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弱点克服

 水曜日。

 毎週水曜日は部活やサークルがある曜日なので大学の講義は午前中で終わりだ。ちなみに私もサークルに入っているが、ろくに活動のないサークルなので私も名前だけの幽霊部員になっている。たまーに連絡が入るが事後報告の方が多い。


 そんな訳で午前終わりで直帰した私は、さっそくログインした。どうかアシュリーが無事でいますように、と願いながら。


 ログインしてすぐに目に映り込んだのは、アシュリーの驚いた仕草だった。だけど私だとわかるとバッとこちらへやって来て私にギュッと抱きついてきた。

 今度はこちらが驚いたが、それもすぐに愛おしさに変わり、気付けば頭を撫でていた。

 アシュリーは昨日私がログアウトした位置から一歩も動かずに待っていてくれたようだ。本当にいじらしい。


「お待たせアシュリー。ちゃんと待っていてくれてありがとうね」

「……、……!」


 詳しくなんて言っているかはわからないが、また会えて嬉しい、と言う気持ちは伝わった。こちらまで嬉しくなる。


「さてと。お互い無事は確認できたからレベル上げをしましょうか」

「……」

「おっと、その前に確認してなかったスキルから確かめてみなきゃね。アシュリーも手伝ってくれる?」

「……!」


 元気よく頷くアシュリーを微笑ましく思いながら、まずは二階でスキルの確認をしてみた。


 そのスキルは【糸操り】。名前通りなら糸で対象を操るスキルだと思うが、それで何が出来るかはわからない。

 なので確かめてみたのだけれど、かなり特殊なスキルだと言うことがわかった。


 このスキルを使うと糸が一本飛び出して、それが対象に触れると相手を操れると言うスキルだった。そういうと強そうだが、完全に操るには大きな壁を越えなければならなかった。

 一つ、格下の相手でなければそもそも糸が触れた段階で抵抗され弾かれて終わってしまう。

 二つ、何とか抵抗を突破しても、ほとんどが身動きを止めるか阻害する程度しか出来なかった。

 三つ、糸が触れた段階で操っていようが動きを阻害するだけだろうが、じわじわとHPが減っていく。

 四つ、このスキル中は他のスキルを発動できない。

 以上の制限があり、今のところ完全に操れたのがレベル2以下の朽ちたドールだけだった。

 ここまでが敵や同意のない相手に使った場合だ。


 このスキルを味方に使う場合は、全く違う効果があった。

 検証中になんとなくアシュリーに使ってみたら、あっさりと出来てしまった。レベル4のアシュリーにだ。

 それで色々とやってみた。

 まず味方の同意があれば何の抵抗もなく操ることが出来る。それも私の考えを読み取るかのように動いてくれた。さらに私が指示していなくても勝手に判断して動いてくれる優れ物。次に操っている相手に私のステータスが加算されているみたいだ。その分私のステータスは減っていたが、【糸操り】中のアシュリーの動きは一段上くらいの力があった。

 最後に同意の上での【糸操り】ならHPが減ることもなくスキルも使えることがわかった。


 まとめると【糸操り】は、敵に使う場合は格下への妨害で、味方に使う場合は味方の強化と操作を行うサポートといった二面性を持った変わったスキルだった。



 【糸操り】の検証を終わらせた私達は、昨日の考え通り三階でレベル上げをしている。

 いきなりソウルを相手にするのは私が怖かったので、ソウルがよく出る廊下を駆け抜け、フライングドールを相手にしている。

 フライングドール相手なら【操糸術】のバインドで簀巻きにさえすれば、拘束時間中は攻撃し放題なので、とても楽だ。


《従魔『アシュリー』の種族レベルが上がりました》

《従魔『アシュリー』はスキル【かばう】を取得しました》


 楽な戦闘をして数体倒したところでアシュリーのレベルが5になり、新しいスキルを覚えた。ちなみにアシュリーはシステム的には従魔と言うらしい。

 スキルは【かばう】。何となく効果はわかるけど、だからこそアシュリーには余り使って欲しくない。私を庇って壊れでもしたら私が立ち直るのに時間がかかりそうだから。


「アシュリー。この【かばう】ってスキルだけど使わなくてもいいからね」

「……?」

「わからなくてもいいわ。私がアシュリーには使って欲しくないだけだから」

「……」


 わからないなりにも納得してくれた。 

 アシュリーは私と違ってレベルアップ時に生命力と精神力がよく上がるが、無理に攻撃を受ける必要もない。私なら避ければいいのだから。


 もう少しフライングドールを倒してもいいけど、私とアシュリーの弱点克服のため、ソウルを相手しに行こう。

 不安がないと言えば嘘になるが、アシュリーの防御面が私よりも優秀なのと、【糸操り】でアシュリーを操り私がソウルの回避方法を直接教えてあげればいいのではと思いついたためやってみることにした。

 不慮の事故が起きる前に教えておきたいという本音もある。



「そう、そうよ。その調子。そこよ。上手よアシュリー!」

「……!」


 かれこれ何度目かになるソウルとの戦闘は、アシュリーの完璧な立ち回りで体当たりを一度も受けずにすんでいる。

 アシュリーには魔法がないので倒すには魔樹の投げナイフに魔力を込めなければならず手間がかかるので止めは私がしているが、二人になったことでソウルに触れてスキル上げをし、HPが減ったら片方に交代して回復、触れる、減る、交代、回復と、一体のソウルをひたすら使い回すことが出来るようになった。

 自然回復と【光魔法】のヒールでなかなかの時間粘ることが出来た。


 この安定した動きが出来るようになってから、二回目のソウルを倒した時、待ちに待ったあのメッセージが鳴り響いた。


《スキル【火属性弱点】のレベルが10になりました》

《スキル【火属性弱点】を克服しました。スキル【火属性弱点】が消滅します》

《称号『弱点を克服した者』を取得しました》


「やっっったわ!」

「!!」

「やっと弱点を克服したわ! それに称号まで手に入ったの! はぁ、長かったわ」

「……!」


 私の喜びの声にアシュリーはビックリしていたが、私が喜んでいるとわかるとアシュリーも嬉しそうにしている。

 それに弱点がなくなっただけじゃなく称号まで手に入った。内容はこれだった。


称号『弱点を克服した者』

 【○○弱点】系スキルをレベル10まで上げたプレイヤーに贈られる

 効果:SP5追加


 さらにSPが5手に入った。あぁ頑張って良かったわ。

 だけどこれで終わりではない。今度はアシュリーの弱点を克服しなければならない。とは言っても効率を求めたからか既にスキルレベルは5もあるので、この階を周回して種族のレベルも上げながらでいいだろう。ずっとでは飽きてしまうしね。



《種族レベルが上がりました。任意のステータスに2ポイント追加してください》

《職業レベルが上がりました。スキルポイントが2ポイント追加されました》

《スキル【短剣術】のレベルが15になりました。新たな技【急所突き】を覚えました》

《スキル【光魔法】のレベルが10になりました。新たな魔法【ディフェンスアップ】【キュア】を覚えました》

《スキル【闇魔法】のレベルが10になりました。新たな魔法【ダークウェイブ】【ダークウォール】を覚えました》

《従魔『アシュリー』の種族レベルが上がりました》


 あれから夕食やお風呂を済ますための休憩を挟みながら、廊下を周回してレベル上げをずっとしていた。それにしてもレベルの上がりが遅い。ただでさえレベル8辺りからなかなか上がらなかったのに、進化してから必要な経験値が更に増えているような気がする。きっともうこの階層ではレベル差のせいで貰える経験値が低くなっているのだろう。

 それに比べアシュリーは順調に上がり、今はレベル8まで上がっている。


 そして新しい技や魔法も覚えた。

 【短剣術】が上がり、新しく急所突きを覚えた。一度使ってみたが効果はダガースタブの威力を上げた技だ。さらに急所に当てると威力が増していた。ただその分技を出すまでの時間がダガースタブよりやや長くなっている。

 【光魔法】はディフェンスアップとキュアの二つ。ディフェンスアップは対象一人の防御力を上げて、キュアは対象の状態異常の一部を回復できる魔法だ。全てではなく一部なのでキュアが効かない状態異常もあると言うことだ。

 【闇魔法】はダークウェイブとダークウォール。ダークウェイブが前方に闇のオーラを放つ範囲攻撃で、ダークウォールは闇属性の壁を出す防御魔法だ。


 さてと、確認もほどほどに今日はログアウトしましょうか。

 アシュリーに別れを告げログアウトした私は明日は何をするか考えながら眠りについた。


名前:クリスティーナ

種族:マリオネット Lv10→11

職業:マリオネット Lv10→11


生命力 10

筋力  15→17

知力  15

精神力  8

器用  20

俊敏  20


スキル 残りSP1→8


短剣術Lv14→15 操糸術Lv7→9

光魔法Lv8→10 闇魔法Lv8→10 死霊魔術Lv2→4

木工Lv4 錬金Lv3

魔力操作Lv3→4 糸操りLv1→3

識別Lv10→12 鑑定Lv10→12 解体Lv10→12

状態異常耐性Lv9→10



名前:アシュリー

種族:ドール Lv4→8


生命力 10→13

筋力  11

知力  10

精神力 10→13

器用  15

俊敏  10→12


スキル

短剣術Lv4→9 かばうLv1

状態異常耐性Lv1→6 火属性弱点Lv1→6

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