錬金:血魔石
今回ごちゃっとしてます。文章力ががが……。
屋敷に戻ってきた私は早速血魔石を作ろうとしたが、ふとアシュリーに強化を望むか聞くのを忘れていたことに気がつき思い留まった。
もしかしたらあんな奴らの血液を使ってまで強くなりたくないと思っているかもしれない。
「ねぇアシュリー。聞いてなかったけど、私はあなたの核と血魔石を合成してから進化させようと思っているのだけど、あなたはそれでいいのかしら?」
「? ええ、マチルダ様の所で話をしていたときからそうだと思っていたので、そのつもりでしたよ」
しかし、返ってきたのはそんなあっけらかんとした返事だった。
「あの男達の血液で嫌じゃないの?」
「それは……、思うところはありますが、マチルダ様との約束で悪人だけとしましたので、どのみち大差は無いかと」
「それでいいの?」
「ええ。私は妹達と比べても弱いので、強くなりたいです。クリス様の為にも」
「アシュリー……。わかったわ」
それにアシュリーは覚悟も出来ているようだ。
なら私は全力でそれに応えるだけだ。
そうと決まれば、血魔石を作るために今一度アイテムを確認しよう。
【素材】混合血液 レア度2 品質C
いくつもの血液がごちゃ混ぜになった液体 成分を抽出することで薬の材料になる 人種と亜人種の血液のみ含まれている 毒性はない
鑑定結果は混合血液。魔法瓶(樽)に入れていたから黒くなったり固まったりはしていない。説明に気になる点があるが、今は血魔石の作製が先なので、また今度お婆様にでも聞いてみよう。ただ毒が無いのは安心した。
こちらはこのまま使うとして、魔石の方は今の私が出来る限りサイズアップをしてみるつもりだ。
「あー、お婆様に魔石の強化のことも聞いておけばよかったわね」
私のやり方は掲示板に載っていた十個の魔石を一つにまとめ、一つ上のサイズの魔石を作るやり方だ。
これはこれで便利ではあるけど、お婆様ならもっと効率のいいやり方を知っているかもしれない。
とにかく今はこのやり方でやっていこう。
魔石は今の所どの通常モンスターを倒してもほとんどが落としてくれるので、数はたくさんある。なお大蜘蛛は魔石を落とさなかった。
第一エリアの敵からは極小の魔石が、第二エリアのあの森のモンスターからはたまに小の魔石が手に入った。だけどこの小の方はそこまで数がないので極小から合成して作ることにした。
前にやったようにして第一エリアで集めた土魔石:極小からさっと四個の土魔石:小を作った。
それから十個の小サイズの魔石を並べて合成を始めた。
やってることは同じなのに、一つ一つの魔力が多いから集めるのが大変だ。それにゆっくりもしていられない。魔力が霧散しているのか少しずつだが空気中へ抜けて出ている気がする。
素早く精密に多くの量を真ん中に置いた魔石に向かって流すようにイメージして合成していく。
程なくして、魔力を吸収して一回り大きくなった魔石が完成した。
名前は土魔石:中。説明は他の魔石とあまり変わっていないので割愛する。
本当はさらに上の魔石も作りたかったのだが材料不足で出来ない。まぁ、この魔石を作るのでも大変だったから、さらに上となると今の私では作れないと思うが。
「魔石はこれが限界ね」
完成した中サイズの魔石から魔力を抽出し、勿体ないからただの石ころになった他の魔石へと移してみた。しかし、結果は三個しか元に戻らず他は霧散してしまった。
それから、魔法陣の書かれた布の中心に魔法瓶を置き、空になった魔石を持ち、付与を開始する。
本来液体を使う場合は釜の方を使うのだが、二リットルぐらいしか入らないから今回は布で試してみることにした。
「さぁ、やりましょうか。……魔力よ、血液と共に魔石に集い新たな形へ昇華なさい。付与!」
魔石を手に持ち魔法瓶の上に持っていき、付与を発動する。
血液中の魔力は【魔力操作】に反応があるので問題ないとして、お婆様の言う血の成分なる物がどんな物かはわからない。
だから私が知っている知識、赤血球や白血球などをその成分と仮定して、それらを付与するようにイメージする。もっと砕けて言うと水分以外、赤いドロッとしてそうな部分をイメージして付与をしていく。
すると魔法瓶から濃い真っ赤な液体が吸い上げられるように魔石へ流れ出した。それに一瞬見とれてしまったが、【魔力操作】が疎かになっているのに気がつき、慌てて魔力も上っていく液体の流れに合わせるように操作していく。
これがまた難しかった。
【錬金】の時に【魔力操作】をすることは最早定番だけど、今までやっていた付与は魔力自身を付与していたから、操作をしても平気だった。
だが今は血の成分の付与と魔力を操作するという二つの事をしなければならない。これが腕や糸を操るのとは勝手が違う難しさがあった。何というか腹話術を魔力でやっているような感じだ。腹話術出来ないけど。
だけどここで意外なスキルが発揮した。それが【二重魔力】だ。
そもそも私が【魔力操作】で操っていたのは、自分の魔力しかないことに気がついた。
魔石のサイズアップの時も結局は合成をするときに、自分でも気づかずに使われていた魔力を補強していたにすぎなかった。魔石の中の魔力が移動していたのはあくまで合成の能力で【魔力操作】の力ではなかったのだ。
【錬金】の合成を覚える前に、魔石の合成が出来ていたから勘違いしていたが、そもそも武術系スキルでも言えることだが、技や技術はあくまでシステムが使いやすいように簡略化したもので、無くたってそれが出来るのだ。
いい例が【短剣術】のダガースタブだ。結局はあんなのただの突きでしかなく技じゃなくても使える。但しシステムがその時の最適の形に補ってくれると言うだけだ。
それは生産スキルの【錬金】も同じで技術として覚えていなくても、私自身が合成や付与を編み出してそれに【魔力操作】が補強してたというのが今までの成果だ。
話が逸れてしまったが、つまり何が言いたいかというと、今操らなければならないのは自分ではなく他人の魔力で、それをハッキリと認識せずに無理矢理やろうとしていたから難しかったのだ。
だが、付与に使う魔力と血液中の魔力を動かすための魔力は別なのだと認識した途端に、私の中の何かがカチリとかみ合い一気に扱いやすくなった。
それが何なのか考えて思い出したのが【二重魔力】だった。まだ確証はないがこれしかないと思っている。
今までは消費したMPの自然回復が少し早くなった位しか思ってなかったけど、実は凄いスキルなのかもしれない。
そんなこんなで次々と魔石に流していくと、輝きのない薄黒かった魔石がどんどんと赤く輝いていき、遂に血魔石が完成した。
【素材】血魔石:中 レア度4 品質C
血液を元に造られた自然界では決して存在しない魔石 この一つで人種の血液と魔力の五割が込められている 込められた血液により魔石としての効果が異なる
「出来た! 血魔石が出来たわ!」
「おめでとうございます」
「でも、思っていた性能ではないわね。これで五割。血液も成分だけ取ったせいか意外と残っているわね」
「それでも完成はしたんですよね? なら今はそれでいいじゃないですか。血液も取っておけばいいのですし」
「あなたの強化のためだから本当はもっといい出来にしたかったのだけれど。そう言ってくれるなら今回はそれでいいと言うことにしておくわ。どのみちこれ以上は作れそうに無いし」
「はい」
にこりと笑うアシュリーは、これで十分とでも書いてあるような満足した笑顔を浮かべていた。
さて、かなり大変だったがこれはまだ準備段階だ。
これからアシュリーの核の合成がある。まだまだ気が抜けないがアシュリーの進化した姿を見るまでもう少し頑張ろう。
言いたいことは【二重魔力】は、自分ともう一つの魔力を使えるぜ、と言うことです。
アシュリーさんが進化しそうなので明日投稿予定です。




