ポルターガイストリベンジ
お昼ご飯を食べて、またログインした。
MESOにもデスペナルティーがあって、現実で一時間、ゲーム内で三時間のステータスの半減だ。
だからゆっくりと過ごし、ついでにMESOの魔法について調べてきた。
ベータ版の時の情報しかなかったけど、始めから取得できる六種の魔法を全て取ると称号とSPが10ポイント貰えるらしい。だけど結局は二、三種しか魔法を使わない上に、どうやら魔法に入る経験値が少なくなりスキルレベルが上がりにくくなったようだ。
これが広まってるからか、生粋の魔法使いでも何種類も魔法を取らないみたいだ。
で、肝心の【光魔法】と【闇魔法】だけど、ベータ版の情報のままなら両方取ってもいいかもしれない。それはその両方の耐性を持ったモンスターがほぼいないことと、相反する魔法だからだ。【光魔法】に耐性があるモンスターには【闇魔法】が弱点であることが多いらしい。逆もしかりだ。
そういうわけでログインした私は、適当に朽ちたドールを倒してレベルを一だけ上げて残りSPを7にして、3ポイントする【光魔法】と【闇魔法】の両方を取得した。これで私も魔法使いの仲間入りだ。
「さて、それじゃあリベンジしましょうか」
例の扉をくぐり部屋の中へと侵入した。
短剣を構え周りを見渡し、いつでも回避できるように注意を払っている。
そして、部屋の真ん中辺りまで移動したとき、視界の隅にポルターガイストが現れたのが見えた。
すぐさまその場から回避すると、私のすぐ横をダークボールが通っていった。無事不意打ちを回避できた。
「反撃させてもらうわ。……ライトボール」
「ゲゲラァ!」
ダークボールを放った後、少しだけ動きが止まるのは前回確認済みなのでその隙に【光魔法】のライトボールで攻撃した。その効果は抜群なのか、大袈裟に騒いでいるしHPも二割以上減った。
痛みがやんだのか静かになったポルターガイストが、またダークボールを使ってきたが、同じ要領で避けて反撃のライトボールを当てた。
これを二回くり返して、HPが半分を切った所でポルターガイストが今までにない動きをした。
その場からスッと消えて、姿が見えなくなってしまった。
「始めと同じ状況かしら。そうだとするとなかなかに厄介ね」
ポルターガイストがまだこの部屋にいるのはケラケラと笑う声でわかるが、場所の特定となると難しい。
そうしている間にもスッと現れて、ダークボールを放ってきた。
「……っ!」
何とかそれを躱すことが出来たけど、反撃しようとライトボールを詠唱している間にまた消えてしまった。
多分だが躱してから魔法の準備をしたのでは間に合わないのだろう。
MESOの魔法は、使いたい魔法を意識すると詠唱というチャージタイムが始まり、それが終わるとMPを消費して放つことが出来る。そして魔法にはクールタイムがあり、同じ魔法を再度使うには魔法ごとの待ち時間を経過させないと、詠唱することすら出来ない。
ここで重要なのは詠唱中断とキープだ。
詠唱中断は、チャージキャンセルとも言われ詠唱中に他の大きな動きをして、その詠唱を中断することで、中断すると今までしていた詠唱が無駄になってしまうがMPを消費せずにすむというメリットがある。
もう一つのキープは、詠唱を終えた魔法をすぐには放たず、そのまま維持しておくテクニックだ。時間で言うと維持できるのは五秒しかないが、素早いモンスターには有効な方法のようだ。
これらはログアウト中に調べた中に書いてあった。
そして、今のポルターガイストのような相手には、キープをしておいて現れたときに放つのがいい案だろう。
「そうと決まれば、賭けに出てみますか」
また放たれたダークボールを回避した私は、部屋の隅まで走り、角に張り付くように陣取った。
いくら首が一回転すると言っても、見えている視野は変わっていない。だからいきなり背後に現れるとどうしても対処が遅れてしまう。
しかし角に張り付いてさえすれば、視界内に全て収まる。
これは何度か避けてみてポルターガイストが壁の中に現れないことと、浮いている高さが私の目線の高さからほぼ変わっていないから打って出た賭けだ。
ただでさえ回避するのが難しい隅にいるのに、もし頭上からやられたらひとたまりもない。
ポルターガイストが現れたのは、私の斜め右前方だった。
それを視界に入れたと同時にライトボールを放つと、ポルターガイストが魔法を放つより先に着弾し、そのまま魔法を使わずに姿を消した。
どうやらこの賭けは私の勝ちのようだ。
《種族レベルが上がりました。任意のステータスに2ポイント追加してください》
《職業レベルが上がりました。スキルポイントが2ポイント追加されました》
その後、結局ポルターガイストに変化はなく、あっさりと倒すことが出来た。
レベルが上がってすぐに挑んだのにまた上がったと言うことは、それなりに強いモンスターだったのだろう。それなのにアイテムは何も落とさなかったが。
まぁ、それは置いといて、どうやらこの部屋にはモンスターが沸かないみたいだから、物色する前にゆっくりとステータスの確認でもしましょうか。
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名前:クリスティーナ
種族:ドール Lv6
職業:ドール Lv6
生命力 8
筋力 15
知力 10
精神力 8
器用 15
俊敏 14
スキル 残りSP3
短剣術Lv6 光魔法Lv4 闇魔法Lv1
木工Lv1 錬金Lv1
識別Lv5 鑑定Lv4 解体Lv5
状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1
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今の戦闘でレベルは6になった。ステータスは必要に感じたパラメータ、筋力、器用、俊敏に割り振っている。
ここのモンスター、主にドールだが痛覚がないのかいくら攻撃しても向かってくるため、さっさと倒したいから筋力に、素早く動けばドールの攻撃はあたらないから素早さに振った。それと元々高かった器用値にも切りよくなるため1振って15にした。
スキルのレベルについてはご覧の通りだ。この戦いでは【光魔法】しか使ってないから、一気に4になった。
さて、この部屋を物色してた結果、手元にある木箱以外特になかった。
その木箱の中を開けてみると入っていたのは、鉄製の鍵だった。
【貴重品】屋敷の鉄鍵
呪いの人形屋敷のどこかにある扉を開く鍵 開くことが出来るのは試練を突破した者のみ
「ふむ。この階はこの部屋以外全て探索しているけど、鍵のかかった所なんてなかった。と言うことはこの鍵は別の階で使うってことかしら」
【鑑定】でみた鍵の説明にも、扉があるのはこの屋敷だと書いてあるから探索していけばいずれ見つかるだろう。とりあえずしまっておこう。
そして次は一階の探索だ。
流石にポルターガイスト級のモンスターはいきなり現れないと思うが、油断はしないでおこう。
そんな気合い十分で階段を降りた私だったが、階段の踊り場から見た一階の光景に思わず絶句してしまった。
階段の先はエントランスになっていて、とても広くなっている。
そこに、朽ちたドールが十体以上徘徊していた。どれもレベルが1~2と強くはないがこの数は多すぎる。
有効範囲に入っていないのかアクティブになっていないのが救いだ。
「うーん、どうするべきかしら。接近はどう考えても得策じゃない。となると魔法だけど……。一番手前の一体に当ててみますか」
宣言通りに手前の一体にダークボールを当ててみた。
当てたドールは一撃で倒れてくれたが、その近くにいた一体と何故か遠くの一体がアクティブになり、こちらに迫ってきた。
「まぁ二体だけなら何とかなる。かな」
先に踊り場まで到着したドールに短剣の技を当て、通常攻撃で斬りかかった。そうしている間にもう一体もやって来て腕を振るうが、余裕を持って躱し攻撃していたドールに止めを刺した。それからもう一体の方も問題なく倒した。
「結局来たのはこの二体だけか。もう一度試してみましょう」
もう一度、手前のドールにダークボールを当ててみたが、結果は同じ。攻撃したドールの距離に関係なく二体だけが、私に迫ってきた。
「なるほど。ここにいるドール達は、三人一組の繋がり若しくはパーティーのような状態になっていると。それがわかれば強くはないわね」
一体に魔法を当てては二体を釣って倒すを繰り返して何とかエントランス全てのドールを倒し終えた。
「やり方さえわかれば簡単なものね」
所詮は低レベルの三体パーティー、レベル1のドールにダークボールを当てれば、それだけで倒せるから残りの二体を相手するだけですむ。
経験値も低いのかあの数を倒したのにレベルも上がらなかった。
それじゃあ一階の探索を始めたいけど、それより先に確認したいことがある。それは玄関の扉が開くかどうかだ。
ドアノブを回し力を込めるが、扉はびくともしなかった。
「やっぱりダメね。あの鍵も反応なし」
となると何かしらのギミックを作動させるか、また別の鍵を探すか。
だがドアノブに触れたとき、何か強い力で押さえられているような気がした。つまりは、
「この屋敷のボスを倒さないといけないのかしらね」
その強い何かを排除しなければならないかもしれない。
まぁ、元からこの屋敷は全部探索するつもりだったから、いずれその存在にも出くわすだろう。ならば、このまま一階の探索を始めよう。
名前:クリスティーナ
種族:ドール Lv4→6
職業:ドール Lv4→6
生命力 8
筋力 14→15
知力 10
精神力 8
器用 14→15
俊敏 12→14
スキル 残りSP5→3
短剣術Lv6→8 光魔法Lv4(new) 闇魔法Lv1→3(new)
木工Lv1 錬金Lv1
識別Lv3→5 鑑定Lv3→4 解体Lv3→5
状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1