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マルチエンディングストーリーズ~人形姫はVR世界を踊る~  作者: 月海海月
第4章 第一回イベント『バトルロイヤル』
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イベント開始!

お待たせしました。

 晩ご飯を食べ再度ログインした私は、イベントの開始時刻に合わせてバトルロイヤルが始まる前に入れる特設フィールドへ向かうことにした。


「「私達もそのフィールドへ行けるんですか?」」

「ええ。特設フィールドへはバトルロイヤルに登録してなくても行けるみたいだから、多分ベル達も行けると思うわ」

「「そうなんですね。楽しみです!」」

「私もよ」


 特設フィールド、イベント用に作られた街という話だったが、そこへはイベントページから誰でも転移することができ、さらに現実世界の二十三時五十九分までは出入り自由とのことだ。


 そろそろ時間だ。

 さぁ、イベントを楽しもう。


「ようこそいらっしゃいました来冒者様。本日のメインイベント『生き残れ! バトルロイヤル!!』が始まるのは現実時間の二十時、ここMESOの中だと二時間五十八分後からになります。それまではしばらくの間、このイベント用の街でお過ごしくださいませ」

「ありがとう」

「バトルロイヤルの参加者は開始時間の一分前になりましたら、自動で戦闘フィールドへ転移されます。また今から一時間二十八分後にGMより挨拶と説明、フィールドの割り振り等がありますので良ければご覧くださいませ。詳細につきましてはお知らせのイベントページに載っていますのでそちらでご確認ください。それではイベントをお楽しみください」

「ええ、楽しませてもらうわ」


 特設フィールドの街へとやって来た。

 すると中央街の広場のような所に立っていて、すぐ近くに案内役なのかキャラメイクの時に説明してくれたユフィちゃんに似た姿の、おそらくイベント用のAIちゃんがいて、イベントについて軽く説明してくれた。


 さてそのAIちゃんの話にあったとおり、本番までまだ時間がある。なのでこのイベント用の街を観光でもしたいのだけど、今こうしている間にも次から次へとプレイヤーが転移してきている。


 このままここにいても私のいる場所に他のプレイヤーが転移してくるなんてことはないけれど、人が増えれば移動が困難になるのは間違いないから今のうちにここから抜け出しておこう。


「さぁとりあえず適当に街の散策をしましょうか。皆も気になることがあったら好きにしていいわよ」

『はい』

『わかりました』


 今私達がいる広場は僅かに傾斜のあるすり鉢状になっていて、その中央にステージのような物があり、さながらスタジアムやコンサート場のようになっている。そのステージの空中には四方八方に向けて何台ものモニターが浮かんでいる。

 きっとこのモニターにイベントの様子が見られるようになっているのだろう。


 その広場を登った先にある街並みは、中央街と似たように真っ直ぐ延びる道を挟むように建物が建っている。だがその道幅は段違いに広く、建物の外観は中央街と違いとても派手だ。

 今回のイベントに合わしてなのか、剣やら盾やらを模した装飾がそこら中に施され、いくつもの露店が並んでいる様はまさにお祭り状態だ。


「運営も力はいってるわね」

「凄い光景ですね。それにもの凄い人の数」

「これからどんどん増えるわよ。その前に軽く観光しちゃいましょ。どうやら街で行けるのはこの一本道だけのようだし」

「そうなんですね。なら迷わなくていいですね」

「そうね。さっきも言ったけど、皆ここなら自由にしていいからね」

『はーい!』

『わかりました』


 それから増えていくプレイヤーを横目に見ながらも街を散策した。


 露店は説明にあったとおり、品揃えは中央街の物と変わらないらしいのだが私があまり中央街を探索しきれてないからか、見たことないアイテムや素材を売っている露店が多く、 うちの子達も含めて目新しさからついついあっちへ行ったりこっちへ行ったりと楽しく冷やかしをして回った。


 生産スキルのある子はその素材がある露店を眺めてはあれこれと吟味し、他の子は武器や防具、服や雑貨を眺めてははしゃいでいた。


 そうやって散らばっては集まり好きに見ながら、良さそうな物は買いながら進んでいると街の終わり、門に到着してしまった。

 ここから先は当然行くことは出来ないので、また露店を見ながら戻るとしよう。まだ大分早いが運営の挨拶とやらも気になるので早めに広場へ戻り、改めて装備の確認をしたり、いっそ皆でのんびりするのいいかもしれない。


「あっらぁ! そこにいるのはクリスちゃんじゃない!」

「何だ嬢ちゃんも早く来てたのか」


 あらかた街の散策も終わり、露店での買い物も楽しんだので広場へ戻って来たところ、さっきまで無かった露店が広場の外側にいくつか出来上がっていた。


 暇なことも有りそれを見て回ろうかと考えていると少し先にある露店から聞き覚えのある声に呼びかけられた。

 そこにいたのは私達の装備を作ってくれたドドドンさんとオトメちゃんだ。彼らはそこで装備や素材の売買をしていた。意外、と言っては失礼だが二人の露店にはそこそこのプレイヤーが足を止めていた。


「オトメちゃんにドドドンさん、ごきげんよう。二人は……売れてるかしら?」

「へっ! 中々好調だぜ!」

「見る目がある人はここの装備が他とは違うってわかるからねぇ。こんなに高くしてもそこそこ売れてるわよ!」


 そう言うオトメちゃんにつられ、彼らの商品を見てみるとなるほど、と思った。

 彼らの露店には他のプレイヤーの露店にある鉄製や中央街周辺の魔物の素材を使った装備品に加えて、私が提供した東の第二エリアの虫達の素材で作った装備がぼったくり価格で置いてあった。

 普通はこんな値段で買わないだろうが、まだ余り出回っていない素材で作られた物と言うことと、イベント前で出来るだけ強化したいと考えている人がいるからか今もその武器を手に取り買うか悩んでいるお客がいるようだ。


「いい商売してるわね。そう言えばまた素材手に入ったけどいるかしら?」

「「いる!」」

「ふふ、なら渡しておくわ」

「おうありがとな。……悪いが細かい精算は後でいいか?」

「……私もこのイベントの稼ぎ具合を見てからでいいかしら? もちろん絶対に損はさせないと約束するわ」

「ええ、私はいつでも構わないわ」


 今日までにレベル上げで結構溜まっていた素材を次々と出していく。少しだけ残したが、ざっと前回渡した量の四、五倍はあった。

 その様子を見ていたギャラリー達のざわめきが大きくなるのを感じつつ、二人に渡すと表情をこわばらせつつもちゃんと受け取ってくれた。

 うん、私もこんなにあるとは思わなかった。どうやら別れて戦っていたベル達が倒した分のドロップアイテムもインベントリに入っていたようだ。


 さてドドドンさん達の装備の噂を聞いたのかこの素材の小山を見たギャラリーにつられて集まってきたのか、プレイヤーが増えてきたから私達は邪魔にならないように移動するとしよう。

 その前に買っておきたい装備は買っておいた。


「それじゃあ二人とも私達は行くわ。二人は本戦には出るの?」

「ああ。上位にはいけねぇだろうが、参加賞があるかもしれねぇからな」

「私も同じく出るには出るわよ」

「そうなのね。ならお互い頑張りましょう」

「おう。やるだけやってみるぜ」

「もちろんよ。クリスちゃんも頑張ってねぇん」


 互いの健闘を祈ると私達はその場を後にした。


 それから買った装備を改めて吟味したりのんびりしたりしてしばらくすると、突如そこら中からドラムロールが轟いた。

 そして、それが一旦止んだ次の瞬間、広場の中央から煙と花火が飛び出したと思ったら、いつの間にかステージの上に一組の男女が立っていた。


「レディースアーンドジェントルメール! 本日は第一回公式イベントにお集まりいただきありがとうございまーす!! これから本イベント『生き残れ! バトルロイヤル!!』の案内とフィールドの組み合わせをお知らせするぜ! 俺はGMの津田沼と……」

「彼のサポート役のGMの成田です。よろしくお願いします」

「俺達の紹介も終わったところで、早速本イベントの詳細をお伝えするぜ!」

「なおこれから言う説明と本イベントの組み合わせは発表後にイベントページにて掲示されますので、わざわざ彼の話を聞いておかなくても問題ありません」


 ステージに現れた男女はGMのようで、男性の方が津田沼さんで女性が成田さんと名乗った。どうやら彼らの声はこの場にいるプレイヤーだけで無く、中央街などの元の世界にいるプレイヤーにも聞こえているようだ。

 その彼らの登場により広場にいたプレイヤー達は大盛り上がりだ。


「盛り上がってるな! そんじゃ説明すっぞ!」


 津田沼さんが説明が始まった。その説明を要約すると大体こんな感じだ。


 本番のバトルロイヤルは現実時間の20時から始まり、ゲーム内時間の一分前にそれぞれ割り振られたバトルフィールドへ転移され、一分後にバトル開始となる。

 バトルフィールドはどこに割り振られても全て同じで初めの転移先は完全にランダム。見渡しのいい草原だったり廃村だったり森だったり他プレイヤーに囲まれた状態もありえるそうだ。

 そしてゲーム内で三時間の間に最後まで生き残った者が勝者となる。また、複数生存者がいた場合は残りHPと他プレイヤーに与えたダメージから算出した数値で勝敗が決まるようだ。


 戦う場となるバトルフィールドは直径五キロメートルの円形のフィールドでその中に様々な地形が存在しているらしい。

 そのフィールドだが開始から一時間が経つと外側の靄状の壁が内側に向かって狭まっていき、ラスト三十分を残して最終的には直径百メートルまで狭まるとのこと。それでその壁の外に出てしまうとどんどんHPが減少してしまい最終的には死に戻ってしまい敗北になるから気をつけろとのこと。


 さらにバトルフィールド内にはモンスターも動物も住民もいないから、動く物は全てプレイヤーだと思って攻撃すべしとも言っていた。


 そのバトルフィールドに持ち込める物だが、原則は装備している物のみが対象だ。但し従魔は一体まで共に連れて行くことが可能だし、回復薬などのアイテムも装備さえしていれば持ち込めることが出来るそうだ。

 そう、どこか含みのある言い方を津田沼さんがしていたが、仮に回復薬を手で持ったとしたらその分武器が持てなくなるのでそんなことする人はあまりいないだろう。


 ちなみに持ち込んだ装備やアイテムはイベント中に破壊することはないが、耐久値がゼロになると攻撃力や防御力が下がるので気をつけろとも言っていた。なお使ったアイテムや落ちた耐久値はイベント後に元通りになるので安心して戦える仕様だった。


「大体の説明はこんなもんだな。他に言うことあったか?」

「いえ、これでよろしいかと」

「そうか! なら次はいよいよ組み合わせの発表だ! 今回のイベント参加者は約六万五千人! これを一から十のフィールドにランダムで振り分けていく!」

「と言っても先ほどの説明通り、どのフィールドも同じなので番号による有利不利はありません。またどこに割り振られたかは本人のみ確認することが出来ますので、その後は他者に教えるなり隠すなりは自由です。それでは津田沼、どうぞ」

「おう! それじゃあどこに割り振られるか楽しみにしておけ! スイッチオン!」


 盛大な掛け声と共にいつの間にか用意されていた真っ赤なボタンを津田沼さんが押すと、またもやドラムロールが鳴り響いた。


 そしてドラムの音が速まっていき、ひときわ大きくダンッ、と響いた後私の視界にウィンドウがポップした。

 そこには大きな文字で『バトルフィールドは【4】になりました』と書かれていた。


 それと同時にそこかしこから数字を発する声が聞こえた。


「さぁこれで準備は完了だ! 君も! あんたも! 最後まで勝ち残るために己の力を存分に発揮してくれ! 最高のバトルを期待しているぞ!」

「はい。皆様にはお時間になるまでしばしこの街、イベンタウンでお待ちください。なお先ほど申し上げたとおり、詳細と自身のバトルフィールド番号はイベントページに記載されていますのでそちらをご覧ください。それでは、皆様のご健闘をお祈りしております」

「以上をもって俺達による説明は終わりだ! それじゃあ最後にGM津田沼と……」

「成田でした。皆様最後までご清聴ありがとうございました」

「来冒者諸君! 最後の一人を目指して頑張れよ!」


 そう告げると周りから大きな拍手や歓声が広がり、それを浴びながらGMの二人は来たときと同じように噴き上がった煙と共に消えていった。


 その後は次第に拍手や歓声も小さくなっていったが、代わりに闘志とでも言うのか圧力のような物が広場を包み込んだ。

 どうやら他のプレイヤー達もバトルロイヤルに対するやる気は十分あるようだ。


「アシュリー勝ち残るわよ」

「はい。共に戦いましょう」


 それからしばらくして開始の時間に迫り、一分前になり私とアシュリーはバトルフィールドへ転移された。

その転移された場所は……、森の中だった。


次回は10月25日の予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] オトメさん、この場所に出て来て大丈夫ですか?(周囲の方達も含めてですが) [一言] バトルスタート!最後の一人を目指して頑張りましょう。
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