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マルチエンディングストーリーズ~人形姫はVR世界を踊る~  作者: 月海海月
第4章 第一回イベント『バトルロイヤル』
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錬金:魔石

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 予定通りお婆様のとこへ行くが、そう言うと装備を確かめたいという声が多数上がったので、その子達には好きにさせることにした。


「で、残ったのはアシュリーだけね」

「そうですね。皆新しい装備を早く試したいんだと思います」

「アシュリーは良かったの?」

「はい。私の務めはクリス様の側にいることですから」

「それは嬉しいけど、本当はアシュリーも混ざりたかったんじゃないの?」

「そ、そんなことないです……。もうさっさと行きますよ!」

「はいはい。今行くわ」


 結果一緒に行くのはアシュリーだけとなった。ベルとセルも皆と一緒にいたいと言って出かけたので、今日はアシュリーと二人だけだ。


 先に行ってしまったアシュリーを追いかけるように部屋を出て、待っていたアシュリーと共に転移しお婆様のとこへ向かった。


~~~~~~~~


 私達が来る頃にはすでにお婆様は回復薬を作っていた。

 来るのが遅れたとは言え、珍しいなと思っていたら、どうやらイベント前にレベル上げをしようとするプレイヤーが多くいて、それに伴い回復薬が足りなくなっているようだ。

 なのですぐに手伝いに入ると、今日はそこそこ忙しいの、とのほほんとした口調とは裏腹に次々と作っていくお婆様にこちらが処理しきれず、初日の様な慌ただしさになってしまった。


「ありがとうねクリスさん。おかげで助かっちゃったわ」

「いえ、むしろ忙しいときに来られてよかったです。それに召喚玉のことでお礼もしたかったですし、丁度よかったです」

「あらあら嬉しいわ。おかげでこんなに早く終わっちゃったわ。ところでこの間は何を聞こうとしたのかしら」

「この間? ……ああ」


 何のことかと思ったが、前回契約のことで頭が一杯になり、去り際にようやく思い出したが時間がなく聞けずじまいだったことを思い出した。


「実はお婆様に聞きたいことがあって」

「あら、何かしら?」

「お婆様は魔石のサイズを大きくするとき、どうやってますか?」

「その口振りだとやり方は知ってるみたいね。クリスさんは今までどうやって大きくしているのかしら?」


 質問を質問で返されてしまったが、素直に今までのやり方を伝えると、あぁあれね、と呟きつつ何故か哀れみの目を向けられてしまった。


「確かにそれでも大きくは出来るけど、それだと魔石たくさん必要になるんじゃない?」

「まぁ、そうね」

「大きくするだけなら別に魔石からじゃなくても、魔力を込めれば大きくなるわよ」

「それは試したことがあるし一応成功してるけど、同じ属性の魔石しか作れないのではなくて」


 十個の魔石を一つ上の魔石にする方法の他に、自分で魔石を作ったときのように魔力をひたすら込めてやるやり方のサイズアップを試したことはある。

 だがこのやり方だとかなりのMPが必要で、それなのに覚えている魔法、私だと光と闇の属性の魔石しか作ることが出来ないのであまりいい印象はなかった。


 これでも別にいいと言われればそうだが、もっと効率よく、なおかつ他の属性でも出来るならその方法を知りたい。


「各属性の魔力を込めたなら、確かに対応した魔石しか出来ないわね」

「んん? どういうことかしら?」

「クリスさんは【無魔法】って知らないかしら?」

「……聞いたこともないわ」

「やっぱりね。この【無魔法】があると便利なのよ」


 軽く説明してもらったが、【無魔法】とは属性を持たない、純粋な魔力だけを使う魔法のことのようだ。

 魔法としての威力は他の属性付き魔法より劣るらしいが、こと【魔力操作】に限って言えばとても相性がいいとのこと。

 今回私が悩んでいたように、属性付きの素材に対しても魔力を込めることができ、属性がない分扱いやすく楽に魔力を込めることが出来るそうだ。

 私のイメージだと【無魔法】で込めると何となく中身が薄くなりそうだが、込められた魔力はすぐに込めた素材の属性に馴染んで変化するため問題ないらしい。


 だから【無魔法】で【魔力操作】して魔力を込めるとどんな魔石のサイズアップも今までよりも楽に出来るそうだ。


 で、肝心の【無魔法】の取得方法だが、図書館に参考書というか指南書というか、があるからそれを読んで理解すると取得できるとお婆様に教えてもらった。


「図書館にそんなことが隠されていたなんて……」

「あらあら。普通は調べたい物があったら図書館に行くんじゃないかしら?」

「うーん。そう言われればそうね……」


 今の時代、調べ物と言ったら端末ですぐに調べられるので、わざわざ図書館に行って調べると言う発想が抜けていた。


「まぁいいわ。後で読みに行かないと」

「うふふ。【無魔法】の本ならここにもあるわ。今取ってくるわね」

「えっ、あ、ありがとうございます」


 すぐに戻ってきたお婆様の手には本、と言うには冊子のような物が握られていた。はいこれ、と渡されたその冊子には『魔法の原点 無魔法』と書かれていた。


 すぐ読み終わると思うわ、と言うお婆様に感謝してから読み始める。これと言って面白いことは書いてなく、無魔法の特徴や発動の仕方が書いてあり、無魔法こそが魔法の基礎であり原点である、とまとめられていた。


《スキル【無魔法】が取得可能になりました》


 そして読み終わると同時にメッセージが流れ、どうやら【無魔法】を取得出来るようになったようだ。必要なポイントも3と多くなかったのですぐに取得した。


「取得出来ました。お婆様ありがとうございます」

「流石クリスさん、覚えが早いわ。なら実際に【無魔法】を意識して魔石のサイズアップをやってみたらどう?」

「わかりました。やってみるわ」


 極小サイズの魔石を取り出し、覚えたての【無魔法】を意識して魔力を流していく。

 すると今までよりもするすると魔力が流れていき、余り苦労せずに小サイズの魔石が出来た。MPこそ半分近く消費しているが明らかに簡単に作ることが出来た。


 その出来た魔石をまじまじと見ていたら、お婆様が笑みを深めて褒めてくれた。


「凄いわクリスさん。初めてで成功させるなんて。おめでとう」

「ありがとうございます。随分楽に出来たと思います」

「そうでしょう。本当は全属性あった方がいいのだけれど、【無魔法】があれば少しはそれを補えると思うわ」

「そうなのね。教えていただきありがとうございます」

「いえいえ」


 知りたいことも聞けたし日も沈み始めているので、長居しても迷惑になるだけなので、私とアシュリーはお暇することにした。


「召喚玉のこと、それに今日の魔石のことも、いつも教えていただきありがとうございます」

「あらあらうふふ。こっちもいつも助かっているわ。ありがとうね」

「こちらこそ。それではそろそろ帰ります」

「マチルダ様、失礼します」

「はい、またいらっしゃいな」


 さて、次はお買い物だ。買うのは皆の生産スキルを使うための道具セットだ。

 それを買うために以前錬金などの道具セットを買った広場近くにある商店へ足を向けた。


「えーっと、必要なのは、【鍛冶】と【裁縫】でしょ。後は……」

「エイダの【掃除】と【大工】と【料理】、それとデクスの【農業】も道具があった方がいいかと思います」

「確かにそうね。それらの道具もあるのかしら? ……エイダって今まで何で掃除してたのかしら?」

「屋敷にあった物に手を加えて使ってましたよ」


 商店にやって来た私達は、そうなことを話ながら買い物をしていた。

 道具セットがあるところへ行っては、それぞれに対応したセットを買い、セットとして販売してない物は、店内をぶらついたり商品リストを見て探していた。


 必要だと思った物を買って店を出た頃には、何だかんだとそこそこの金額を消費していた。

 買ったのは、【鍛冶】、【裁縫】、【大工】、【料理】の道具キットと箒やモップなどの掃除用具、【農業】に使えそうな道具といくつかの花や作物の種、後は裁縫用に布を何枚か買った。他の素材は【採掘】や【伐採】で確保できるので見送った。


「ちょっと買いすぎたかしら?」

「うーん、でもどれも弟妹達が使う物ですしいいんじゃないですか?」

「それもそうね。なら帰りますか」

「はい」


 そんな買い物を済ませ屋敷へ戻ってきた。

 ベル達もすでに戻ってきており、私が帰って来るなり装備の感想を報告してくれた。

 総じて皆高評価だ。問題もなく、威力が上がり早く倒せるようになったとのことだった。


 ドドドンさんとオトメちゃんには、問題なく使える事とお礼のメールをしておかなくては。


 そのメールを送ったところで、もういい時間になっていたので、皆に一言告げてから今日はログアウトした。


~~~~~~~~


「あっ奏太? 連絡あったけどどうしたの?」

「姉ちゃんイベント参加する? 俺は参加するけど」

「いきなりね……。私ももちろん参加するよ。報酬がなにかまだお知らせ来てないけど、一応生き残りを目指すつもり」

「だよなぁ。なら姉ちゃんとは別のフィールドになることを祈っておかないと」


 MESOからログアウトすると弟からの着信履歴があったので、金曜だしまだ起きてると思い連絡してみた。と言うかどうせMESOの事ならゲーム内で連絡してくれれば早かったのではなかろうか?


「仮にバトルロイヤル中に出会ったら弟でも手加減はしないわよ」

「うぅ、わかってるよ。だから同じにならないように祈ってるんじゃん。まぁ俺もレベル上げてるからそんな簡単には負けるつもりはないけどね」

「へー言うわね。奏太は今何レベルなの?」

「27レベ」

「……普通に高くてびっくりしたわ」


 今の私が21だから、明日一日やっても追いつけないほど高レベルだ。もしかしなくても上位プレイヤーは30超えてるんじゃないの? ヤバい不安になってきた。


「姉ちゃんは?」

「21」

「マジ!? 意外に低いじゃん。俺でも勝てるかも!」

「まぁ今のプレイに不満はないからいいけど、イベントはちょっと不安ね。まぁ本番では今の私の全力を出すことにするわ」

「あーうん。やっぱり別になることを祈るよ」


 それからいくつかMESOについて語り合い、互いに出せる情報を話していた。


「ふぁあ。私そろそろ眠るわ」

「姉ちゃん相変わらず零時前には寝てるんだな」

「そういう習慣が付いちゃったのよ。奏太も早く寝ないとダメよ」

「わかってるよ。んじゃ姉ちゃんおやすみ」

「おやすみ。イベントお互い頑張りましょうね」

「うん!」


 通話を切って目を瞑るとすっと眠りに落ちていった。


次回は10月9日の予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 子供達が自慢話する光景にほっこりしますね♪ [一言] 準備完了♪どんな感じになるのかな。
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