新しい子×6
自室へ戻ってきた私は、一度【死霊魔術】を発動し、ドールとソウルしか召喚できないのを確認してから、ドールの召喚に必要な素材を取り出したところで、ふとあることに気がつき悩んでいた。
「うーん。このまま召喚しても同じよね……。素材によって変わったりしないかしら」
「クリス様? 召喚しないんですか?」
「うーん、するけど……。このままの素材で召喚しても、出てくるのは普通のドールよね」
「? そうなんじゃないですか?」
「そうよねぇ」
私が何を企んでいるのかというと、召喚する際の素材を特殊な物にすれば、変わったドールが召喚出来るのではないかと思ったからだ。マリオネットメイドと言う色々と魔改造した後に特殊な進化をしたアシュリーがいるからそう思いついた。
「色々試してみた方が早いか。あと六体も召喚できるのだし」
悩んでいても仕方がないので、とりあえず試してみることにした。最悪壊して造り直せばいいとさえ考えている。
そう決めると、ドールの召喚に使えそうな素材を取り出した。まずはやってみることにした。
素材は全て魔力を込めて作った魔法人形の腕、それに小サイズの闇魔石。だけどこれだと召喚候補が無くなり召喚できなかった。
それでいくつか組み合わせを変えてみたところ、魔法人形の腕と極小サイズの魔石、人形の腕と小サイズの魔石、アシュリーの時と同じ人形の腕と極小サイズの魔石、それと魔法人形の腕と人形の腕を五本ずつと小サイズの魔石のパターンならドールが召喚できるようだ。
試しに丸太や木材を使ってみたが、これでも造れなかった。だがこれらを【木工】で人形の腕や足のパーツに加工すれば使える判定になった。
そこまで調べて、とりあえず召喚可能の組み合わせでやってみることにした。
「低位不死者創造」
アシュリーと違う三パターンで召喚した結果、ステータスが異なる三体を造ることが出来た。
まずは魔法人形の腕と極小サイズの魔石のパターン。
――――――――――――――――――――
名前:
種族:ドール Lv1
生命力 12
筋力 14
知力 10
精神力 8
器用 14
俊敏 10
スキル
〈空白〉 状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1
――――――――――――――――――――
この場合、生命力、筋力、俊敏がアシュリーの時よりも上昇している。上位の素材が体を構成しているからか、特に生命力と筋力の上がり幅が大きい。
次は人形の腕と小サイズの魔石のパターン。
――――――――――――――――――――
名前:
種族:ドール Lv1
生命力 8
筋力 11
知力 15
精神力 10
器用 15
俊敏 9
スキル
〈空白〉 状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1
――――――――――――――――――――
こちらは逆に知力、精神力、器用が上がった。コアである魔石の性能がそのまま知力や精神力として反映されたようだ。
そして最後が五個ずつの腕と小サイズの魔石のパターン。
――――――――――――――――――――
名前:
種族:ドール Lv1
生命力 11
筋力 12
知力 12
精神力 10
器用 15
俊敏 10
スキル
〈空白〉 状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1
――――――――――――――――――――
何となくわかっていたが、このパターンは全てのステータスが上昇している。
意外だったのは、上がった数値だけ見るとこのパターンが最も増えていることだ。他二つはそれぞれ8ポイント分増えているが、これは10ポイント分も増えている。
これらの結果を見ると、一つ目が物理型、二つ目が魔法型、三つ目が万能型と区別できる。
そして万能型は通常召喚の完全上位互換だとわかってしまった。これを知ったアシュリーが落ち込んでしまったのは言うまでもない。
それから試しに闇魔石じゃなくて火魔石で万能型を召喚してみたが、結果は変わらなかった。あわよくば【火属性弱点】が無くならないかと思ってやったが、そんなに簡単な話ではいかないようだ。
とにかくこれで四体が召喚でき、残りが二体となった。
「後二体。ならばこの二つを試してみるしかないわね」
「あっ、それって」
「そう。婦人からのプレゼントよ」
私が取り出したのは、婦人から貰ったであろう二つの人形。
人のように造形された顔に、少女の体。魔樹の木材で出来ているのか、私が込められる魔力はごく僅かだったし、どうやらすでに魔石も填まっているのか素材に魔石を必要としなかった。
魔石のサイズによってはちゃんと召喚できるか不安ではあったが、このまま放って置いても無駄になるので召喚することにした。
「さて、どんな子になるのかしら。低位不死者創造」
一体目を造ったが魔術は成功しているのに何故か動かない。
疑問に思いつつ二体目も続けて行うと、二人同時にパチリと目が開き、二人同時に口を開いた。
「「はじめまして、ご主人様」」
「あら、はじめまして。やっぱり話せるのね」
「「はい、話せます」」
新たに召喚したこの二体は、全く同じ事を同じタイミングで返してくる。
素材の時もそうだったが、見た目はほぼ同じ。ブラウンの髪と目も、鼻筋や口元、口調までも全く同じだ。
唯一異なるのは髪型だけで、どちらもサイドテールだが結び目が右と左で分けている。
素材の時からサイズが変わっていないので、この二人は他のドール達よりも小柄で、声も少し幼さが残っている。
そして、何故か私の初期装備のようなワンピースを二人とも着ていた。……あくまでドールだが少女の顔をしているから裸は不味いとAIが判断したのかもしれない。
アシュリーのように後から顔を作った場合はこんな特典は無かったから、今後召喚するときはもっと工夫してから召喚した方が良いかもしれない。
そんなことより今は彼女達だ。
「あなた達のステータスを確認しても良いかしら?」
「「はい、構いません」」
「なら見させてもらうわね」
パパッとメニューを操作して、この二人のステータスを確認して、驚いた。
そこに映されていたのは、私の予想していなかった内容だったからだ。
――――――――――――――――――――
名前:
種族:カスタムツインズドール Lv1
生命力 8
筋力 11
知力 10
精神力 8
器用 17
俊敏 12
スキル
〈空白〉 〈空白〉
状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1
以心伝心Lvmax
――――――――――――――――――――
ステータスも全く同じだった。
さて、色々と気になるが一つずつ見ていこう。
まず一番気になるのは種族がドールじゃないこと。種族に意識を向けて詳細を見てみると、こう表示された。
『カスタムツインズドール』
同一素材で連続に召喚されたドールがごく稀に変化した姿。二体の間だけ効果があるスキルを有している。本来ステータスはドールと同じはずだが特殊な加工をされた素材で造られたため変化している。
そこに表示された詳細を見るに、この子達はただでさえツインズドールと言う特殊な種族なのにさらに婦人の手によって強化されているようだ。このおかげで器用と俊敏が高くなっている。
次にスキルだが、空白が二つあるのはまだ許容できるとして、気になるのは【以心伝心】というスキルだ。
その効果は、同じスキルを持った特定の相手がいると強くなると言うパッシブスキルだ。だがどのように強くなるかは説明されていない。
「ねぇ、二人とも。【以心伝心】ってどんなスキルかしら?」
「【以心伝心】は」
「お互いのことが」
「自然とわかる」
「スキルです」
「一緒にいると」
「安心できて」
「強くなれる」
「気がします」
「……具体的にどう強くなるかはわかる?」
「「わかりません」」
「そう」
うん。よくわからない。
ただ、二人が一緒にいないと意味がないことだけはわかった。それにしても……、安心して強くなるとはどういうことなのかしら?
兎にも角にも、これで全ての召喚が完了した。
色々試した甲斐あって、見た目は同じだがステータスのバラエティに富んだ仲間達が増えた。
それでは今度はそのステータスに合わせたスキルを決めていかなければならない。本人達が望むスキルがあればそのまま採用するつもりだ。
本当は名前も決めなくてはならないのだけれど、召喚するたびに名前を付けたのでは、愛着がわいて無茶な冒険が出来なくなってしまうと考えたので、名前をつけるのは私が絶対に失いたくないと判断した時だけにすると決めた。本音の半分は毎回決めるのが面倒だからだ。
それはさておきスキルである。
一人一人伝わる雰囲気からどんなスキルが欲しいか確かめて選んでいく。
結果、物理型が【斧術】、魔法型が【火魔法】、万能型がそれぞれ【剣術】と【槍術】を選んだ。
そして双子ちゃん達は、
「「私達は【弓術】がいいです」」
「わかったわ。もう一つは決めたかしら?」
「それなら私が【木工】で」
「私が【錬金】がいいです」
「そう。ならそれにしましょう」
とのことで皆のスキルが決まった。
後で双子ちゃんに何で【木工】と【錬金】にしたのか聞いたら、自分達で矢を作るからと言っていた。なら【鍛冶】の方が良いのではとも言ったが、私と一緒がいいと返ってきた。 意外と可愛いところがある二人をたくさん撫でておいた。
最後に契約だ。
今は二人しか出来ないから慎重に決めたいところだけど、正直私の中で誰と契約したいかはもう決まっている。
なのでしっかりと説明するために私は皆を集めた。
「これから魂契約する子を選ぶわ」
『……』
「先に召喚した子達には悪いけど、私が契約するのはこの二人。カスタムツインズドールの二人にするわ」
「「!?」」
『……』
この選択は話せるが故に他のドールよりも破壊されたくないという私のわがままでもあるが、双子ちゃんの種族の希少さと婦人から貰った元の素材の希少さから考えても失いたくないと考えたからだ。
これに対して、当の本人達は驚いているが、他のドール達は表情がないにもかかわらず皆優しげに双子ちゃんを見つめ、納得したように頷いている。
どうやら私の意見に反対する者はいないようだ。
「決まりね。それじゃあ二人とも、契約を始めるわよ」
「「……私達でいいんでしょうか?」」
「私も、それに皆もあなた達が契約することに賛成しているわ。嫌なら変えるけど」
「「嫌じゃないです!」」
「なら、それでいいのよ。さぁ、こっちへ来なさい」
双子ちゃんが先に召喚した四人を見ると、その四人は安心させるように一様にコクリと頷いた。それを見て決心でもついたのか、二人はしっかりとした足取りで私の前までやってきた。
私はその二人へ同時に魔術を発動した。
「魂契約」
発動すると二人から漏れた光が私の中へと入り込み、より強い繋がりができた気がした。
「無事できたようね」
「「はい。クリス様をより強く感じます」」
「ふふ、そうね。さて契約したからにはあなた達に名前を付けるわ」
「「うれしいです」」
にっこり笑って期待するように私を見ている。これはしっかりした名前を付けてあげないと。
方針は変わらず、頭文字がBとCになるように考える。
「それなら……、あなたがベルで、あなたがセルよ」
「私が、ベル」
「私が、セル」
「えへへ、セル」
「えへへ、ベル」
双子ちゃんの名前はベルとセル。髪の毛の結び目が右側にあるのがベル、左側にあるのがセルと名付けた。
二人は互いに名前を呼び合い喜んでいて、他の子よりも背の低い二人を他のドール達も微笑ましく眺めている。
「「クリス様、ありがとうございます」」
「ふふ、いいのよ。ベル、セル、それに他の子も、これからよろしくね」
「「こちらこそ、よろしくお願いします!」」
『……!』
これで召喚に関する一通りの事が終わった。
一気に人数が増えて私も入れて八人になった。まだまだこの屋敷に見合った数とは言えないけど、これからも少しずつ家族を増やしていこう。
さて、となれば次はレベル上げだ。そのためには皆の分の装備が必要で街へ買いに行かねばならない。
「あなた達はここで待機していて、私とアシュリーで装備を用意してくるから」
「「クリス様、ありがとうございます」」
『……』
「必要な物だから気にしちゃダメよ。そうそう、あなた達って男女ってあるのかしら?」
そう尋ねるとアシュリーの元へベルとセル、そして【剣術】のドールが集まった。残りのドールは三人で纏まっている。
「ふむ。こっちが女性でこっちが男性って事でいいかしら?」
「それで合ってます。クリス様」
「そうなの。それなら防具は男性用が三着に、女性用が一着ね。子供用が無かったらもう二着追加と」
「「むぅ。私達はもう大人です」」
「ふふ、わかったわ。じゃあ女性用も三着ね。それじゃあアシュリー行くわよ」
「畏まりました」
新たな家族となった皆の視線を背中に感じつつ、私は嬉しい気持ちを胸に、再度中央街へと向かった。
自分勝手ではありますが、ステータスは今後切りがいい時のみ載せるように変更しました。
楽しみにしていた方がいましたら申し訳ありません。




