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浴室乱入事件などのトラブルを経て、ようやく目的地である魔王城に到着した。
ここで魔王を倒せば人類に平和が訪れる。
……そして、私ももう自由ではなくなるのだろう。
今も捕らわれているが、魔王を退治した後私は本当の意味で自由がなくなるだろう。
勇者は魔王を退治したら褒美を賜る。そして勇者が望むのは私だ。これは自惚れでもなんでもない。
魔王を退治した後、私は勇者の妻になるのだ。
***
魔王退治については割愛させていただきます。
箱入り娘には血生臭いのは最後まで慣れませんでした。
ここは城の勇者の部屋。
魔王退治を済ませた一行は国へと帰国していた。
「……ナターシャ。ごめんね。もう石に閉じ込めたりしないから」
そう言って勇者は私を封じていた石を片手で砕いた。
その光景を見てぞっとする。
あの石に閉じ込められたまま砕かれていたら私はどうなっていたのだろうか?
「ナターシャ。僕は褒美に君を所望する。だから君が嫌がっても無駄だから」
砕かれた石で真っ青になっている私に気付いているんだか気付いていないんだか無駄にキラキラとした顔をして私にとっては嬉しくもない事を言ってくる。
勇者と結婚する事については道中で覚悟していた。
元々政略結婚もある貴族の生まれだ。自分に興味のない人間より自分を好いてくれている人の方が良いと言い聞かせる。
それに王族で勇者だ。これからの生活は安泰だし、もし逃げたり自害したりしたら家族に迷惑がかかる。
私は優しく騙されやすい両親、弟を頭に思い浮かべた。
「……わかりました。……求婚を、受け入れます」
言いたくなくてついつい言い淀んでしまった。
すると、私を抱き締める衝撃が。
「嬉しいよ。ありがとう。一生幸せにするから」
間近でキラキラと幸せそうに微笑む顔を見て、自分もなんとか笑顔を浮かべた。そして、その顔は苦笑に変わる。
「なんで、そんなに私の事が好きなんですかね。私より優れた人なんていくらでもいるのに」
私はなんだか肩の力が抜けた気分だ。
スフィアを受け入れると決めたらなんだかそれで良いような気がしてきたのだ。
「スフィア様。これからよろしくお願いします」
「うん。諦められなくてごめんね。ナターシャ、受け入れてくれてありがとう。」
end
終わりです。
ちょっと想定していた内容と大分変わってしまって無理矢理終わらせてしまいました。
作者の力量不足です。
これからも精進します。