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キャラクターメイキング

 ニューロンギアのホームからMESOを起動して待つこと数分、『しばらくお待ち下さい』と出ていた画面が切り替わり、『NEW GAME』の文字が浮かび上がった。

 即座にそこへ意識を持っていくと、辺り一面が眩い光に包まれ……、


 気がつくと私は、小さな図書館のような場所にいて、目の前には一人の美女がこちらを見て微笑んでいた。


「はじめまして、糸井(いとい) 久々利(くくり)様」

「は、はじめまして」

「私は総合管理AI【世界樹】の一部、ユーフィリアです。気軽にユフィちゃんと呼んでください」

「はぁ、わかりました、ユフィちゃん」

「おお! 悪ふざけに付き合ってくれたのは今のところあなたが初めてです!」

「悪ふざけなんですか……」


 噂通りにMESOのAIはAIらしからぬ事をするなぁ。


 なんでもMESOのAIおよびNPCは、たくさんのスタッフさんから数ヶ月分の行動言動をN端末に記録して、そこからコピーした擬似人格とでも言うものを作り上げ、加速させたゲーム内で何十年と成長させてたらしい。

 その上でゲーム内の役割を与え、生活させているため反応が人間と変わらないくらいしっかりしてるらしい。


 そのため今私と話しているこのユフィちゃんも、臨機応変に応えるだけでなく、冗談まで言えるということなのかな。

 ちなみに私の名前が知られているのは、N端末に私の全ての情報が登録されているからだ。それこそ私の知らない体の中のことまでN端末はわかってくれている。病院に行くほどの病気が見つかると知らせてくれるいい奴である。


「まぁ、それは置いといて、早速この世界での久々利様、つまりはアバターを作りましょうか」

「はい、よろしくお願いします」

「まず始めに、久々利様は、どの種族で始めたいですか?」

「うーん……」


 ユフィちゃんがそう言うと、本棚から一冊の本が飛び出して、目の前でパッと開いた。そしていろんな種族名が書かれたウィンドウが現れた。

 本当に多種多様にある。ばーっとスクロールしただけで百近くある気がする。何にするか決めてなかったから、正直私一人では決められる自信がない。


「あの、説明書は一応見たんですが、こんなに多いとは思わなくて。簡単な説明とアドバイスをもらってもいいですか?」

「畏まりました。では……」


 ユフィちゃんが腕をさっと横に振ると、本が分裂し目の前にあったウィンドウも二つに分かれ、更に中の文字が白と赤の二色に色分けされた。


「説明させていただきます。久々利様から見て左側の本に書かれている種族は、人族(ヒューマン)を始めとした亜人族(サブヒューマン)の一覧です。これらの特徴は種族の他に職業も選べることです。職業についての説明も聞きますか?」

「それは、また必要になったら聞きます」

「畏まりました」


 左側のウィンドウには、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、ケモビトなどなどファンタジーものでよく見る種族からリザードマン、フェアリーなど物によっては敵として現れるようなものまで載っている。ちなみにMESOでは獣人族のことをケモビトというらしい。


「次に右側の本には、アバターに出来る魔物が表示されています。魔物の特徴としては、職業が種族と同じになる代わりに進化というものがあります」

「へー! 進化ですか!」

「はい。職業における恩恵がない代わりに、進化による強化が出来ます」

「なるほど!」


 もう片方の一覧には、犬や猫、鹿や鳥まであり、動物ゾーンを越えた先には、スライムやスパイダー、ゴブリンと言った完全に魔物として扱われる種族が書かれている。

 これらは全部進化が出来るらしい。


 そして、ここまで見て白と赤の色の違いがなんとなくわかった。


「そして白文字と赤文字の違いですが、白文字の種族はこの世界を始めると中央街、所謂始まりの街からのスタートになります。対して赤文字の種族は、各種族にあったマップからのスタートになります。但しそのスタート地点も中央街からそこまで離れていないので、ご安心ください。大まかな区別としてはここまでですが何かご質問はありますか?」

「じゃあ。仮に魔物から始めたとして、その中央街って所には入れるんですか?」

「可能です。これは実際に行ったときにやらされることですが、久々利様のような来訪者が、初めて私たちの世界へ移動するとインベントリの中に来訪者であることを証明するアイテムが配布されます」

「なるほど。それを見せればいいという訳ね」

「その通りです。もし言われても見せなかったら、とても強い門番さんに追い出されるのでお気をつけください」

「あー、わかりました」


 強い門番っていうのは、レベルがあり得ないほど高かったり、絶対に倒せないとかそういう奴だろう。なるべく逆らわないようにしよう。


「それでどの種族にしますか?」

「うーん。とりあえず、亜人族側の白文字の種族はなしで」

「はい」


 そこに載っているのは他のゲームでも選べるような種族だ。せっかくならMESOでしか選べないような種族を選びたい。

 だけど、スライムとか犬とかはちょっと慣れるまでが大変そうだなぁ。


「あの、人型の魔物だけを表示できますか?」

「畏まりました」


 そうして残ったのはゴブリンやオークにスケルトン、バンパイアなどそこそこある。

 それらをじっくり見ていると、ふとある種族が目に留まった。

 それは、


「ドール? それってどんな種族ですか?」

「はい。ドールは、ゴーレム同様無機物系の人型の魔物です。スキルは【状態異常耐性】と【火属性弱点】が初期からついています。ステータスはこのようになっています」


 ユフィちゃんが手のひらをかざすと新たにウィンドウが表示された。そこにはドールの初期ステータスが書かれていた。


――――――――――――――――――――

名前:

種族:ドール Lv1

職業:ドール Lv1


生命力  8

筋力  11

知力  10

精神力  8

器用  14

俊敏   9


スキル 残りSP14

状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1

――――――――――――――――――――


 器用値が高くて他は平均と言ったところか。

 ちなみに各ステータスについてはざっくり説明すると、生命力はHPと物理防御力に、筋力は物理攻撃力に、知力は魔法攻撃力に、精神力はMPと魔法防御力に、器用は攻撃の精度と生産の品質に、俊敏は身体と足の速度にと、それぞれ関係していて数値が上がればそれだけその能力が向上していく。


 さて、初期からあるスキルは、ユフィちゃんが言ったとおりだ。火属性弱点にもLvがあることが気になったから尋ねてみたら、


「それはLvが上がってからのお楽しみです♪」


 とはぐらかされた。


「それとこれはドールに限った話ではないですが、一部の魔物は飲食が不要になり、満腹度の増減がなくなります」

「それってものすごく便利じゃないですか?」

「そうとも限りません。満腹度を気にせず行動することは出来ますが、料理による恩恵を受けなくなります。また食べることに関するスキルも獲得することがほぼ出来なくなります。ただし、どの種族も娯楽として味わうことは出来るのでそこはご安心ください」

「そうなんだ」


 確かに序盤は満腹度を気にしなくてすむけど、後々ステータスを上昇させるバフ効果のついた料理が出たとき、これを受けられないのは大きいかも。


「決まりそうですか?」

「うーん……。決めた! ドールにします!」

「承りました」


 絞った種族を見ても強そうなのはあるけど、ドール以上にピンときたのがなかった。ここは女の勘ってやつに期待しよう。


「では次に、この世界での名前と容姿を決めてください」


 名前はいつも通り『クリスティーナ』にして、容姿はせっかくドールって言うお人形みたいな種族にしたから、金色の髪にウェーブをかけて、瞳の色は青色にしよう。所謂、金髪碧眼だ。


「これでよしっと」

「はい。最後にSP(スキルポイント)を消費してスキルを選ぶことが出来ます。但し、ドールを選んだクリスティーナ様は既に二つスキルが埋まってますので、その分数値が引かれております」

「あっそうか。それも含まれちゃうのか」


 だけどきっと魔物で始めると何かしらのスキルが付いてくると思うから、やっぱりこのままでいいや。

 となると残りSP14の中でスキルを決めなきゃだけど、出てきたスキルの量が半端なく多い。種族の何倍もありそう。こんなの私だけじゃ決められないよ。


「ユフィちゃん。ドールの、私のおすすめのスキルって何ですか?」

「! うふふ、それならまずは攻撃するスキルが必要です。ドールは器用値が高いので、【短剣術】と【弓術】が始めに選べるスキルの中ではおすすめですが、その二つでは【短剣術】がいいでしょう」

「そうなんですか。まぁ私も弓が扱えるとは思いませんが」

「扱いについては補助システムがあるので大丈夫なのですが、魔物であるドールは街の外がスタート地点になるので、矢の補充が出来なくなる場合があるんです」

「なるほどなるほど。そういうことね」


 【弓術】で始めても矢が尽きておしまいではどうしようもない。矢が作れればいいけど、始めはそんなにうまくいかないだろう。弓で殴るわけにも行かないからね。


「それとクリスティーナ様には【木工】と【錬金】もおすすめです」

「あれ? 【弓術】じゃないのに【木工】が必要なの?」

「はい。私としては是非ともこの二つを取って欲しいです!」

「はぁ。そこまで言うなら」

「残りは汎用スキルの【鑑定】【識別】【解体】のいずれか二つがいいと思います」

「二つだけ?」

「今のクリスティーナ様のSPでは全ての取得が出来ませんので、内二つと言うわけです。レベルが上がったら残りの一つを取得するのがよろしいかと思います」

「そうですか、わかりました」


 ユフィちゃんのおすすめの通りにスキルを選択した。三つの内私が選んだのは、【識別】と【解体】にした。

 レベルを上げるためにモンスターと戦わなくちゃいけないから、モンスターの情報を見る【識別】とドロップアイテムに影響がある【解体】を先に取ることにした。

 ちなみにSPの内訳を言うと【短剣術】【木工】【錬金】が3ポイント、【識別】【解体】が2ポイントだ。


 かくして私のアバターが完成した。


「はい。久々利様のアバター『クリスティーナ』を保存しました。以上でキャラクターメイク終了です」

「何から何まで助かりました。ありがとう、ユフィちゃん」

「これが私たちのお仕事ですから! それではクリスティーナ様、私たちの世界をお楽しみくださいませ」

「はい! いってきます!」


 手を振るユフィちゃんに見送られながら、私は隣に現れた扉をくぐった。

 その先にあったのは……、また似たような部屋だった。


 明日以降は20時投稿予定です。


名前:クリスティーナ

種族:ドール Lv1

職業:ドール Lv1


生命力  8

筋力  11

知力  10

精神力  8

器用  14

俊敏   9


スキル 残りSP1


短剣術Lv1

木工Lv1 錬金Lv1

識別Lv1 解体Lv1

状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔物が街に入れる、入れない、両方の記述があります どちらなのでしょうか?
[気になる点] 誤字報告を出しましたが、条件を追記する際の「ただし」が「正し」 と変換されています。正しくは「但し」のはずです。
[気になる点] ステータスでは残りSP13となってますが、初期スキルを選ぶ時は残りSP14になってますがどちらが正しいです?
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