東の第二エリア
ベル達新規組六人がレベル15になったときに、スキルを加えるのを忘れていたため、『魔改造その2』、『2章終了時ステータスまとめ』を加筆しました。
何度もミスがありごめんなさい。
それでは本編をどうぞ。
火曜日。
今日は先にご飯を食べ、お風呂に入り就寝できるように準備をしてからログインした。
今日は何をするか話し合った結果、東の先のフィールド、東第二エリアへ行くことにした。ついでに通りがけに大蜘蛛を倒して準備運動してから行くことになった。
そして森を進みサクッと大蜘蛛を倒した。
今は私達の前には半透明になっている壁があり、これを抜けると先のエリアと言うわけだ。
掲示板でネタバレ防壁とかモザイク壁とか言われているこの壁は、一度通過すると無くなるらしい。
「皆、この先はどんな敵が現れるかわからない場所だから油断せずに進むこと。特に四人は気をつけて」
『はい』
「よろしい。じゃあ進むわよ」
大蜘蛛と再戦するための石像の先にある、一部だけ壁がぽっかりと空いている場所へ足を進める。
微風のエアカーテンのような物を通り過ぎたかと思ったら、そこは、今までいた東の森以上に鬱蒼とした木々が乱立した森であった。
東の森はある程度人が入り手入れされた森だったのか、この森はそれに対し、乱雑に草木が生え、差し込む光もまばらだ。
風で木が揺れるガサガサという音に混じり、ギチギチ、ブンブンというモンスターの声や羽音、足音らしきものも聞こえてくる。
しかしゲームとしての配慮なのか歩きにくくは無さそうだ。
まともな道もないそんな森を真っ直ぐ進んでいると、森を歩くガサガサという音と【気配察知】が何かを捉えた。
足を止め何が来るか警戒していると、私達のいる少し先に大型犬よりも大きな甲虫が現れた。
ハンマービートル Lv14
通常モンスター アクティブ
モンスターの名前はハンマービートル。全体のシルエットはカブトムシだが、角の先が横に広がるハンマーのようになっている。さらに後ろ足の先端もハンマーになっていて、不用意に背後に回ると痛い目に遭いそうだ。
「通常モンスだけどレベルが高いわ。十分に気をつけて」
『はい』
返事と共に遠距離組が攻撃を仕掛ける。
「「ストライクシュート!」」
「ファイアランス」
「ビビィィィ!」
昆虫特攻がある双子の攻撃がかなりのダメージを与え、グレンの【火魔法】も大蜘蛛と違いちゃんと効いている。
そのうちに接近した私達は、アシュリーが先頭で盾役をし、デクスは【斧術】の、エイダは【剣術】の、フランクは【槍術】のそれぞれの技を放っていく。
「挑発!」
「ヘビークラッシュ」
「パワースラッシュ!」
「ボーパルスピア!」
「ビ、ビィィィ……」
私が手を出さなくても皆の出せる最大技を受け、ハンマービートルはすでに虫の息だ。
すると最後のあがきを始めた。そのハンマー型の角と後ろ足を振り回し暴れると、羽を広げ飛び、グンと距離を取った。
その後角を正面に据え、巨体に似合わない速度で突進してきた。
「「やっ!」」
「ビッ!」
が、その巨体が私達を吹き飛ばすより先にベルセルペアの矢が突き刺さり、明後日の方向に墜落した。
見せ場もなくかわいそうな終わり方だった。まぁ、こちらからしてみれば楽で良かったが。
さてさて、何を落としたのかしら。
【素材】槌角甲虫の角 レア度3 品質D
ハンマービートルの角 外側は金属のように硬いが中はスカスカのため見た目よりも軽い
【素材】槌角甲虫の外骨格 レア度3 品質D
ハンマービートルの前羽 金属のように硬いが独特な形をしているため加工はしにくい
落としたのは角と外側の羽だった。正直どちらも微妙だ。角はまだ武器にも使えそうな気はするが、重さがない分威力も少なくなりそうだ。羽は装備の一部に付けて補強するぐらいしか使い道が浮かばないし、装備となると私は扱えない。やはり微妙だ。
ハンマービートルの見た目からしても角が当たりのドロップアイテムだろうから、売ればいくらかはしそうだ。
「レベルの割にあっけなかったわね。皆お疲れ様」
「動きも遅かったですし、飛ばなければ楽でしょうね」
「そうね。でも何より、ベルとセルの【昆虫特攻】がいい仕事してたわね」
「「楽勝でした!」」
「頼もしい限りだわ。次は大技は少なめで行きましょう」
『わかりました』
その後もマップの空白を埋めつつ進んでいく。今の所あるのは木や草ばかりで他のプレイヤーや住民の姿は見ていない。
その間に何度も敵と戦った。
ここで出るモンスターは全部巨大な昆虫で、【昆虫特攻】持ちの装備をしているベルとセルとかなり相性が良く、何度かピンチはあったものの全員無事で探索出来ている。
今までに出てきたのは、攻撃を仕掛けてもひらひらと躱しカウンターでそこそこのパンチを打ってくるファイティングバタフライ。ハンマービートルの亜種で角の形状が斧になりより危険度が増しているアックスビートル。
危なかったのが【気配察知】でも察知できず、木の上から不意打ちで矢を飛ばしてくるボウファスミッドだ。こいつは枝に擬態し弓のように変化した体を使い、尖らせた枝を放ってくるモンスターだ。
初めはどこからやられたのか気付かず慌てたが、アシュリーが【危機察知】で事前に矢を防ぎ、飛んできた方向からどこにいるか見つけ出し遠距離組が枝から落とし総攻撃して倒した。
道中伐採ポイントも多くあり、私とデクスで伐採しながら進んでいた。
そして、今私達の目の前にまた新たなモンスターが現れた。
マジックフライ Lv13
通常モンスター アクティブ
シールドフライ Lv13
通常モンスター アクティブ
ひらひらと蝶のように飛びその手に杖を持ったモンスターがマジックフライで、異様に巨大化した前足を持つトンボのようなモンスターがシールドフライだ。
「また新種ね。この森は種類が多いわね」
「今度は飛んでる敵かぁ。俺達じゃ届かないかも」
「デクスなら大きいし届くんじゃない?」
「……ジャンプすれば届くかもな」
「とりあえず僕とベルとセルで攻撃しよう。落ちてきたら皆が攻撃すればいいさ」
私の呟きに続き、フランクがこぼした言葉を聞いたエイダが問いかけ、本気か冗談かわからないことをデクスが返した後にグレンが定番になりつつある作戦を立てた。
その作戦に反論はなく、魔法を使うタイプなら厄介なので、後ろにいるマジックフライから三人に攻撃してもらうことにした。
「「アローシュート」」
「ファイアアロー」
三人が攻撃する前から動いていた私達は、落ちてきても対応出来るように構えた。しかし私の目に映ったのは予想しなかった驚くべき光景だった。
三人の攻撃は真っ直ぐマジックフライに向かっているが、その性能上矢の方が早く到達する。
そのグレンの魔法より僅かに先を行く矢が当たる、と思ったところに、高速で飛来したシールドフライがマジックフライの前に現れた。
まさか自分の身を犠牲にして仲間を守るのかと考えた矢先、シールドフライが変形した。いや、変形ではなく、その異様に発達した前足で体全体を隠したのだ。
シールドフライの前足は分度器の様に半円状になっており、さっきまで飛んでいたときはぶら下げていて、重りのように邪魔でしか見えなかった。
だが今はその半円状の足を左右ピタリとくっつけ持ち上げ、その内側へ体を丸めている。
下からではなく正面から見ると、きっと円形の盾からトンボの頭と羽だけが生えているように見えることだろう。
さらに驚くのが、特攻が付いているはずのベルとセルの矢を、突き刺さることも貫通することも無く、シールドフライはまさに身を盾にして僅かなダメージだけで防ぎきったのだ。
そして続く魔法も一割ほどのダメージと引き換えに防いでしまった。
するとこちらを馬鹿にするようにシールドフライが鳴き声を上げていた。
「シーシッシッシッ」
「……慢心だわ」
まさかの出来事に一瞬思考停止してしまったが、今まで戦ったモンスターを思い返しても、どれもその名にある武器の特徴を持っていた。シールドフライなのだから盾の特徴があるとわかっているにも拘わらず、その見た目に騙されて安易に遠距離を撃たせてしまった。完全に私の判断ミスだ。
その間に準備したのか、マジックフライが案の定魔法を飛ばしてくるが、これはアシュリーが防いで、適度に躱して事なきを得た。
こちらもデクスが腕を伸ばして斧を振るったり、フランクが跳躍して攻撃を試みているが、結果は届かず全くの無意味に終わった。
シールドフライがいる限り遠距離は悪手だと改め、ならばと二本短剣を投擲した。
「シッシッ」
「……」
疑うことなくそれを防ぐとまたも小馬鹿にするような声を上げた。
だが、それもすぐに驚愕の声に変わった。
「……バインド」
「シシィ!?」
飛ばしたのは木製の短剣で、それには当然糸が付いている。
普段は【操糸術】で糸を操り拘束をしている。だけどこれではもし糸に気付かれた場合、シールドフライほどのスピードなら避けられると思い、【投擲術】で投げ飛ばし一気に糸を近づけさせ、即座に【操糸術】を使い拘束した。
それも丁度、盾で弾かれ後ろに回り、右側の羽を中心に拘束することが出来、シールドフライは片羽で必死に飛ぼうとしているが維持できず真っ逆さまに降ってきた。
「今のうちに攻撃を!」
『はい!』
すぐさま皆に指示を出すと、馬鹿にされたのを晴らすかのように、笑顔すら浮かべながら硬い前足以外の箇所を攻撃していく。
前足以外は脆いのかみるみるHPを減らし、ほどなくして尽きた。
「邪魔者は倒したわ! 後はあいつだけよ」
「「はい! クイックアロー」」
「ファイアランス」
私が声を上げるのと同時に、三人が放った。双子の矢はファイティングバタフライのようにひらりと躱されてしまったが、続く火の槍は完全には避けきれず羽を焦がし、いいダメージを与えた。
「フィー! フィー!」
「何?」
このまま倒すべく、さっきと同じように短剣を投げようとしたところで、いきなりマジックフライが鳴き出した。
バードイーターの様に何かの攻撃かと警戒したが何も来ず、切り替えてバインドをするとあっけなく拘束できた。
それから、引っ張り落としたマジックフライに止めを刺すと最後にひときわ大きく鳴くと消えていった。
思いの外手間取ったことを反省し、シールドフライの対処法がないかと口を開こうとしたその時、いきなりアシュリーが切羽詰まったような声を上げた。
「えっ、なっ! クリス様ここにいては危険です! 【危機察知】が異常なほど反応しています!」
「落ち着いてアシュリー、一体何があるの?」
「具体的にはまだわかりません。でも一刻も早く逃げた方がいいです!」
あまりの慌てぶりに疑問を残しつつも、アシュリーがこんな冗談を言うとは思えないので、一先ず元来た道を戻ることにした。
すると、私の【気配察知】が何かを捉えた。
初めは一匹、次は三匹、まだまだ増えていき、その数は十八匹まで膨れ上がった。
その十八匹は真っ直ぐにこちらに向かってきている。
「ヤバいわ! 皆急いで逃げるわよ!」
「何だよこの数! 何か起きたって言うんだよ!」
「疑問は後にして! 早く、早く逃げましょう!」
【気配察知】のおかげでその多さに気づいた私とフランク、そしてさっきから皆の背中を押すアシュリーの言葉に、その異様さが伝わったのか、皆全力で走り出した。
木が邪魔でまだ全ては見えていないが、虫達が飛んでくるブンブンという羽音がどんどんと近づいてくる。
いつまで追ってくるのかわからないが、ここで足を止めてもレベル15前後の敵に囲まれて終わりだ。だから必死に足を動かす。
グレンは足が遅い自分とデクスに【風魔法】のスピードアップを使ってまでして逃げている。
走って、走って、走って、気付けばマップが変わり、東の第一エリアのボスの再戦場所まで戻っていた。
流石にマップは超えられないだろうと振り返ると、そこに壁でもあるのかのように超えられずにいる虫達がそこにいた。その様子はどれも興奮しており、壁がなければ私達へ殺到していただろう。
角をこちらに向けるハンマービートルにアックスビートル。ひらひらと飛んでいるファイティングバタフライ。シールドフライも三匹も飛んでいる。
さらに初見のモンスターで鎌ではなく剣を振るうソードマンティス。前足とお尻に鋭い針があるランスビーなるものもいた。きっとどこかにボウファスミッドもいるのだろう。
だけどしばらくするとその虫達に落ち着きが戻り、のそのそと森の奥へと帰って行った。
次回は9月9日を予定しています。
東の第二エリア 出現モンスター
体術:ファイティングバタフライ
剣術:ソードマンティス
槍術:ランスビー
槌術:ハンマービートル
斧術:アックスビートル
杖術:マジックフライ
弓術:ボウファスミッド
盾術:シールドフライ
+フィールドボス




