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勇者と囚われの令嬢  作者: けいと
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3

今日は顔合わせをして早速連携の確認をするようで近くのダンジョンに行くらしい。


私はダンジョンに行くのはもちろん初めてで、ちょっとどきどきしてしまった。


「大丈夫だよ。ナターシャは僕が守るから」


皆に聞こえないような小声で私のペンダントを口許に持ってきた勇者はそう呟いた。




ダンジョン1階はゴブリンがたくさん出る階層みたいだ。

しかし、5人には特に問題ない相手なのかどんどん倒していく。


騎士は剣で切り裂き、戦士は斧を豪快に振り回す。

魔術師は後方から多彩な魔術を、回復術師は怪我を負った仲間をすぐさま癒した。


そして、勇者は剣を振りながら時には魔術を繰り出し一人飛び抜けた活躍をしていた。


悔しいがさすが勇者に選ばれただけはあると思う。私は彼がこんなに武術が得意だなんて知らなかった。


でも、正直、勇者がゴブリンを剣で倒すということは勇者の胸元のペンダントにいる私の間近でゴブリンの殺られる様を見せられるということだ。ただの小娘の私にはきつい。



ようやくゴブリンが粗方片付いたようだ。

何体倒したのだろうか?

私も流石にこれだけ見せられればゴブリンがいくら倒されようと顔色を変えないぐらいには慣れてしまった。



1階のダンジョンで連携の確認が出来たのだろう。

旅に出発するためにすぐさま引き上げたようだ。


勇者一行は陛下に改めて挨拶をすると旅立って行った。


陛下の勇者の胸元のペンダントに向ける申し訳なさそうな顔は忘れないだろう。



***



初日は先にダンジョンに行った事もあり王都から少し離れた町を宿泊場所にしたようだ。


部屋割りは騎士と戦士。魔術師と回復術師。そして勇者だ。勇者は王族ということもあり一人部屋のようだ。

これには少し安心した。もう、勇者は諦めるとしても他の男性の着替えやらなにやらを見るのは流石に乙女として嫌だった。


勇者が部屋に入る際に魔術師と回復術師がなにやらアピールをしていたが、勇者はスルーしていた。


パタリ。と部屋の扉が閉まる。


勇者はすぐさま防音結界を張ると私のペンダントになにやら呟いた。


すると、また封印された時のように意識が遠退く。

そして、次に気が付いた時には勇者が目の前にいた。


びっくりして私は思わず後ずさる。部屋の壁際まで後ずさった頃になって私が後ずされた事に気が付く。


あれ? もしかして、今、私は石の中にいない?


私はゆっくり手を持ち上げた。

視界には私の両手が写っている。


私は喜びの声を上げそうになって、視界に勇者が写った。途端に喜びは萎れていく。そして、代わりに恐怖が過った。


今、ここには勇者と2人きり。扉には結界が張られているし声も防音結界なので聞こえない。

仮に聞こえたり逃げ出せたとしてもここは勇者の部屋だ。見ず知らずの小娘の私の方が悪者になる可能性が高いだろう。


私は貞操の危機に知らず体が震えていた。今日の戦いも見たのだ。勇者からすれば私のような小娘ぐらい簡単に組み伏せてしまえるだろう。



私が勇者から目を逸らせないでいると勇者はゆっくりと私と反対側の壁際まで行きそこで座り込んでしまった。


こちらに来るつもりはないようだ。


「ナターシャ。僕はこれ以上は君に無理強いするつもりはないよ」


そう言うと立てた膝に顔を埋めて休む姿勢に入ったようだった。


あんな体勢で休めるのだろうか? 明日からは本格的に旅が始まるのに……。

ついつい心配するみたいな事を考えてしまって慌てて頭を振るう。

あいつは私をこんなところに無理やり連れてきた奴だ。誘拐犯なんだ。


私はこの日一睡もすることは出来なかった。

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