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三階の探索

 翌日の日曜日。

 朝食を食べた私は早速MESOの世界へログインした。


「さてと周りの変化は特になし、体力も満タンと。昨日で一階と二階、それに地下室の探索はあらかた終わったから、早速だけど三階へ行きますかな」


 道中のドールを倒しながら三階へ上がる階段までやって来た私は、特に気負う事もなく三階へやって来た。


 三階の内装は一、二階と同じで特に気にすることはなさそうだ。

 そんな廊下を進んでいると赤色の淡い光を発しながら浮かんでいる球体が数メートル先に突然現れた。


 ソウル Lv6

 通常モンスター アクティブ


 どうやらモンスターの様で【識別】ではこう出た。見た目は完全にただの人魂で、苦手な人は普通に慌てると思う。


 何をするのかわからないから警戒していると、ゆらゆらと浮いていたソウルが、突然猛スピードで突っ込んできた。魔法を使うと思っていたがそうではないようだ。

 しかし、いくら速度があってもそんな離れた位置からの突進なんて当たるはずもなく、横に飛ぶことで難なく避け、ついでに短剣で斬りつけた。と思っていたら、いきなり方向転換して短剣をすり抜け、私へ体当たりをぶつけてきた。


「なっ! あ゛ぁつぅぅぅ……!!」


 何なのコレ! 何なのこの激しい熱さと痛みは!

 今まで何度か敵の攻撃を受けたことはあるが、こんな燃えるような痛みは初めてだわ!


 痛みを堪え、何とかソウルから離れた。幸いソウルはぶつかった位置から動いてこずフワフワとその場を漂っている。

 だが楽観視は出来ない。今の一撃だけで満タンだったHPが半分にまで下がっている。つまりもう一回もあの体当たりを受けることは出来ないのだ。


 しかしこのダメージ量は多すぎる。いくら私の精神力が低いからってレベル6のモンスターの攻撃でこれほど出るはずがない。あのポルターガイストでさえ三割ぐらいだったのだから、通常モンスターでこのダメージはおかしい。


 それに私も攻撃する前に気づくべきだった。あのソウルはポルターガイストと同じで物理が効かないタイプのモンスターだ。

 早くそのことに思い至れば、相手の動きを待たずにさっさと魔法を使うべきだった。


 ……考えるのはこのくらいにして、今はさっさとソウルを倒そう。


「……ダークショット!」


 【闇魔法】のダークショットを放ったが、ソウルは避けることもせず直撃を受けた。

 それでも倒せず戦闘は続くが、ソウルは未だに浮いたままだ。

 動くのには何か条件があるのかと考えながら次の魔法の詠唱をしていると、あと少しというところでソウルがまた突っ込んできた。


「……ダークボール!」


 だが後方へ移動しながら詠唱を続けたことによって、ソウルが私の元へ来る前に何とか間に合った。

 そして、二発目の魔法を受けたソウルは、散り散りになって消滅した。

 だけどこのままここにいるのは危険すぎるため、すぐさま二階へと戻った。


「ふぅ。ここまで来れば一安心ね」


 元々近かったため再度出会うこともなく戻ってこられた。


 それにしてもあの威力は何なのだろう? 予想外の動きで不意は突かれたがクリティカルになっている訳ではない。単純に一撃必殺タイプのモンスターだったのだろうか、と思い、落としたアイテムにヒントがないかとメニューを開いたところで、今までレベルが上がっていなかったスキルが上がっているのに気がついて、この謎が判明した。

 上がっていたスキルは【火属性弱点】。何故か【状態異常耐性】も上がっていたが、あの激しい痛みの原因は間違いなく【火属性弱点】というスキルのせいだろう。


 ということはあのソウルというモンスターは火属性なのか、という私の疑問は獲得したアイテムによって確定した。


【素材】火魔石:極小 レア度1 品質C

 火属性の魔力が含まれている魔石 サイズは極めて小さい


 やっぱりソウルは火属性だった。


 だとすると今後の探索をどうするか考えなければならない。

 このまま突き進むのは無茶を通り越して無謀だろう。なんせ二発受けたら死んでしまうのだ。ただでさえ回避方法がわかっていないのにそんな運任せな事はしたくない。デスペナもあるのだからそんなことはただの時間の無駄だ。

 だとすると他の方法だ。レベルを上げてごり押しする事も考えたけど、二階のモンスターはレベル5が最大のようで、こいつらでレベル上げとなると気が遠くなる思いだ。一階などもってのほかだ。

 他には、おそらく弱点であろう【水魔法】を取得してそれで見つけ次第倒していくという方法だけど、これも不意に二発受けたり、もし二体以上で出た場合は魔法が間に合わず死んでしまう。それに今のところもう魔法は取得したくない。ただでさえ持て余しているのに三つとなると扱いきれる自信がない。

 別のスキルを取るという手もあるが、ピンとくる物がない。


 実はもう一つある方法を思いついている。それは【火属性弱点】のスキルレベルを上げること。まだ試していないからわからないが、このスキルを上げればダメージ量も抑えられるのではないかと考えている。それにユフィちゃんの上げるといいことがあるというセリフもこれを思いついた理由でもある。

 そうすると結局三階へ行かなければならないのだけれど、他の方法よりは希望が持てるやり方じゃないかしら。階段近くでやればすぐに逃げられるのだし他のよりは安全だと思う。

 まぁそれにはまず【火属性弱点】のレベルとダメージ量の関係から調べなくてはならないのだが、あの痛みを何度も味わうとなると腰が重くもなるのも仕方ないわ。


「とにかく、HPが回復するまでドールでも倒してましょ」


 結果から言えば、思っていたとおり【火属性弱点】のレベルが上がればソウルからのダメージが減少した。大きく減った訳ではないが、今のレベル4で最大HPの四割強のダメージで済んだ。

 数字的には余り変わっていないように思えるが、一発受けるともう後がない状態と確実に二発まで耐えられる状態とでは気持ちの余裕が違う。それと痛みもレベルが上がるごとに少しずつ小さくなっている気がする。


 それにこの実験をやっている間にソウルの動きが大分わかった。

 ソウルは一回体当たりしてくると、再度動くのに三十秒の時間を要することと、あの不可避に思えた移動は突進から三度回避すれば止まることもわかった。


 スキル上げの最大の発見は、ソウルに触れているだけでも火属性ダメージが発生すると言うことだ。

 体当たりだと手痛いダメージを受けてしまうが、止まっているときのソウルに触れると、スリップダメージのように徐々にダメージを受けるので効率よくスキル上げが出来るようになった。時間を数え間違えると超至近距離からの体当たりを受けることになるが。


 これをしているだけで午前中が終わってしまった。私のレベルも上がったし謎の満足感もあるので後悔はしていない。

 では一旦ログアウトしよう。


~~~~~~~~


 戻ってきました。

 やることは変わらず【火属性弱点】の克服だけど、今回は三階の探索をしながらスキル上げをしていこうと思う。

 危険かもしれないが、ソウルの攻撃ならもうほとんど躱せているし本体に触れることでダメージ量も自分で調整できる様になった。何より階段の周囲を往復してるだけでは飽きた。

 という事で、HPが半分を切らないように自然回復に任せつつゆっくりと探索している。


 ソウルをあしらいつつ進んでいると、ソウルと同じく浮いているが初見のモンスターに出会った。


フライングドール Lv8

 通常モンスター アクティブ


 そこにいたのは名前の通り浮いている人形だ。ギョロリと大きな目に白すぎる肌、背中まである髪に子供用のドレスを着ている。まるで不気味なフランス人形のようだ。

 ソウルじゃないことに少しホッとしているが、ポルターガイストと少し似ているから油断はしないでおこう。ただ実態はあるから短剣でも倒せるだろう。


「キャハハハハ」

「……!」


 MPを温存したいから短剣を構え走り出したが、相手の方が早かった。

 ポルターガイストと同じ技、おそらくダークボールを放ってきた。走っていたこともあり被弾してしまったが、火属性ではないのでダメージは二割強ぐらいだし痛みも全然耐えられる程だ。


「はっ!」

「ギャハッ」


 被弾はしたが足は止めずに近づき、斬りつけた。ちゃんとダメージが通り今の一撃だけでそこそこHPが減った。

 フライングドールはというと斬られた反動を利用して距離を取り、また魔法を放ってきた。それを躱し私もお返しにライトボールを使った。


「キャハハ」

「えっ?」


 だが確実に当たったはずなのにほぼ効いていない。ほんの少しHPゲージが減っただけだ。

 確認のために躱しつつ今度はダークショットを当てたけど、結果は同じだった。

 それなのにダブルエッジで攻撃するとガクンと減って、続く攻撃で倒しきった。


「うーん。フライングドールは物理が効きやすく魔法が効きにくい、といったところかしら。そうだとするとソウルとフライングドールが一緒に出てきたら面倒になりそうね」


 落としたのは朽ちたドールと同じ人形の腕と極小サイズの闇魔石だった。ただこちらの人形の腕の方が品質Eと少しだけ高かった。


 その後、確認のためにもう一度フライングドールに魔法を当てたが、やはりほぼ効かなかった。

 となると【短剣術】しかダメージを与える方法がないのだが、これが案外大変だった。

 そもそも遠距離攻撃の敵に対してこちらから向かっていく時点で回避が難しく被弾してしまう。それにふよふよと浮いているから攻撃が当てづらいのだ。


 どうしようか悩んだ私は、新しいスキルを取ることにした。それが【操糸術】だ。ポイントは5ポイントだった。

 遠距離なら【弓術】でも良かったが、好奇心が勝って【操糸術】にした。取った後に気がついたが、そもそも弓も矢もないので【弓術】だったら無駄になっていた。


 この【操糸術】だが、攻撃と言うよりは補助の役割の方が強いようだ。

 というのもこの【操糸術】に対応する武器は糸なので、地下で取った魔力糸を装備しようとしたら、アイテムの表記が変わっていてそこにはこう書いてあった。


【武器/素材:糸】魔力糸 レア度3 品質C

 拘束力20 重量1 耐久値100/100

 魔力を通しやすい糸 とある蜘蛛から獲れた糸を加工して作られた 魔力を通すことで切れにくくなり拘束力が増す


 アイテムのカテゴリーの表示には武器と書いてあるけど、攻撃力とは書いてなく拘束力に変わっていた。これが読んでそのままの力なのか、この数値がどのくらいかは全くわからないが攻撃がメインじゃないのではないだろうか


 とりあえず感覚を確かめるためにも実戦で使ってみることにした。


 魔力糸を装備すると両手首にグルグル巻きの状態で装備された。

 こんなのでいいのだろうかと思いつつも見つけたフライングドールに向けて、【操糸術】の始めの技を使ってみた。


「バインド」

「キャハ!?」


 すると手首に巻かれていた糸が一瞬で解け両手十本の指の第一関節に巻き付くと、そこから急激に糸が伸びフライングドールを縛り上げてしまった。

 フライングドールは振り解こうと暴れているが、解ける様子は一切ない。

 なのでこちらにたぐり寄せ短剣で刺してあっさりと倒した。


「なるほど。私が攻撃する時に、いや意識するとこの指に付いた状態になると。そしてこの時だと糸を自在に、とまではいかないがある程度私の意思で動かせるということかしら」


 倒したその場で糸を動かし、わかったことを口に出していく。

 更にフライングドールを探して今度は技を使わずに意思だけで動かしてみたところ、技ほどではないが相手の動きを封じることが出来た。フライングドールは当然倒した。


「うーん。出来はしたけど、正確に動かせるのは四本が限界か。練習すれば十本バラバラに動かせるのかしら」


 糸は十本あるのに別々に動かせるのは今のところ六本が限界だ。残りの四本は他に追従するように動くだけだし、複雑にしかも戦闘しながらだと精々四本が動かせる精一杯だった。

 だけどせっかく取得したのだから完璧に操ってみたい。一本一本を自分の意思で変幻自在に操れたら、この【操糸術】というスキルは戦闘だけでなく他の場面でも役に立ちそうだ。遠くの物を取ったりだとか。

 ならば練習あるのみだ。幸い戦闘がなくても、糸は操れるので私がこの糸達を上手く扱えるように努力すればいい。


 そう決めた私は糸を操りながら探索を続け、怪しいところを除く三階の全てを見て回った。

 その後は適度にログアウトしながら、【操糸術】と【火属性弱点】、おまけで【状態異常耐性】のスキル上げをメインにプレイして一日を過ごした。


名前:クリスティーナ

種族:ドール Lv7→9

職業:ドール Lv7→9


生命力  8

筋力  15

知力  11→15

精神力  8

器用  15

俊敏  15


スキル 残りSP5→4


短剣術Lv10→12 操糸術Lv4(new)

光魔法Lv5→7 闇魔法Lv5→7

木工Lv1 錬金Lv1

識別Lv7→8 鑑定Lv7→8 解体Lv7→8

状態異常耐性Lv1→7 火属性弱点Lv1→7

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[気になる点] 火属性弱点Lvじゃなくて火属性耐性-Lvの方が良いのでは?
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