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初進化と死霊魔術

 三階に戻り、ソウル相手にスキル上げしつつ、出てきたフライングドールにナイフ付きの糸で【操糸術】を使ってみたんだけど、正直かなり使える武器になっていた。


 今まではバインドをした後は、フライングドールを手繰り寄せるか近づくかして短剣で止めを刺していたんだけど、これになってからはバインドしてそのままナイフで攻撃すれば倒すことが出来た。

 一発のダメージはたいしたことないが、四本のナイフによるタコ殴りで短剣で刺すときと余り変わらない時間で倒せた。

 それに【魔力操作】した状態で攻撃してみると、若干ダメージが上がったことも確認できた。ただそうすると二本しか動かせないので効率は下がるが。


 そんなことを続けていると、驚きと期待あふれるメッセージが響き渡った。


《種族レベルが上がりました。任意のステータスに2ポイント追加してください》

《職業レベルが上がりました。スキルポイントが2ポイント追加されました》

《種族レベルが規定値になりました。進化が可能です》

《職業レベルが規定値になりました。進化すると自動で転職します》


 そう進化だ! 魔物を選んだプレイヤーの最大の期待感がある瞬間と言っても過言ではないと思う。

 今すぐ見てみたい気持ちを抑え、私はすぐに書斎へと戻った。進化がどんな物かわからないし、もしかしたら弱体化もしてしまうかもしれない。だから安全なとこでやった方がいいと思ったのだ。それにここだと姿見もあるし。


「さてさて、私はドールからどんな魔物に進化するのかしら」


 私はメニューからステータス画面を選び、主張をしている進化の項目を選んだ。

 そこにはドールから枝分かれした三つの進化先が表示されていた。

 どうやらその進化先を注視すると、簡単な説明文が表示され《進化しますか》という選択肢が出てくるようだ。

 そして私の進化候補がこの三つだ。


『ハイドール』

 ドールが進化した姿。能力の偏りはそのままにより強く成長している。その器用値を生かした生産能力は高い。


『マギドール』

 魔法の能力に長けたドールが進化した姿。物理攻撃の能力は下がるがその分魔法能力が上がっている。身体に埋め込まれた魔石から魔力を取り出すことが出来る。


『マリオネット』

 糸を操るまたは操られているドールが進化した特殊な姿。能力の偏りを糸の主が変えることが出来る。操る側は他者を操作することが、操られる側は主の能力を譲り受けることが出来る。


 ……。

 私が見た感じ、ハイドールは正統進化で、マギドールは魔法を覚えているドールもしくは【魔力操作】を覚えているドールが進化できる姿。そしてマリオネットは間違いなく【操糸術】を取得したドールが進化できる姿だ。ただマリオネットは操られているというよくわからない状態でも進化できるようだ。


 そしてこの三つの中から私が選んだのは、マリオネットだ。


《種族『マリオネット』に進化しました。『マリオネット』が選択されたので任意のステータスに10ポイント追加してください》

《職業『マリオネット』に転職しました》

《進化によりスキル【糸操り】を取得しました》

《称号『初めての進化』を取得しました》


 マリオネットを選択すると身体が光に包まれた。

 それで光が収まるのと同時に色々なメッセージが来たんだけど、その前に一言言いたい。

 姿全く変わってないのだけれど。光に包まれたのは何だったのか。


 気を取り直してステータスを見てみた。

 掲示板によると普通進化すると勝手にステータスが割り振られるらしいが、私の場合メッセージ通り10ポイント割り振れるようになっている。割り振られる数値は同じなので、自分で出来る分融通が利く。

 ということで割り振ったステータスがこちら。


――――――――――――――――――――

名前:クリスティーナ

種族:マリオネット Lv10

職業:マリオネット Lv10


生命力 10

筋力  15

知力  15

精神力  8

器用  20

俊敏  20


スキル 残りSP6


短剣術Lv14 操糸術Lv7

光魔法Lv8 闇魔法Lv8

木工Lv4 錬金Lv3

魔力操作Lv3 糸操りLv1

識別Lv10 鑑定Lv10 解体Lv10

状態異常耐性Lv9 火属性弱点Lv9

――――――――――――――――――――


 思い切って器用と俊敏に5ポイントずつ増やした。

 理由としては【操糸術】が操りやすくなることを祈って器用に、敵の攻撃を避けて手数で攻めたいから俊敏にした。

 防御面に関しては不安しかないが、避ければ問題ないのとドール……いや、マリオネットは、攻撃されても痛みが少なく、毒や出血等の状態異常もなりにくく、腕がなくなるなどの部位欠損になっても気にせず動くことが出来るといった元々の耐久性が高いのでいざとなれば腕を犠牲にして戦うといった方法で補おうと考えている。

 そのためにも弱点である火属性を早く克服したい。


 進化して取得した【糸操り】は後で確認するとして、称号について見てみよう。


称号『初めての進化』

 初めて進化した魔物プレイヤーに贈られる

 効果:SP5追加


 わかってはいたが進化記念の称号みたいだ。だけどSPが5も貰えたのは嬉しい。

 これで11ポイント。10ポイントの【死霊魔術】が取れるけど、どうしようかな。


《スキル【死霊魔術】を取得しました。新たな魔術【低位不死者創造(アンデッドクリエイト)】を覚えました》


 好奇心に負けました。

 で、この【死霊魔術】の低位不死者創造なんだけど、どうやらこれは今まで倒したことのあるモンスターの中で、低位の不死者と言う部類のモンスターを素材を消費することで創り出すことが出来るようだ。

 そして創り出した不死者は、パーティーの一人として戦うことができ、レベルアップや進化も出来るみたいだ。ただし、破壊されたら消費した素材の一部は返ってくるが、それで終わりのようだ。どちらかというとパーティーメンバーというよりは、使い捨ての剣や即席の盾として使うみたいだ。


 今のレベルだと一体だけ創れる様なので、試しにやってみると足下に魔法陣が浮かび上がった。どうやらこの魔法陣の中に素材を入れて創る不死者を決めると発動するみたいだ。

 私が選べたのはドールとソウルの二つ。ソウルは素材が足らなかったが、ドールは創れそうなので一体創ってみた。

 人形の腕を十個に適当な魔石を一個、今回はお試しだから自分で作った闇魔石にしてみよう。これらを選択すると魔法陣の上に今選んだ素材が現れた。この状態で魔法を発動するといいみたいだ。


「それじゃあ。低位不死者創造」


 魔法を発動させるとMPを消費して魔法陣から黒いオーラがあふれ出した。それが終わると私の前には一体のドールが立っていた。この屋敷にいる朽ちたドールではなく、進化前の私と同じちゃんとまともなドールだ。ただ顔はのっぺらぼうで私よりも頭一つは背が小さい。気になるのは何も着てなく裸のままだけどいいのかしら。まぁプレイヤーじゃないからいいのか。


「はじめまして、で伝わるかしら?」


 そう言うとコクリと頷いた。言葉は理解しているようだ。それに私との繋がりみたいのがあるのかなんとなくだがこの子の言っていることが私に伝わってくる。

 さて創ったはいいけど、この子は何が出来るのかしら。


「ステータスは見られるようね」


 ステータスを見れば何をさせるかわかると思うので開いてみた。


――――――――――――――――――――

名前:

種族:ドール Lv1


生命力  8

筋力  11

知力  10

精神力  8

器用  14

俊敏   9


スキル

〈空白〉 状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1

――――――――――――――――――――


 ステータスは初期の私と全く同じだけど創造したモンスターには職業はないようだ。

 スキルの覧にある〈空白〉には、ドールが覚えられるスキルの中から好きなスキルを取得させることが出来るようになっている。

 それと名前も自分で決められるみたい。付けてしまうと壊れたときのショックが大きくなりそうだが、第一号のこの子にはちゃんと付けてあげよう。


「名前、そうねぇ。……アシュリー、あなたの名前はアシュリーよ」


 Aから始まる名前でお人形さんみたいな名前でぱっと思いついたのがこれだった。当の本人も喜んでいるようだからこれで決定。


「アシュリー。あなた使いたいスキルってあるかしら?」


 次はスキルを決めないと。アシュリーには攻撃スキルが一つもないからね。……だから朽ちたドール達は殴ってくるしか攻撃方法がなかったのでは?

 何にするか聞いてみると、アシュリーは短剣を指差した後私を見ながら首をかしげた。目も何もないのっぺらぼうなんだけど、妙に愛嬌がある仕草をするわね。


「短剣、【短剣術】がいいのかしら? それだと私と被ってしまうのだけれど……」


 そう言うと肩を落としてしょんぼりしてしまった。顔がないのに感情がわかってしまう……!


「ああ! 別にダメというわけじゃないのよ。でも本当にそれでいいの?」

「……!」


 カクカクと大きく頷くアシュリーに微笑ましさを感じながら、【短剣術】を取得させ魔樹の投げナイフを予備含めて二本渡した。


 アシュリーは受け取ったナイフを手に取り、何度か握り直すと空を斬りつけて動きを確かめていた。

 この妙に人間味のある動きに、MESOのAIの凄さを改めて思い知った。


「それじゃあアシュリー。あなたの強さを確かめさせてちょうだい」


 私の進化からアシュリーの創造までの一連の事が片付いたので、まずはアシュリーのレベル上げをするために、二階の朽ちたドールで実際に戦闘することにした。


~~~~~~~~


 アシュリーと朽ちたドールとの戦闘だが、概ねアシュリーの方が優勢でそれが変わらずに決着が着いた。

 やはり朽ちたドールの足ではアシュリーに追いつく事が出来ないので、こちらが攻撃する時のカウンターに気をつけさえすれば安全に倒しきることが出来た。

 ただ武器の問題とアシュリー特有なのかAIの判定なのかは知らないが、やけに慎重に戦うので倒すまでの時間はかかった。それもレベルが上がれば問題ないだろう。


「よくやったわアシュリー」

「……!」

「これであなたがちゃんと戦えると証明されたわ。だから次からは一緒に戦いましょう。その方があなたも早くレベルが上がるわよ」

「……!!」


 私の提案はちゃんと受けいれられたようだ。

 ならば三階のモンスターの攻撃に耐えられるまで、二階のドール達を殲滅しようかしら。


 それから私達はログアウトするまでひたすら戦闘をくり返した。

 二人になったこともあるがアシュリーの的確なフォローのおかげもあり、サクサクと進み、最終的にはアシュリーのレベルが4まで上がった。

 明日はソウル地帯を駆け抜けて、フライングドールでレベル上げしようかな。


「アシュリー、私はログアウトするわ」

「……?」

「うーん、伝わらないか。えっと一日か二日ここからいなくなるの。でも必ず戻ってくるからここで待っていてくれる?」

「……」


 私の言いたいことが伝わったのか、悲しげな雰囲気を出してはいるがちゃんと頷いてくれた。

 正直、私も不安だ。このまま私がログアウトして、もしアシュリーが消えてしまったらこれがお別れになってしまう。

 他の召喚系の魔術ではログアウトしても問題ないのはわかっているけど、【死霊魔術】については掲示板にも情報がなかった。だから確信は持てない。


 でも、きっと大丈夫だろう。育成要素のあるモンスターが一回のログアウトでいなくなるはずがないというゲーム的な根拠もあるけど、「ちゃんと待ってます」とでも言いたげなアシュリーの確固たる意思が私をそんな気にさせている。


「じゃあアシュリー。またね」

「……!」


 MMOなのに未だに誰とも会えずにいる私は、健気に手を振るこの世界で初めての仲間を見ながらログアウトした。


名前:クリスティーナ

種族:マリオネット Lv10

職業:マリオネット Lv10


生命力 10

筋力  15

知力  15

精神力  8

器用  20

俊敏  20


スキル 残りSP1


短剣術Lv14 操糸術Lv7

光魔法Lv8 闇魔法Lv8 死霊魔術Lv2(new)

木工Lv4 錬金Lv3

魔力操作Lv3 糸操りLv1(new)

識別Lv10 鑑定Lv10 解体Lv10

状態異常耐性Lv9 火属性弱点Lv9



名前:アシュリー

種族:ドール Lv1→4


生命力  8→10

筋力  11

知力  10

精神力  8→10

器用  14→15

俊敏   9→10


スキル

短剣術Lv4

状態異常耐性Lv1 火属性弱点Lv1

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