004 ルノーFT戦車(FT-17)
ども自分がミリオタなのかアニオタなのか、それとも鉄オタなのか、日々考えているカトユーです。自分は何者なのか?(白目)
今回は割と有名な戦車。個人的には菱形戦車に並ぶ名戦車だと思ってます。そんな戦車を紹介していきたいと思います。
開発経緯
「今回はフランスのFT-17だよね!僕も知ってる戦車だよ!」
「そうだな。一応ルノーFTが正しい名前だな」
「FT-17じやダメなの?」
「別に悪くは無いのだが……
FT-17以外にもFT-18等々色んな呼び方があるからな。ちなみに-17は1917年完成を示す便宜上の符号だな」
「ふーん……
で、そのルノーFT(?)はどんな目的で作られたの?」
「シュナイダーCAの時のエティエンヌは覚えているか?」
「うん。確か砲兵将校だったよね?」
「そうだ。ルノーFTも彼の提案で開発が始まった兵器なんだ」
「エティエンヌってホントに発想が凄いよね……
それで彼はどんなものを提案したの?」
「簡単に言えば指揮戦車だな」
「シキ戦車?何それ?」
「指揮戦車ってのは文字通り他の戦車を指揮するものだな」
「他の戦車……、シュナイダーCAとかサン・シャモンとか?」
「そうだね。これら2つの戦車は鈍重で視界が悪く運用するのが大変だったんだ」
「確かに元がトラクターの戦車に機動性を求めるのは酷だよね……」
「だから機動力のある小型な戦車が必要とされたんだ」
「なるほど。地味に小型の戦車って始めてだよね?」
「いや、紹介してないだけでホイペット(英)とかLKⅠ(独)、ヴェズジェホート(露)があるんだけどね……」
「既にイギリス戦車の解説は終えたのでは?」
「いや、すっ飛ばしていた……」
「ええ……」
「まあ、それはともかく目的はそれぞれ違えど小型の戦車はどこの国でも作られてたんだよ」
「そうかぁ……」
生産
「ルノーFTは名前通りルノーで作られたのかな?」
「そうだね」
「でもルノーって自動車メーカーでは?」
「否定はしない。元々ルノーという会社は自動車の生産・販売から始まったんだけど、WWⅠ期には兵器…トラックや装甲車、飛行機やそのエンジン、小型船の生産まで行う大企業になってたんだ。本業の自動車生産もこの頃はフランスのシェアトップだったんだよ」
「陸海空を制覇してるね……
でもなんでいきなりルノーに戦車開発を頼んだの?シュナイダー社やFAMH社じやダメだったの?」
「この頃は戦車1台作るのに結構な手間が必要だったからね。各社それを何百台単位で受注して、その生産に忙殺されてたからね……」
「最新兵器だもんねー……」
「そこでフランス陸軍はルノーに戦車開発を頼んだんだ」
特徴
「自動車メーカーが作る戦車はどんな感じだったの?」
「流石は自動車メーカーと言うべきか、完成した戦車はかなり洗練されたものだったよ」
「具体的には?」
「今までとは違い、大量生産を考慮した設計とか」
「ここで大量生産って概念が戦車にも持ち込まれるんだね」
「そうなんだよね。ちなみにルノーFTは最終的に3,728〜4,635両が生産されたよ」
「ひえっ……、なんて数だ……」
「国外にもたくさん輸出されたからね〜」
「これだけたくさん作れたなんて、当時のフランスは大金持ちだったんだね」
「いや、お金持ちだからというよりかはこの戦車が比較的安価に作れたからかな」
「安価に?8人乗りの車両で安価とかよくわかないんだけど……」
「違う違う。ルノーFTはそれまでの戦車とはだいぶ違ったよ。乗員は2人だけだし」
「2人!?それで戦車を動かせたの!?」
「動かせなかったらこんなに大量生産されてないでしょ……」
「いや、まあ、それはそうなんだけど……
でもこの頃の戦車って操縦関連だけで4人も必要だったよね?」
「……実はマークⅠ系戦車でも操縦手の削減が行われたんだ」
「あれ、僕は知らないぞ…?」
「解説してないからね……。マークⅤ戦車ではエンジンやトランスミッション系の改良が実施されて操縦手が1人になったんだ」
「ええ……」
「まあ、そんなことは置いといて…ルノーFTは操縦手と車長の2人で運用することが出来たんだ」
「なるほど……、あれ?でもそうしたら車長が砲手とか装填手を兼ねることになるんでは?」
「そこなんだよなぁ……
少人数での運用は可能になったけど減らしすぎた感はあるよね。
でも元々の運用方法が指揮戦車だからね。その辺りは割り切ってたのかも」
「確かに……、あれこれ盛りすぎるとかえってダメなこともあるからね」
「ルノーFTの画期的な面は他にもあるよ〜」
「例えば!」
「操縦室と戦闘室、機関室がそれぞれ独立したところだね」
「おお、これでエンジンの熱気から解放される!
でも、これってマークⅣ戦車も同じだったんじゃ?」
「ま、まあ……、当時の乗員達にとっては嬉しい改善だっただろうし……」
「他にも凄いところが?」
「戦闘室が独立したとは言ったけど、その戦闘室に砲塔が用意されたんだ」
「宝塔?」
「それは地元のラーメン屋……いや何でもない
砲塔ってのは火砲関連の要員を保護しつつ、様々な方向に火砲を向けられるようにしたものなんだ。それを始めて導入したのがこのルノーFTなんだ」
「世界初!これは凄い!!」
「しかも360°どこにも砲を向けられるから視界無し。歩兵が近寄ってきても対処が出来る」
「いい事尽くめじゃないか……」
「まあね。そっから今まで全周砲塔が戦車のデフォルトになってるし」
武装
「そんなつよつよ砲塔君にはどんな兵装があったの?」
「37mm砲か8mm機関銃だね」
「37mm砲はまだしも8mm機関銃は流石に弱くない?」
「いや、8mm機関銃でも対歩兵なら十分に有効だよ。1930年代になっても主武装が機関銃の戦車が居たからね」
「目的によっちゃ使える武器なんだね〜」
「ちなみに8mm機関銃はオチキス Mle1914重機関銃ってやつだね。オチキスって会社は後の時代にフランス戦車を作った会社だよ」
「この頃は重機関銃を作ってたんだね
37mm砲はどんな感じなの?」
「M1916 37mm歩兵砲と呼ばれるやつか元だね」
「歩兵砲?」
「歩兵への火力支援に使われた火砲(大砲)だね。榴弾がメインだけど、砲兵科以外が使ってたものなんだ」
「はえー、歩兵って銃だけが装備じゃないんだね」
「歩兵砲は主にトーチカや機銃陣地、戦車なんかに対して使われたよ」
「戦車!対戦車戦闘が考慮されてる砲なんだね!」
「で、それを元にして作られたのがピュトー SA18ってやつ」
「流石に歩兵砲をそのままポン付けするのは無理だったか……」
「それでも歩兵で扱えるような砲だから、1人で扱えたんだ」
「ナルホド。確かに小型戦車に載せるには良さげな砲だね」
「ただ砲身が21口径長だったから対戦車能力は低かったかな」
「あれ?」
「まあ、本格的に戦車対戦車を考えるのはもっと後の時代だからね……」
「その辺りは現代とは違うね」
「でも、榴弾は歩兵や機銃陣地への攻撃には有効だったよ」
「他に武装に関する話は?」
「砲の操作が肩当て式だったとか」
「変わってるね」
「まあ、日本軍の戦車なんかも肩当て式が多かったから……
あとは砲塔旋回が人力だったとことか」
「人力なの?」
「まあ旋回砲塔を作れただけ十分だと思うよ。それに人力以外でも砲塔を動かすのももっと後の時代のことだし」
「照準つけるの大変そう……」
「そうでもなかったみたいだよ」
「え?」
「何でも電動とかとは違って、「ここっ!」って思ったところに直感的に合わせられたらしい。その辺りが電動とは違うって言ってたよ。それに手動旋回でも意外と速い」
「へ〜、人力には人力の良さがあったんだね」
「ちなみにピュトーSA18は後のルノーR35やオチキスH35、FCM36なんかの兵装としても使われるよ」
「フランス軽戦車の一般的な兵装になるんだね。……あれ、この砲って対戦車能力が低いんだよね?」
「シーッ」
足回り
「ルノーFTの機動性とかはどうだったの?」
「小型戦車と言うだけあってそれなりの機動性があったよ」
「WWⅠ期の戦車って鈍重なイメージがあるけど……」
「ルノーFTにはそれまでの戦車とは違い、転輪を板バネ(リーフスプリング)で支え、転輪と支持輪を合わせて螺旋バネ(コイルスプリング)で支えるという画期的なものだったんだ」
「リーフスプリング?コイルスプリング?何それ?」
「どちらもサスペンションを構成するパーツだね。
……コイルスプリングの方がイメージしやすいかな?螺旋状のバネって上下に伸び縮みするでしょ?その性質を利用したのがコイルスプリング。路面の凹凸によって車体に加わる力を吸収し、戻すという動作を繰り返すおかげで、車体があまり揺れないんだ。
それに対してリーフスプリングは板状の金属を利用したもの。金属のしなりを利用しているんだ。特徴として、構造が単純で安価に作れるんだ。有名な戦車としてはⅡ号戦車やⅣ号戦車で使用されたね。……まあ、今ではエアサスペンションの方が主流なんだけど」
「ナルホド、わかんない!」
「まあそんなことは置いといて、独特なサスペンションを採用したことでルノーFTは乗り心地の良く、そして機動性に優れた戦車になったんだ」
「やっぱり新技術は良いね〜」
「あと自動車メーカー製と言うだけあって操縦もしやすかったみたい」
小話?
「ルノーFTについて面白い話は?」
「ルノーFTが色んな国に大きな影響を与えたってことかな〜」
「色んな国?」
「ああ、アメリカ、ソ連、イタリアで独自の型が生産され、使用した国は10ヶ国以上。その中には日本含まれるよ」
「日本も?」
「ああ、1919年から20両以上を輸入したらしい。歩兵学校や騎兵学校で研究・分析された」
「日本も勉強熱心だね」
「ちなみに甲型軽戦車と呼ばれたこれらの車両が、発足当初の帝国陸軍戦車隊の主力を担うことになる」
「日本初の戦車は外車だったんだね」
「いきなり国産戦車を揃えるのはキツイよ…」
「で、独自の型を作った米露ソはどんな戦車だったの?」
「それはその国の話になってからにしよう。一応名前だけ挙げておくと、アメリカがM1917軽戦車、ソ連がKS戦車、イタリアがFIAT3000だね」
「フィアット!聞いたことある!」
「これも現代に残る自動車メーカーだね」
「なんか自動車メーカーが作る戦車が多いね……」
「仏伊以外でも自動車メーカーが戦車を作るケースはこれからも出てくるよ」
「マジか……
他にはどんな話が?」
「これからのフランス戦車の伝統というか、砲塔後部のハッチが腰掛けになるとか」
「なにそれ、必要…?」
「どうなんだろうね。でも開いた時に使うものだから長距離移動とかの時に外の空気吸うためのものだったんじゃない?」
「そんな呑気なものかなあ……」
「更には砲塔内部にも腰掛けがあった」
「は?エスカルゴは座ることしか考えてないのか……」
「砲塔内部に取り付けられたベルトにブランコのように腰掛けたらしい。まあ、戦闘時は基本立ちっぱなしだしそれくらいは良いんじゃない」
「どうだか……
あとは?」
「操縦手が正面パネルを開いて乗り込むとか」
「正面?そこって大事な装甲部分では?」
「確かにそうだよね。でも砲塔は一人乗りだし、側面は履帯だし、乗り降り出来る場所がここしか無かったんだろうね。そしてそのハッチが意外とデカイ……」
「うーん…、小さすぎるのも大変だねー
他には他には?」
「どの戦車でもよくあることだけど自走砲化されたり」
「自走砲化……大抵のものは戦車時代よりワンランク上の砲を積んでるよね?」
「そうそう」
「ルノーFTはどんな砲を積んだの?」
「M1897 75mm砲だよ」
「サン・シャモンに搭載されたやつだね!フランスはよほどこの砲を気に入ってるのかな?」
「当時のフランス陸軍の主力だったからね〜
ちなみにルノーFTに載せる時は砲を後ろ向きにした。しかも前面の装甲を取っ払ってる」
「ひえっ……、乗員がむき出し」
「映像が残ってるけど操縦手は靴まで丸見え。しかも射撃時の反動がものすごい。車体がグワングワン揺れてるよ」
「ホントだ……」
「自走砲車体としては小さすぎたんだろうね(車重5t程度)。もちろん不採用」
「だろうねー」
「ただエスカルゴはそれに懲りず、なんと105mmMle1931榴弾砲を積んだらしい。一応車体上部に大幅な改良が加えられたそうだが、生産されてない辺り結果はお察しだな……」
「オーバースペックすぎるんだよな」
スペック
重量 6.8t
乗員 2名
全長 5.0m
全幅 1.7m
全高 2.1m
エンジン ルノー水冷直列4気筒ガソリン
39hp
出力重量比 5.74hp/t
主砲 37mm砲or8mm機関銃
副武装 8mm機関銃
装甲圧 6〜22mm
最高速度 20km/h
航続距離 35km
まとめ&次回予告
「ルノーFTはどうだった?」
「菱形戦車までとは全く違ったね。初めての戦車から数年でここまで進化したと考えると物凄いスピードだね……」
「そうだね。これから戦間期を迎えるけど、戦後処理や世界恐慌なんかで戦車の進化のスピードは鈍るね……」
「うわあ……、次は戦間期の戦車ってことかな?」
「いや、違うよ。次回やるのはドイツのA7Vだよ」
「遂に来た!戦車大国ドイツの戦車だよ!!」
「WWⅡでは初期から末期までたくさんの戦車を開発してたからね〜」
「そんなドイツの初めての戦車か……
さぞ強いやつなんだろうな」
「……」
「え?違うの?」
「……」
「なんか言ってよ!!」
Wikipediaの出典って面白いよね……
YouTubeとかのリンク見ると毎回「こんな映像が公開されているのか!」となります。
だってルノーFTの自走砲型の映像が残ってるとは思わないじゃん?
次回からはドイツ。英仏との戦闘で戦車に出会った彼らは一体どんな兵器を作ったのか?次回をお楽しみに!
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