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翌日私は勇者に連れられて勇者の仲間が集まる広場に来ていた。
今日は朝から最悪だった。
あいつは私が見えているのを知ってか知らずかペンダントを机に置いて着替えやがった。
なにが悲しくて誘拐犯の着替えシーンを見ないといけないのか。
これでも私は乙女なんだぞ。
最悪な記憶はともかく勇者パーティーをペンダント越しに眺める。
騎士の強そうなお兄さんに戦士の巌のような男性、魔術師のグラマラスな美女と回復術師の清楚な少女。それに勇者を加えた5人がパーティーメンバーのようだ。
しかし、このパーティーの女性2人ともこちらを見てぽーと頬を染めているが勇者に惚れたのだろうか?
たしかに奴の顔面はかなり良いだろう。金髪碧眼の優しげな相貌をしたかなりの美形だ。しかも勇者で国の第2王子なんだからかなりの好物件だろう。
これだけの情報だとなんで私は求婚を断ったのか疑問になるな。
でも、私には合わないと思ったのだから仕方がない。
こいつは控えめな話し方の割には異様に押しが強くて変な虫やカエルなんかをくれたこともあるし、変な色の花をくれたこともある。初めの方は嫌がらせでもされていたのかと思っていた。
それが誤解でただ私にプレゼントをしてくれていたのだとわかったのだが、それまでに苦手意識がついてしまっていた。
だから申し訳ないが彼との生活が考えられないのだが、ある意味私の判断は正しかったのだろう。こういう風に誘拐されたのだから。
「勇者様。よろしくお願いします」
おっと、私が考え事をしている間に女同士のバトルが始まったらしい。
魔術師が自身の豊満な胸を勇者に当てるようにして腕を組んでいる。
それに対して勇者はどうするのかと思っていたら勇者は魔術師を振り払った。
「止めてください」
勇者は今まで聞いた事がないような冷たい声で言った。私からは見えないが魔術師は顔を真っ青にしている。……勇者はどんな顔をしているのだろうか?
「あ、あの。私料理も怪我の手当ても得意なのでいつでも言ってください」
続いて回復術師が家庭的な女性アピールをはじめた。
料理長やら使用人のいる王子にそのアピールはどうなのだろうか?
「あぁ、そうなんですか」
案の定勇者は対して興味はないようだった。