魔女さんのクエスト
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皆様ありがとうございます!
クエストの返事をすると、席へ座るように促され、それから詳細を聞くことになった。
「さて、改めて聞く必要もないけど、お嬢さん、クリスさんは【錬金】と【魔力操作】、これはついでだけど使役系統のスキルも持ってますね」
「……おわかりになるのですか?」
「うふふ、簡単な事よ。まず魔石を作るには【錬金】が必要だし、あの依頼書は【魔力操作】もしくはそれの上位系統のスキルがないと読めないように細工をしてあるのよ。使役スキルはアシュリーさんを見れば一目瞭然ね」
「なるほど。そんなカラクリがあったのね」
「確認も取れたことですし、お手伝いについてなんだけど、クリスさんには私の【錬金】のお手伝いをして欲しいのよ」
話の流れから予想はしてたけど、これは私にとってもとても有難い話だ。
私は【錬金】をよく使ってはいるけど、そのレシピはほとんど持っていない。本来生産系のスキルのレシピは、お店でレシピ本を買ったり、弟子入りして師匠から作り方を教わったりして増やしていく。
このクエストは、弟子入りとは違うみたいだけど、お手伝いと言うからには【錬金】をする場面を見られるかもしれない。それなら私の知らない【錬金】のレシピを覚えられるかもしれないし、あわよくばレシピを教えてくれるかもしれない。
……確かに魔女さんが言っていたように私にも利益になり得る話のようね。
「わかりました。それでお手伝いとは何をすればいいのかしら?」
「そうねぇ。まずはクリスさんがどのくらい出来るかを見たいから、ちょっとこっちで一緒にやりましょうか」
「わかったわ。でも私、ほとんど出来ないわよ」
「大丈夫よ。それにアシュリーさんを見れば、少しはマシなことくらいはわかるわよ」
「えっ?」
「わ、私ですか?」
「うふふ。さぁやりましょう」
呆けている私達を置いて、魔女さんはさっさと部屋の反対側、作業台のある方へ行ってしまった。仕方ないので私達もその後へついて行く。
「魔女さん、それで私は何をすればいいのかしら」
「まあ、魔女さんよりもさっきみたいにお婆様と呼んで欲しいわ」
「……お婆様、何をすれば?」
「うふふふふ。それじゃあとりあえず下級の回復薬でも作ってもらおうかしら。作り方は知ってる?」
今まで一度も作ったことはないが、下級回復薬は【錬金】のレシピに始めからあるので作ることは出来るだろう。材料も薬草と液体だけで出来るので、森で拾った薬草があるので作ることは可能だろう。
「レシピにあるので作れるかと。あっ、道具はお借りしても?」
「ここにある道具なら何使ってもいいよ。でもレシピねぇ、まぁいいわ。試しに一つ作ってみて」
含みのある言い方をされたがどのみちレシピに頼るしか作り方を知らないので、そのままレシピの一覧から下級回復薬を選んで、必要な道具と材料を並べてから開始を押した。
すると何をするかの指示が出てきた。
薬草を細かく切ってから水に入れ煮立たせ、全体が色付いたら漉して、完成だった。
【薬】下級回復薬 レア度1 品質D
回復量:E 製作者:クリスティーナ
どこにでも生えている薬草を用いて作られた回復薬 回復量が低いが安価で手に入る 軽い傷くらいなら十分作用するので広く普及している
何というか、回復薬と言うよりお茶みたいな作り方だった。性能としてはイマイチだが無いよりはマシといった感じか。
まぁ私にはヒールがあるからいざと言うときしか使わないだろう。
「……一応、レシピ通りに作ったらこれが出来ました」
「そうねぇ。ちゃんと下級回復薬にはなっているわねぇ。でもこれじゃあダメね」
「やっぱり、ダメですか」
自分でそう言いながら、今の作り方はこれじゃ無いと思う。【錬金】の要素がどこにもないし、これで作れるならもっといい別の方法が私でも思いつくし、あるように思えてくる。
「今のクリスさんのように初めて作るなら、レシピはとても便利な物よ。でも薄々わかっていると思うけど、レシピは最低限のことで作れるようになっているから、その分効力も最低限なものになってしまうの。だからレシピを元に、より効果が出るようにアレンジしたり技術を見せるのが私達の技量の見せ所なの」
「なるほど。レシピは最低限の完成品を作る物で、最高の物を作るにはオリジナルでやるしか無いと言うことですね」
「そうなの。でもレシピが全てダメと言うことでは無いの。アレンジしてよりよい物が出来たときは、そのときの工程もレシピに自動で記録出来るの。だからわざわざ覚えておかなくても済むし、次作るときはそのレシピ通りに作れば変わらぬ物が作れるのよ」
「そんな機能があったのね」
「うふふ。スキルって不思議よね」
それならこの下級回復薬のレシピをアレンジして作ればもっと性能がいいのものになるかもしれない。【魔力操作】で魔力を込めながら作ってみるのも試してみたい。
「それじゃあお手本に私が下級回復薬を作ってみるわね。あっ、どうせなら同じ薬草でやりましょうか。悪いけど一つ貰えるかしら?」
「ええ、いいですよ」
「ありがとうね。じゃあ始めるわね」
そう言うとお婆様に渡した薬草が瞬く間に干からびた。何をしたか聞こうとしたがその前に次々と作業が進んでしまう。
棚からある粉を取り、干からびた薬草に振りかけると何故かそのまま薬草に吸収され、その薬草をポロポロと崩して水に入れると、不思議なことにどんどんと溶けていき、完全に液体と同化してしまった。
それからお婆様が魔力を込めたとこだけはわかったが、突然液体が四分の一ほどに減り、濃い緑色になった過程は全くわからなかった。
そして、この緑色の液体を容器に移したところで完成よ、とお婆様が終わりを告げ、【鑑定】するように進められた。
【薬】下級回復薬 レア度2 品質S
回復量:B 製作者:マチルダ
どこにでも生えている薬草と妖精の鱗粉を用いて作られた回復薬 下級回復薬では最高峰の回復量を持ち、欠損してなければ取れそうな腕すら回復出来る。
その鑑定結果に、私は呆ける事しかできなかった。
一つだけ知らないアイテムを使ったとはいえ、元となる薬草は私が採取した物だし水も私と同じ物を使っていた。
つまりはほとんどお婆様の技術だけでEからBへの回復量へと昇華させたと言うことだ。
その事実に思わず体が震えた。それ故にアシュリーのこれも下級なの、と言う呟きを私の脳は素通りしていた。
「うふふ。いつも通りに出来てよかったわ」
「すごい、ですね。とても同じアイテムとは思えないわ。私もここまで出来るようになるかしら」
「これくらいならそこまで掛からずに出来ると思うわ。そうねぇ。まずは【錬金】の抽出と付加を覚えるレベル10にはならないと始まらないわね」
レベル10か。今が7だから頑張れば明日にはなれるかもしれない。
でも、それより今はお婆様のお手伝いが優先事項だ。
「わかりました。それで私は何のお手伝いをすればいいのでしょうか」
「そうだったわ。お手伝いの内容は、下級回復薬の量産のお手伝いよ。私が作っていくから、クリスさんは薬草を採ってきたり出来た回復薬を容器に入れるのをやって欲しいの。薬草は庭にあるからそれを摘んできてちょうだい」
「わかりました」
「クリス様、私が薬草を摘んできます」
アシュリーがそう言ってくれたが、すぐさまお婆様から否が入り、逆にアシュリーに何をさせたいかを聞かれた。
「アシュリーさんはダメよ。これはクリスさんへのお手伝いなんだから。でもただ見ているだけじゃ勿体ないから、何かしたいことはない?」
「むっ……私がしたいこと、ですか? うーんここでやれることだと、特には」
「それなら、アシュリーには火属性の弱点の克服をしてほしいわ。あと二つで克服できるけど、早くなくなるに越したことはないわ」
「そういうことならこの子にお願いしましょう。おいで、サラマンダー」
お婆様が空中に手をかざすと、そこが突然燃え上がり小さな人型に変わっていき、炎が晴れるとそこにはトカゲの皮を着ぐるみのように被った一人の少女が姿を現した。
「オババ、なんのよう」
「この従魔の子の助けになってほしいの。【火属性弱点】をなくしたいから、その手助けをして欲しくて呼んだの。お願いできる?」
「わかった。どうすればいい」
「そうねぇ。炎を纏って彼女に撫でられていればいいと思うわ」
「なでてくれるのか! それはたのしみだな!」
キャイキャイと喜びながらお婆様の周りを飛んでいる少女に対し、今日で何度目かになる驚きを隠せずにいた。
「さぁお庭で遊んでらっしゃい。アシュリーさんも克服頑張ってね」
「えっ! あっはい。クリス様、いっています」
「……えっと、頑張ってね」
「さてそれじゃあ、回復薬作りを始めてもいいかしら?」
「ええ、わかりました」
色々と聞きたいことはあるが、お婆様がもう始めようとしているので、今は聞くのを止めて自分のやることに専念することにした。
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《クエスト『魔女のお手伝い』をクリアしました》
それからお昼になるまでの約六時間。お婆様はぶっ続けで回復薬を作り続けた。
そしてそれの手伝いをしていた私は、あまりの慌ただしさに目が回り卒倒する程忙しかった。
薬草を採るために庭と作業場を何度も往復するし、一度にそれはもう信じられない量の回復薬を作るから瓶詰めが追いつかないし、それなのにお婆様は微笑むだけで手を止めないから、休憩もなくひたすら体を動かし続けた。
……私がマリオネットで疲労を感じないからなんとかなったが、これ他の種族だと無理なんじゃないかしら。
ただ、この手伝いのおかげで【採取】と何故か【錬金】のレベルが上がっていた。
「お疲れ様。おかげで早く終わったわ」
「ええ、疲れましたわ」
「うふふ。よく頑張ったわね。あっちも終わったみたいよ」
外を見るお婆様の視線を追って外を見てみると、アシュリーがサラマンダーを高い高いした状態で固まっていた。
何があったのかと思っていると、アシュリーがサラマンダーを抱えたまま、こちらに駆け寄ってきて嬉しそうに声を上げた。
「やりました! やりましたよ、クリス様! 【火属性弱点】がなくなりました!」
「すごいわ、アシュリー! よく頑張ったわね。サラマンダーちゃんもありがとう」
「それだけじゃありません! 弱点がなくなった代わりに、枠が空いて好きなスキルを決められるようになったんです!」
「なでかたびみょーだったー」
興奮したアシュリーは、喜びを隠しきれずに今も嬉しそうに報告している。それに弱点がなくなっただけじゃなく、スキル枠が増えたのは嬉しいおまけだ。
……それにアシュリーの撫で方が上手くないというある意味貴重な情報も手に入った。
「あら、それは得したわね。何か取得したいスキルはあるかしら?」
「私、【危機察知】と言うのが気になります!」
「【危機察知】? そんなのあったかしら?」
「あれ? ありましたよ」
そう言うのでアシュリーのステータスから空白のスキルを選び、スキルの一覧を見てみると、初期から選べるスキルがずらっと並ぶ中、一番下に確かに【危機察知】と言うスキルがあった。
詳細はその名の通り、危機が迫ると何となくわかるようになるパッシブスキルだ。
気配察知との違いがわからないが、アシュリーが選んだのだからそれを尊重しよう。
「わかったわ。ならそれを取得するわよ」
「はい、お願いします!」
それでアシュリーに【危機察知】を取得させて、一段落したところでお婆様に声を掛けられた。
「無事に克服出来たようね。おめでとう」
「ええ、おかげさまで」
「ありがとうございました」
「うふふ。これくらい気にしなくていいのよ。……これで、お手伝いは終わりよ。とても助かったわ。はい、これがクエストと手伝ってくれたお礼よ」
お礼と共に渡されたのは、10マルとお婆様作の回復薬だった。ちゃんと10マルもくれる辺りチャーミングな人だと思う。
ただ、それで終わりではなく、お婆様は続けてある提案をしてきた。
「クリスさん。あなた【錬金】についてもっと学んでみたくない?」
「それは、学んでみたいです。独学でやるにはあまりにも未知なことですから」
「それなら、私の元で学んでみない? ついでに今日みたいにお手伝いしてくれたら助かるわ」
「いいんですか? 私としてはお婆様ならぜひお願いしたいです」
「それなら決まりね。クリスさん、それにアシュリーさんもこれからよろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
「えっと、クリス様をよろしくお願いします」
お婆様の元で【錬金】を学べることが決まり、互いに喜んでいるとピコンとメッセージが現れた。
《称号『魔女の仮弟子』を取得しました》
その内容はまさかの弟子入り宣言だった。まぁお婆様に教えて貰ってお手伝いもするから実質弟子みたいなものかもしれない。
ちなみに称号の効果はなかった。
「それにしてもクリスさんみたいな可愛らしい女の子でよかったわ。私は元々最初にあのクエストを達成できた来冒者の方をお誘いしようとしていたの」
「そうだったのね」
「変な人が来たらどうしようかと思ってたの。あら、クリスさんは人じゃなかったわね。うふふ」
「ふふ、そうね。私はマリオネットですから」
それであんな仕掛けを施してあったのか。
文字を読むには【魔力操作】が、魔石を作るには【錬金】が必要だ。そして多分だがお婆様が使う【錬金】には、【魔力操作】が必要不可欠だ。いわばあのクエスト自体が採用試験みたいな物だったのか。
「そうそう。クリスさんも忙しいでしょうから、来るのは好きなときで構わないわ。だけど日中だけにしてちょうだいね」
「わかりました」
「それじゃあ、今日はこれでおしまいよ。お腹は……クリスさん達は空かないわね。私はお昼にするわ。もし学びたかったらまたいらしてね」
「はい。お婆様、ありがとうございました」
「マチルダ様、ありがとうございました」
「はい。どういたしまして」
それから私は、現実でお昼ご飯を食べるために、適当なベンチに座ってからログアウトした。
名前:クリスティーナ
種族:マリオネット Lv14
職業:マリオネット Lv14
生命力 10
筋力 20
知力 16
精神力 8
器用 22
俊敏 20
スキル 残りSP50
短剣術Lv18 操糸術Lv12 投擲術Lv5
光魔法Lv11 闇魔法Lv11 死霊魔術Lv6→7
木工Lv5 錬金Lv7→9
魔力操作Lv7 糸操りLv6
識別Lv14 鑑定Lv14 解体Lv14
採取Lv6→8 伐採Lv5 採掘Lv3
状態異常耐性Lv11 気配察知Lv4
名前:アシュリー
種族:マリオネットメイド Lv12
生命力 17
筋力 13
知力 13
精神力 17
器用 18
俊敏 14
スキル
短剣術Lv14 盾術Lv4 かばうLv4
状態異常耐性Lv8→10 危機察知Lv1(new)
忠誠Lvmax




