再戦、ガーディアン
お昼ご飯を食べて、すぐログインした。
この世界に降り立った私の視線の先には皆が並んでいた。
その様子は静かだが、リベンジに燃えているのか皆顔つきが引き締まっている。
「私がいない間何かあったかしら?」
「特には。皆次は負けられないと思っているだけです」
「そう。準備は出来ているかしら?」
『はい』
「作戦は覚えている?」
『はい』
「……では、借りを返しに行きましょう」
『はい!』
地下への階段を降りた先には、前回同様中央にガーディアンが立っていた。
それを視野に入れつつ再度やるべき事を確認すると、陣形を組み一歩ずつ近づいていく。
「皆、作戦通りに行くわよ」
『はい』
「それじゃあ……、行くわよ!」
『はい!』
合図と共に矢と魔法が飛び、残りが駆け出す。
先頭はアシュリー、デクス、エイダが並び、その後ろにフランク、私と続き後衛のベルセル、グレンは後方で攻撃をしている。
ガーディアンは矢と魔法を前と同じように杖と盾で防ぐとレイピアをこちらに向けて突進してきた。
それは想定済みなので、アシュリーに正面を任せ、デクスとエイダが早めに横に抜け、手の届く範囲から避ける。
正面にいるアシュリーも真っ向からは挑まず受け流す。このままでは私へ来てしまうが、受け流したタイミングでフランクが槍で進路を妨害することで、勢いに乗っていたガーディアンが踏鞴を踏んだ。
「今! バインド!」
「ガァ!」
その隙を狙っていた私は伸ばしていた糸を即座に近づけバインドを発動する。
だが今回は全身を拘束するのではない。糸を制御して拘束する箇所を絞ることによって、今ガーディアンの腕を、レイピアを持っている腕だけを縛り上げている。
「今よ! 攻撃して!」
『はい!』
拘束した腕を思いっきり引っ張り、ピンと伸ばした所で皆に攻撃の合図を出す。
その合図を聞いた皆は己の武器で一斉に伸ばした腕へと攻撃を始めた。
ガーディアンも引っ張り返してくるが、皆が攻撃している中での腕一本と私の全力とではこちらに軍配が上がっている。
無手の腕や杖でアシュリー達を殴ってもいるが、それは盾持ちの二人が上手く抑え、矢と魔法に盾を使わすことでガーディアンの手数を減らしておく。
だがガーディアンは無手だった手にレイピアを持たせることで糸を切り拘束から脱して、後方に下がってから魔法を飛ばしてきた。
それを避けつつ皆が聞こえるように声を掛ける。
「皆いいわよ! 今のように続けるから本体へは余り攻撃しないで!」
『はい!』
しっかりとした返事に安心感と早くも満足感を覚える。
私達が立てた作戦は、ガーディアンの腕の破壊だ。
前回はただHPを削り第二形態に移してしまったが為に、万全の状態で大剣を持たせてしまった。そのせいであの恐ろしい攻撃力を与えてしまったと考えている。
そこで考えたのが腕の破壊だ。
体の破壊は、バードイーターの瘤でもやったし、大蜘蛛でも足を切断できているので可能だと思っている。
だから一本でも破壊できれば、大剣を持ったときに有利になると考えてこの作戦に至った。理想は腕の全破壊だ。
足の破壊は、結局腕を破壊しないと逆にあの四本の腕でやられてしまうと考えて、おとなしく腕だけを狙うことにした。
それに前回は拘束した糸ごと攻撃していたので、すぐに耐久値が減り糸の無駄になっていたが、手首辺りを拘束している今回ならその心配もしなくて済む。
「仕掛けるわ、アシュリー付いてきて」
「はい」
距離を取り魔法を放っているガーディアンへ二人で駆け出す。
当たりそうなのだけアシュリーに防いでもらい素早く近づく。すると魔法からレイピアにスイッチし突いてくるが、それをアシュリーが受け流し、その隙に私がさらに接近し新たな技を放つ。
「マスク」
「ウグゥ!」
近距離から放たれた糸を避けることが出来ずガーディアンの顔に糸が巻き付いた。
視界を奪うその糸を剥がそうと腕を伸ばすが、それを私とアシュリーで妨害し、技が使用可能になったら即座にバインドで右側二本の腕を拘束する。
その内に寄ってきていた皆に攻撃を任せた。
そしてデクスが思い切り斧を振り下ろすとボキリ、という鈍い音と共に一本目の腕を破壊できた。
「ウグウウゥゥゥ!!」
「いいわよ皆! この調子よ!」
腕が無くなり拘束が緩んだせいでガーディアンは抜け出し顔の糸も引き千切られてしまったが、今の所作戦通りに進んでいる。
落としたレイピアを再度使われないようにベル達がいる方まで飛ばし、今度は杖を持つ腕に狙いを定める。
「さあ、次よ」
レイピアが無くなったガーディアンは、一転、魔法をメインに放っている。こちらの矢や魔法はしっかり防いで接近しようとしても一定の距離を保つように動いている。
これはこれで厄介だが、レイピアでの攻撃の方が油断できず鋭い集中を要されていたので、躱すまでに時間がある魔法の方が私は楽だ。
ただ、デクスは体が大きく精神力が低いので辛そうだ。今はエイダが前に立ち、盾で防いでやり過ごしている。
だが私達も何も考えずに追いかけ回しているわけではない。
皆で追い込むように誘導し、それに加え糸を足下に伸ばしてガーディアンの抜け道を塞いでいく。そしてわざと空けていた空間へガーディアンが駆け込んだところを、
「スイープ」
糸で転ばせ、立ち上がろうとしたタイミングで左側の腕を拘束し皆に合図を出し攻撃してもらう。
そんなことを続けること数回。
杖と盾を持つ左側の腕の両方とも落とし、ついに残り一本まで腕を減らすことが出来た。
だがそれが出来たのもここまでだった。
「アアアァァァ!!」
「来たわね。皆気を抜かないで!」
三本目の腕を破壊するとガーディアンのHPが三割を切り、鎧や兜が剥がされていく。
そして腕一本にも関わらず、大剣を持ち構えた。
まさかその状態でも振り回すのかと焦ったが、ガーディアンはそれ以上のことはしてこず、じっとこちらを見据えたまま動かずにいる。
「クリス様、これって」
「……多分、一本の腕では振るほどの力がないんだわ」
「つまり」
「ビッグチャンスね」
皆を見渡し、ニヤリと笑うと最後の号令を出す。
「さぁ皆、借りを返してあげましょう!」
『はい!!』
それからの総攻撃にガーディアンは碌な反撃も出来ずにただただ攻撃を受けていた。
いっそ大剣を手放しその身軽さを活かして無手で戦った方がいいのではとも考えていたが、ガーディアンはそんなことすることもなく、たまに無理矢理大剣を振り回してくることぐらいしかやってこなかった。
「こうするように仕掛けたとはいえ、まさかここまで弱体化するとは。少し残念ね」
もし、機会があるのならうちの子達の力を借りず、今度は全力の彼と一対一で戦ってみたいものだわ。
「だけど、皆がいる今はどんな卑怯な手を使ってでも、この子達の安全を守ってみせる」
「クリス様だけには背負わせませんよ。私も皆のことを守りますよ」
「「私達も、兄妹達を害する敵は全力で排除します」」
「ふふふ。そうね、頼りにしてるわ」
言われた四人は笑ったり、恥ずかしそうにしたり、妹分である双子ちゃんからの言葉に複雑そうな顔をしたりと様々だ。だが皆どこか嬉しそうだ。
こんな雑談が出来るほどにガーディアンは弱体化し攻撃も大剣に振り回されている。
もう少しで倒せそうだから念のため四人には隙がない限り近づかないように言っているが、私とアシュリーだけでも余裕を持って戦えている。
そしてその時がやって来た。
アシュリーが大剣をわざと滑らせ受け流し、大きく出来たその隙に懐へ入り、ガーディアンの胸に短剣を根元まで刺し込んだ。
「これで、さよならよっ!」
「ガ、ガガァ、ガァァァ…………」
目測通りそれが決め手となり、ガーディアンのHPは消し飛んだ。
ゴトンと鈍い音を立てて大剣を手放し、ガーディアンがゆっくりと膝を突いて動きを止めると、光になって消えていった。




