いていたルナが口を開き、サラっと爆弾を落としてきた。
「奥様、髪型はどうされます?ちなみに、朝食は旦那様と取るように、と言付かっております。」
えっ!なんで?そいう重要なことは早く言いなさいよ!
「旦那様がそうおっしゃったの?よね?」
「はい。なんでも、最近顔を合わせていらっしゃらないので、朝のうちに報告しておきたいことがあるのだとか。必ず出席するようにとのことです。」
報告って何よ。今まで仕事のこととか何も私に言わなかったじゃない!
「そう。それならしょうがないわね。なら、髪は簡単に結い上げてもらえるかしら?」
「かしこまりました。それと、先日頼まれました物はすでに用意してありますが、いかがいたしますか?」
もう用意してあるの!優秀ね。ここまで期待がしていなかったのだけれど、予想以上にいい者たちを協力者にできたようだ。
「早いのね、ありがとう。朝食が終わったら出かけるから、用意しておいてもらえる?」
「賜りました。」
身支度が終わり鏡を見る。さすが商家の娘たちなだけあってセンスがある。清楚でいて上品なドレスに、下品に見えない程度にゆるく髪を結いあげてある。これなら、フランツと朝食をとってもマナー違反にはならにでしょう。それにしても、今まで赤や紫と言ったはっきりした色ばかり着ていたから、まあ、着たくて来ていたわけではないけれど、この淡い花びらのような薄桃色は新鮮ね。私はどちらかというと華やかな見た目をしているから、このドレスだと雰囲気が柔らかく見えていいわ。今度、こういうドレスもマダムに作ってもらおう。それよりも、今までだれもこのドレスを勧めてこなかったって事実が問題よね。他の使用人のセンスが悪いのか、ただの嫌がらせか…。まあ、もうすぐ新しいドレスも届くし今更気にしても仕方ないわね。
鏡に映る自分に満足していると、執事が私を呼びに来た。どうやらフランツがお待ちのようだ。
「奥様、朝食の用意ができております。ご支度は終わりましたでしょうか?」
「ええ、すぐに向かうわ。」
ルナに扉を開けてもらい、執事を部屋へ通す。すると執事は私を見て少し驚いたように目を見開いた。
ウフフ、どうよこの私の姿は!今日の私はまるで天から舞い降りた女神のように美しいでしょ!
執事の反応に私は満足して食堂へ向かった。




