六人の初進化
さて、皆喜んでいるところ悪いが、この屋敷に戻ってきた理由を忘れてはいないだろうか。
私が先にやりたかったことは無事終わったので、手を叩き皆の注目を集めると本命に移ることにした。
「はいはい、皆の新しい顔も名前も決まって私も嬉しいけど、いよいよ本命、進化と行きましょうか」
『あっ、そうだった』
「まったくもう。それじゃあどんな進化があるか順番に見ていくから、自分がどれに進化したいか選んでちょうだい。まずはデクスから始めるわ」
デクスのステータスを開き、進化を選ぶとアシュリーの時の『ハイドール』、『マリオネット』、『ハウスドール』に加え、『パワードール』と『マリオネットバトラー』と言うのが増えていた。
『パワードール』
筋力が高いドールが進化した姿。生命力と筋力が成長し体も他のドールより大きくなった。高威力の攻撃を得意とする。
『マリオネットバトラー』
糸で操られてなお主人に忠誠を誓っているドールが進化した特殊な姿。能力は平均的になり防御面も高くなった。主人といることで恩恵があるスキルを有する。
……。
パワードールは筋力特化でマリオネットバトラーはアシュリーのマリオネットメイドの男性版だろう。説明文がマリオネットメイドと全く同じなのは手抜きかしら。
デクスに何に進化したいか尋ねると、パワードールかマリオネットバトラーかでかなり悩んだ末、パワードールを選んだ。
「いいのね、それじゃあ進化するわよ」
「はい。お願いします」
光に包まれた後、そこに立っていたのは逞しい体になった私より少し背の高いデクスの姿だった。
「おお。デカくなったな。それに力も増してる」
「調子はどう?」
「すごくいいです。今日で俺は生まれ変わったんだと思います」
「まぁ。大げさね。さて次はエイダおいで」
「はーい!」
エイダの進化候補に新しいものはなかった。ハイドール、マリオネット、ハウスドール、マリオネットメイドの四つだ。
この中でエイダが決めたのは、意外なことにハウスドールだった。
「ハウスドールがどんな種族かわからないけど、本当にこれでいいのね?」
「はい。私達は契約していないから、この屋敷にいることが多くなると思うので、屋敷に関連のありそうな種族の方がいいかなって思いました」
「そう、ありがとうね。じゃあ進化するわ」
「はい!」
エイダはお転婆な子かと思っていたけど、私以上に自分の立場と皆のことを考えられるいい子なんだと考えを改めた。
そうしている内に光が晴れて、進化したエイダが現れた。
姿はアシュリーと同じく背が少し伸びただけで、大きな変化はない。
だけどステータスは成長したのか、エイダが嬉しそうに飛び跳ねている。
「すごいすごい! 私強くなってる! クリス様ありがとうございます!」
「進化できたのはエイダの努力のおかげよ。良かったわね」
「はい!」
「次はフランクの番よ」
「待ってました!」
フランクの進化先もエイダとほぼ同じ、マリオネットメイドがマリオネットバトラーに変わっているだけだ。
それでフランクは、少し悩むとハイドールを選んた。
「進化するわよ」
「どんとこいです!」
進化したフランクは、やはり少し背が大きくなるだけでデクスほどの変化はなかった。
「おお! これが進化か。すげぇな。一回り強くなった気分だ!」
「実際一回り大きくなってるのだけどね。さぁ次はグレンよ」
「はい」
魔法がメインのグレンの進化候補にはマギドールの他にマジックドールというのが加わっていた。
説明を見た感じパワードールの魔法版で勝手なイメージだがマギドールよりも魔法特化な気がする。
当のグレンはじっくり考えた末にマジックドールを選択した。
そして進化したグレンは同じく背が伸び、手を握ったり開いたりした後に、ニヤリと笑みを浮かべた。
「喜んでくれて良かったわ」
「はい、これでさらに魔法の真髄を学べそうです」
「さて、最後はベルとセルよ。おいで」
「「はい」」
特殊な種族の二人は、全て進化も特殊なものかと思ったが、ハウスドールやマリオネットメイドと他の子の進化候補もあった。
その中で見たことないのは『ツインズハイドール』と『ツインズマリオネット』、そして『シンクロマリオネット』と言うのがあった。
ツインズハイドールとツインズマリオネットは、元の説明にカスタムツインズドールのときの説明が増えただけだが、シンクロマリオネットだけは少し説明が違っていた。
『シンクロマリオネット』
糸で操られてなお主人に忠誠を誓っており、スキル【以心伝心】を持つ二体のドールが進化出来る特殊な姿。二体の繋がりがより強くなるスキル、主人といることで恩恵があるスキルを有する。
「ベル、セル。あなた達は何に進化したい?」
「私は、これからもセルと同じがいい」
「私も、進化してもベルと同じがいい」
「……私はこれにしようと思う」
「……私もこれがいいと思う」
「「クリス様決まりました」」
「それでいいのね。なら進化させるわよ」
「「はい」」
進化先を決定すると二人揃って光に包まれた。
光が晴れた先には、やはり少し成長し進化前のデクス達ほどの身長になり、互いに手を取ったベルとセルの姿があった。
「調子はどうかしら?」
「セルを感じる」
「ベルを感じる」
「「進化が出来て嬉しいです」」
「ふふ。良かったわね」
二人が進化したのは、シンクロマリオネットだ。普段から異口同音で話す二人にはぴったりな進化先だと私は思っていた。
さてさて、これで全員の進化が終わった。
スキルを選べる子には希望するスキルを決めてもらい、それも終わったところで改めて進化した全員のステータスを見てみた。
――――――――――――――――――――
名前:ベル
種族:シンクロマリオネット Lv10
生命力 10
筋力 16
知力 14
精神力 10
器用 27
俊敏 17
スキル
弓術Lv10 木工Lv1
状態異常耐性Lv6 火属性弱点Lv7
回避Lv5 共存Lvmax 忠誠Lvmax
名前:セル
種族:シンクロマリオネット Lv10
生命力 10
筋力 16
知力 14
精神力 10
器用 27
俊敏 17
スキル
弓術Lv10 錬金Lv1
状態異常耐性Lv6 火属性弱点Lv7
回避Lv5 共存Lvmax 忠誠Lvmax
名前:デクス
種族:パワードール Lv10
生命力 22
筋力 25
知力 10
精神力 10
器用 16
俊敏 13
スキル
斧術Lv10 伐採Lv1
状態異常耐性Lv6 火属性弱点Lv7
筋力強化Lv1
名前:エイダ
種族:ハウスドール Lv10
生命力 15
筋力 15
知力 16
精神力 16
器用 20
俊敏 16
スキル
剣術Lv10 盾術Lv5
掃除Lv1
状態異常耐性Lv6 火属性弱点Lv7
名前:フランク
種族:ハイドール Lv10
生命力 15
筋力 22
知力 12
精神力 12
器用 22
俊敏 15
スキル
槍術Lv10 気配察知Lv6
状態異常耐性Lv6 火属性弱点Lv7
跳躍Lv1
名前:グレン
種族:マジックドール Lv10
生命力 8
筋力 11
知力 27
精神力 20
器用 18
俊敏 12
スキル
火魔法Lv10 水魔法Lv5
状態異常耐性Lv6 火属性弱点Lv7
知力強化Lv1
――――――――――――――――――――
六人のステータスはこのようになった。
私が一番に思うのはステータスの高さだ。召喚するときに強化した素材を用いて召喚しているからその分ステータスが高く進化した今では、私やアシュリーに追いつきそうなほどだ。
だが同時に思ったのは、それなら後からでも何かをすればステータスがあげられるのではないかという漠然とした考えだ。まぁ、それが具体的に何かは全くわからないのでただの思いつきだが。
それよりもスキルだ。
ベルとセルの【以心伝心】が【共存】に変わり、効果も本人達曰く繋がりがより強くなったとのこと。つまり私ではよくわからない。
デクスの【筋力強化】とグレンの【知力強化】は、そのままステータスが強化されるスキルだ。
フランクが覚えた【跳躍】は、今のところ今までより少しだけ高くジャンプ出来るようになるスキルだった。
そして私がとても驚いたのはエイダの【掃除】というスキルだ。
そもそも私はこんなスキル見たことがなかったし、取った本人に聞いても普通に掃除に役立ちそうなスキルだから取ったと返ってきた。
まぁ、どんなスキルかは置いといて、本人が屋敷を綺麗にするとやる気を出しているから私はこれ以上何も言うまい。
進化した皆は嬉しそうに自分の変化や気持ちを私とアシュリーに話していたが、今は少し落ち着いてきた。
ふと時間を見ればいつも眠る時間に迫ってきていたので、私はログアウトすることにした。
「ベル、セル、デクス、エイダ、フランク、グレン。進化おめでとう。これからもよろしくね」
『こちらこそ、よろしくお願いします!』
「ふふふ。私はログアウトするけど、いない間に無茶はしないでね」
「大丈夫です。私がしっかり見ていますから」
「よろしくね。アシュリー。それじゃあ、またあし……、いや明後日に」
『いってらっしゃいませ』
七人の声に送られ、私はこの世界からログアウトした。
ストック尽きました。
投稿は続けていきますが次がいつになるかは未定です。
なろう様には面白い作品がたくさんあるので、そちらをお読みして気長にお待ちください。




