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再戦に向けて

 ログインしたときのような浮遊感が過ぎた後、私は中央街の広場に立っていた。

 あぁ、リスポーンをここに設定したんだった、と考えながら、急いで屋敷へ戻ろうとした私の隣で叫ぶような声が上がった。


「クリス様! あぁ、良かった」

「あら、アシュリーはこっちに来たのね」

「はい、気がついたらクリス様の隣にいました。それで、どうなったのですか?」

「やられたわ」

「えっ? それじゃあエイダ達は……」

「それを今から確認しに行くわよ。屋敷へ急ぐわよ」

「はい」


 すぐに屋敷へ転移し、自室まで駆け上がり扉を開けると、


『クリス様!!』

「あぁ……良かった。本当に、皆、無事で良かった」

「「クリス様、アシュリー。無事で良かったよぉ」」

「俺達は戦っていたはずなんだが、勝ったのか?」

「うわーん。心配しましたよクリス様ー、アシュリー!」

「何が起こったんだ? 気付いたらこの部屋に俺達がいたんだけど」

「たぶん。クリス様が僕達を助けてくれたんだと思う」


 皆が私とアシュリーを囲い、思い思いに口を開き、安堵の声と疑問をぶつけてきた。


 皆を見て落ち着いた私は、ベルセルとエイダを宥めた後に皆の疑問に答えた。


「アシュリーが庇ってくれた時、今の私では勝てないと悟ったわ。けど、あのまま私がやられたら契約してない四人までやられてしまうでしょ。その時咄嗟の思いつきで皆を屋敷へ配置できないか試してみたの。そしたらあの地下も屋敷の中と判定されていたからか、こうして避難させることが出来たって訳よ。一か八かだったけど上手くいって良かったわ。まぁ私はあの後叩き砕かれたのだけれど」

「私がいない間にまたそんな無茶なことを」

「それを言うならアシュリーが先に無茶したでしょうが。あの盾で受けられるわけないでしょ」

「それは! そうですけど……。でも!」


 身を挺して守ってくれたのは嬉しいが、またアシュリーの心配性が始まってしまったかとゲンナリする前にエイダがフォローしてくれた。


「まぁまぁ。こうして皆無事だったんだからそれでいいじゃないですか。アシュリー先輩のおかげで私達が助かる時間が確保できたって事で。クリス様も、ね?」

「はぁ、わかりました。今回はエイダの言葉に屈しておきます」

「エイダの言うことも確かね。アシュリーありがとう」

「もう。クリス様も自身を削るような事はお控えください」

「ふふふ。お互いに、ね」


 本当に、アシュリーには感謝している。

 もしあの時、助けてくれなかったら、この子達はここにはいなかった。

 そんなことになっていたら、立ち直るのにどれだけ時間が掛かるだろうか。MESOを止めることはないと思うが、数日はまともにプレイ出来ない精神状態になっていたと思う。


「本当にありがとう、アシュリー」

「はい」


 さて、こうして皆無事だったのは本当に良かった。


 ガーディアン戦では反省点が色々あった。一番は大剣に変わったときに私が呆けてしまったことだ。あれがなければ、アシュリーがやられることもなかったかもしれないし、もしかしたら勝てていたかもしれない。だがそれでも誰かしらの犠牲は出ていたと思う。

 他にも準備不足や人数差による驕りもあったと思う。


 それでも私の考えが間違っていなければ今度こそは勝てると思う。


「次にあのガーディアンと戦うときの作戦を伝えるわ」

『はい』

「先ずは……」


 皆に私の考えを伝え、問題がありそうなところを修正し、ある程度形になったところで、装備の耐久値を直せる物は直し、減ってきた糸を回収するために森で狩りに出かけた。


 レベル上げも兼ねて皆で森を進んでいる。

 目的はボスの大蜘蛛だ。あの蜘蛛の糸が私の知っている中で一番耐久値が高いのでいくつか確保することにした。


 未契約の四人のことを考えると若干不安だが、あの蜘蛛の攻撃なら拘束さえされなければ、一撃死することはないと考えている。


 まぁ、デスペナがあるのですぐには行かないので、それまでは雑魚を倒して時間を潰しておく。


 そして、やって来たるはボスフィールド。

 すでに撃破済みなのでこのままでは出てこない。再度戦うには以前にはなかった不自然な石像に触れると再戦出来るようだ。

 石像に触れると【フィールドボス『ポイズンジャイアントエイトレッグ』と戦いますか?】とウィンドウが現れたので、皆を見て問題ないのを確認してからはいと答えた。


 すると、前回と同じ中央に大樹があるボスフィールドに転移して、大樹から大蜘蛛が現れた。


「皆、糸だけは気をつけて。さぁ狩りを始めるわよ!」

『はい!』


《種族レベルが上がりました。任意のステータスに2ポイント追加してください》

《職業レベルが上がりました。スキルポイントが2ポイント追加されました》

《スキル【操糸術】のレベルが15になりました。新たな技【マスク】を覚えました》

《従魔『アシュリー』の種族レベルが上がりました》

《従魔『ベル』の種族レベルが上がりました》

……


 あれから大蜘蛛を五匹倒した。

 何度か皆が糸に絡まりそうになったがその度にアシュリーがフォローに入ってくれたので、実際の被害は少なくてすんだ。


 驚いたのは【火魔法】では大蜘蛛の糸が燃えなかった。アシュリーの盾にくっ付いた糸をグレンに燃やしてもらおうとしたのだが、なんと糸は残ったままで、盾の耐久値だけが減った。


 戦闘が終われば消えるので後々の問題はないが、戦闘中にくっ付いた糸の対処法は未だにわからない。

 ただ、【風魔法】を当てると逸らすことは出来たのでグレンにはそれを頑張ってもらった。


 何より前回と違い人数が前衛二人から遠距離も出来る八人になったので、そこまで苦労することもなく順調に倒すことが出来た。


 その成果もあり、欲しかった糸『大毒蜘蛛の糸』が五つ手に入っただけでなく、皆のレベルアップにもなり、私とアシュリーが一つ、他が二つ上がった。


 それでアシュリーのレベルが15になり新しく【連携】というスキルを覚えた。その効果は他の者と同じ相手に攻撃するとダメージが僅かに上がるという物だ。まだ試してないからどのくらい効果があるかはわからないが、多分微々たるものだろう。


 他にも【操糸術】が15になりマスクという技を覚えた。使ってみたが、高速で糸が飛び出し相手の顔に巻き付いていた。用途としては目隠しが主になるだろう。


 そして、ある種最大の収穫は撃破報酬であるはずの『蜘蛛大樹のベスト』が手に入ったことだ。

 ドロップ率がどのくらいかわからないが、もしかしたら弓もグローブも手に入るかもしれない。

 ベルセルのために今度周回するのもいいかもしれない。とりあえず二人にベストを渡しておいた。


 この大蜘蛛との戦闘で久しぶりに初心者の短剣を取り出し、【二刀流】の使い心地なども試してみたが、【体幹】や【足捌き】の効果もあってか思っているよりは体が動き、多少は様になっていたと思う。

 だけどまだ私の処理能力と体の動きが合っていないから、前に他のゲームでやったような滑らかな動かし方までは出来なかった。

 糸も併用するとなるとより複雑な動きが要求されるので、今はまだ別々に扱うことしか出来ていない。私が思い描く理想像はまだまだ先にあるのを思い知らされた。


 とにかく欲しいものは手に入ったしレベルも上がったので、時間ももうお昼だからそろそろログアウトしたい。


「皆お疲れ様。とりあえずこれだけあれば最後まで持つと思うわ」

「クリス様、この後はすぐ挑むのですか?」

「そのつもりよ。だけど先ずは一度ログアウトするために屋敷へ戻ろうかと思うわ」

「畏まりました」


 皆もそれでいいと頷いているのでここらで切り上げて屋敷へ帰ることにした。

 それから適度に魔物の糸を回収しつつ屋敷へ戻り、再戦に向けて準備をしてからログアウトした。


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― 新着の感想 ―
[一言] リベンジ戦頑張ってくださいね。
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