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マルチエンディングストーリーズ~人形姫はVR世界を踊る~  作者: 月海海月
第4章 第一回イベント『バトルロイヤル』
66/73

比較的まともな冒険者達

投稿予約ミスって遅れました。ごめんなさい!

 うちの子達のおしゃべりが落ち着く前に、アシュリーが声を掛けたことによりお開きとなった。


「お待たせしましたクリス様」

「もっとゆっくりしててもよかったのよ。ありがとね」

「いえ、また奥へ行きますか?」

「そのつもりよ」


 イベントに向けて今はとにかくレベルを上げたい。せめて後3レベル、今日中にレベル25になるまで上げられれば、明日の始まるまでにもう少し上げられるだろう。


「さて、それじゃあ行きましょうか」

『はい』




《種族レベルが上がりました。任意のステータスに2ポイント追加してください》

《職業レベルが上がりました。スキルポイントが2ポイント追加されました》

《スキル【操糸術】のレベルが20になりました。新たな技【コブウェブ】を覚えました》

《スキル【操糸術】のレベルが規定値になりました。派生スキルが取得出来ます》

《従魔『アシュリー』の種族レベルが上がりました》

《従魔『ベル』の種族レベルが上がりました》

……


 あれから、何十匹、いや百匹は超えていたかもしれない、その数の虫達を屠り続けた。

 途中夕飯のためにログアウトしたとはいえ、それ以外はずっと戦っていた。私達無生物種やエイダのような霊種の体は満腹度の減少がないため休憩を取る必要もなく、変な横やりもなかったから、目標にしていたレベル25になるまでひたすら戦闘を繰り返すことが出来た。


 その際に何度かシールドフライとマジックフライが出てきたので、例のマジックフライの仲間を呼ぶ条件も探ってみた。

 わかったことと言えば、グレンの言ったとおりマジックフライが鳴き声を上げるトリガーはシールドフライにあるようだ。


 無理矢理マジックフライを先に倒したり、シールドフライを速攻で倒したり、逆に遅く倒したりしたが、その場合ではうんともすんとも鳴いたりしなかった。

 で、試しに最初と同じようにシールドフライを拘束した状態で倒してみたところ、フィーフィーとマジックフライが鳴き始め、大勢の虫達が殺到した。


 他にも細かい条件があるのかもしれないが、とにかくこれで拘束さえしなければマジックフライが仲間を呼ぶ事はないことが判明した。

 ちなみに呼ばれてやって来た大群は、前衛皆がボロボロになりながらも誰も欠けることもなく倒しきった。前回と違いヘクター達が増え、装備も段違いにいいものになっていたから辛勝だったが勝つことが出来た。


 他にはランスビーが五匹編成でやって来たり、初め出会ったときは互いに戦っていたハンマービートルとアックスビートルが私達が来た途端に一緒になって襲ってきたり、とまぁまぁ焦ったことはあったがそれらも全て経験値へと変わっていった。


 さて、そのおかげで私達はそこそこレベルが上がった。

 私はさっき言ったとおりレベル25になり、アシュリーは24に、ベル達は23になり、ヘクター達は16、エイダは15になった。


 レベル15を超えたヘクター達は新しいスキルも取得した。

 ヘクターは【受け】を取得した。このスキルは攻撃を受け流しやすくなったり、自身が受け身をとりやすくなったりと意外と幅が広く応用の効くスキルだった。

 アイリスは【回復量上昇】と言うヒールなどの回復量を上げるスキルを、ジェフは鍛冶に使えそうという理由で【火魔法】を取得していた。ケイトは以前【操糸術】と悩んでいた【看破】を取り、エイダは【洗濯】を取った。

 エイダに関してはもう何も言うまい。MESOでは装備が汚れる事がないので、どの場面で【洗濯】が必要になるのか私にはさっぱりわからないが。

 エイダは取得したことに非常に満足しているが何を洗濯するのかは甚だ謎だ。


 そして私も【操糸術】のスキルレベルが20になり、新たにコブウェブという技を覚えた。

 この技は私の近くに蜘蛛の巣状の罠を、木の間や地面に一瞬で作り上げる技だ。ここの虫達で試してみたが、罠に触れると一瞬で相手に絡みつきバインドのように身動きを封じると言うものだった。

 サイズもある程度変えることが出来た。だが一つの罠に基本は一匹しか拘束出来ないので、余り大きくしても効果はない。但し一匹を拘束しかけている間に他のがさらに接触した場合は、複数でも拘束出来たので連続で突っ込んでくる敵には大きく作っておくのも有りかもしれない。


 設置型のバインドと考えれば、便利な技なのだが欠点もある。

先ずはフライングアタックしてきたアックスビートルには突き破られてしまい効果が発揮しなかった。だから強い攻撃には弱いのかもしれない。

 そしてネックなのがこの技を使うと糸の耐久値がゴリッと減ってしまうのだ。切り離して設置しているのだから仕方がないのかもしれないが、罠の割にはたくさん設置するのが憚られるものだった。


 スキルレベルが20になったことで【操糸術】の派生スキルも取得できるようになった。


 その派生スキルは【拘束強化】【糸節約】の二つ。

 【拘束強化】はバインドやマスク、コブウェブの拘束系の技を強化するスキルで、拘束を解くのにより強い力が必要になり、それに伴って拘束時間も延びるというものだ。【糸節約】は耐久値の減少を抑えるだけだが、あるとないとでは後に大きな差が出てくるだろう。


 と言うことで二つとも取得した。【拘束強化】が8ポイント、【糸節約】が10ポイントと中々したが、いずれ取るだろうから後悔はしていない。

 ……後悔はしていないが、残りスキルポイントが12になってしまい少しだけ心許なくなっている。今後のことを考えるとスキルポイントを稼がなくては足りなくなってくるかもしれない。


 まぁポイントについては足りなくなったら考えるとして、今私は別のことで悩んでいた。

 それは種族レベルの割にスキルレベルの上がりが悪いことだ。


 その理由はわかっている。私が前に出て攻撃する前に皆が率先して戦ってくれて、私の手を出す機会が減っているからだ。皆で戦闘をして楽になったのはとても嬉しいし助かるのだけれど、こんな落とし穴があるとは思わなかった。


 マジックフライが仲間を呼んだときのように敵が多い場合は私も動かざるを得ないのだけれど、基本一体ずつしか出ないからこの数で戦ってもどうしても手が余ってしまうことが多いのだ。

 わざと虫達を呼ばせてのレベル上げも視野には入れているが、これをやると皆かなりのダメージを受けるので、回復するまで待たなくてはならず、結果的にあまり効率はよろしくない。少し前にマジックフライの実験で呼んで倒したときよりはレベルが上がっているが、まだ楽勝とまでは行かないだろう。


 普段ならこれくらい余力があった方がいいが、今だけはイベントに向けて少しでも地力を上げておきたい。

 となると、参加メンバーを減らせばいいのだが、さてどうしたものか。


「どう割り振ろうかしら」

「クリス様、どうかしましたか?」

「イベントに向けて考えていてね。もう少しスキルレベルも上げておきたいのよ」

「そうなんですか。うーん……、なら本番のように、クリス様と私だけで戦いますか?」

「それは……悪くないかも。プレイヤーと戦うためには前のような連携をしっかり出来ないとならないし、二人で強い虫達を相手にトレーニングするべきかしら。今日……はもうそこまで時間がないから、明日イベントが始まるまでは二人でやりましょうか」

「はい。お供します」


 そうと決まった所で、今日のレベル上げはここら辺で終いにして、イベントに向けて使えそうなスキルを精査しておきたいし、公式ページにイベントの情報がないかも見ておきたいから、少し早いがログアウトするとしよう。


 皆にそのことを告げて屋敷へ戻ろうとしたその時、【気配察知】がこちらへ向かってくる複数のプレイヤーを捉えた。


「クリス様、誰か来ます」

「わかってるわフランク。【看破】が青マークのままだから問題ないと思うけど、一応警戒しといて」


 程なく私達の前に四人のプレイヤーが現れた。

 鎧を纏い剣と盾を持った騎士風の男性と斥候のような軽装備姿の女性、眼鏡をかけた魔法使い風の男性とヒーラーらしき格好の女の子だ。


「ややっ! そこにいるのは噂のっ!」

「グラハム声デカい」

「あの数の従魔の反応。やっぱりお嬢様だったか」

「うわー! 私、生で初めて見ました!」


 その四人は私達を見るなり街で会うプレイヤーと同じような反応を示した。

 まぁそれはいいとして、街とは違って私達と彼らしかいないから無視するわけにはいかない。とりあえず挨拶は返しておかないと。


「皆さんごきげんよう。ここに来ると言うことは、あなた達はこれからボス戦かしら?」

「おお! ごきげんよう! おっしゃるとおり我々は遂にここのボスを倒しに来たのだ!」

「グラハムうるさい」

「そうなの。頑張ってね」

「応援感謝する! クリスティーナさん!」

「うるさい!」


 うん、確かに声がデカい。それよりもこちらは名乗ってないのだけれど彼は私のことを知っているらしい。どうやら容姿だけでなく名前まで知れ渡っているようだ。


 そんな考えが顔に出てしまっていたのか、グラハムと呼ばれていた男性が一言謝ってから名乗り始めた。


「おっと申し訳ない! 一方的に知られているのは不快でしょう! 我々も名乗りましょう!」

「あっグラハムは長いから先ずは私達からね。私はヨザクラ、見ての通り斥候(スカウト)よ。よろしく」

「どうも、スモールフォレストと言います。周りからは小森とか林とか眼鏡なんて呼ばれます……。あっ、中級魔法使い(マジシャン)です」

「私はよっちゃん、召喚術士(サモナー)です。よろしくお願いします!」


 グラハムさんをうるさがっていた斥候の人がヨザクラさん、眼鏡の人がスモールフォレストさん、ヒーラーだと思っていた女の子がよっちゃん、あだ名とかではなく本当によっちゃんで登録したようだ。


「そして私の名は、グラハム・パーミリオンセントバール・ヘクタール! 騎士だ! グラハムと呼んでくれ!」

「ホントうるさいし無駄に長い」

「改めて、私の名前はクリスティーナよ。クリスで構わないわ。……それより名前ってそんなに長く入力できたかしら?」


 ハッキリ数えたことはないが上限は十八文字か二十文字程度だったと思う。


「それはグラハムの名前を見ればわかるわ。ほら見せなさいよ」

「ああ! 見たまえ、考えに考えた我が名を!」


 グラハムさんが高らかと宣言するとパーソナルカードを見せてくれた。そこに書かれていた名前はこう表記されていた。


『㌘ハ・㌫㍊オン・㌶』。

 ……グラハム・パーミリオンセントバール・ヘクタール。


 非常に見づらく言われないと読み方すらわからない、そんな名前だ。彼を初めに対応したAIの子に何故コレを許したのか問い詰めたくなってきた。


「はっはっは! かなり時間をかけたがいい名だろう!」

「えっと、まぁ、すごいわね」

「グラハムは馬鹿だから相手するだけ無駄ですよ」

「……あなた達はこれからボス戦なのよね。慣れないと厄介な相手だけど頑張ってね」

「ありがとう! 必ず勝ってみせよう!」

「うるさい」

「情報はあるので何とかやってみます」

「ありがとうクリスさん」


 スモールフォレストさんとよっちゃんの二人はまるで聞こえていないかのようにグラハムさんの事を無視している。そう考えると返しているだけヨザクラさんのがマシなのかな? 判断に悩むところだ。


 それよりボスフィールドへ飛ばされるとはいえ、私がここにいると気が散るかもしれないし、何より私も戻ろうとしていたところだから、ここらで私達は切り上げるとしよう。


「それでは私達は行きますね。また機会があったらその時は。ごきげんよう」

「ああ! ごきげんよう!」

「あんた使い方わかってるの?」

「ええ、また会ったときもよろしくお願いします」

「わぁ! 本物の貴族みたい!」


 挨拶も済んだしこの場を離れるとしよう。それより前に後ろで「いざボスフィールドへ!」「一人で行くなって!」「さぁてやりますか」「蜘蛛に相性いい子はっと」なんて聞こえてきたから早速ボスフィールドに向かったようだ。

 悪い人達ではないが如何せん一人キャラが立ちすぎてて会話に困る。まぁそれでも折角知り合ったのだから大蜘蛛を倒せるように願っておこう。


「あっ!」


 そう言えばよっちゃんの職業は召喚術士って言ってたのに従魔を見てない。折角他の人の従魔を見られるいい機会だったのに……。まぁ、また今度会えたらその時見せてもらうとしましょう。


「さぁ、私達は屋敷へ帰りましょう」

『はい』


 それからホームへ戻ってきた私は、取得できるスキルの一覧を見て便利そうなスキルをピックアップし、その後公式のお知らせを確認しイベントについての説明があったのでそれを確かめてからログアウトした。


次回は10月17日の予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛い子達が頑張るのは嬉しいけど、もどかしいですよね♪ [気になる点] 対応したAIさんも疲れ切って投げやりしたのですよね、ご愁傷様です。 [一言] 『洗濯』で聖水とか使ってアンデット達を…
[一言] フィールドでまともな(一名うるさいのいるけど)プレイヤーに会ったのは何気に初めてですかね 今まで遭遇するプレイヤーといえばPKしかいなかったからなぁ
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