プロローグ
初めて長編を書きます。よろしくお願いします。
VRものです。MMOほとんどやったことないので、なんちゃってVRMMOになりますが、楽しんで頂けたら幸いです。
ニューロン端末、通称N端末。
脳から発せられる電気信号を読み取ることが出来るBMI技術の小型化が成功し、医療分野だけでなく様々な分野で飛躍的に技術が発展した。
そして、その小型化した基盤状の機械のことをN端末と呼び、首の後ろ、頸椎付近に埋め込んで、専用の機械――一般にはニューロンギアと呼ばれる機械で読み取ることで、脳波で他の機械を操作することを可能にしている。
元々医療の分野で発展したこともあり、手足の不自由な方がN端末によって義肢を思い通りに動かせるようになったり、言語障害で会話が出来なかった方がN端末によってパソコン上に文字を起こして会話できるようになったりと、当初はこの革命とも言える技術が大々的に取り上げられたらしい。
そしてその技術革新から数十年。N端末が一般家庭まで広く浸透し、家庭用ゲーム機と言えばN端末を用いた仮想現実ゲームが一般になった現代で、私は今、ずっと気になっていたゲームの開始を今か今かと待っている。
そのゲームの名は『MultiEndingStories』。通称はこれにオンラインの頭文字をつけて、MESOと言われている。
このゲームには、他のゲームでは完全には出来なかったある事が出来るようになっている。それはプレイヤーが人以外の生き物になって冒険できるという点だ。
このゲームの開発者が言うには、N端末から発した電気信号を他の生き物の動きに変換することが出来るシステムを開発したらしい。
その補助システムのおかげで、人型以外の生き物を自分の操作するアバターにしても歩けと意識すれば歩くし、跳べと意識すれば跳ぶことが出来る。それはスライムのような手も足もないような生き物でも一緒のようだ。
しかし、四足歩行の生き物を例に挙げると、歩きながら腕(前足)を動かそうとすると補助システムがより安定した方を優先するので、慣れるまでは時間がかかると思っておいてほしい、と言っていた。
兎に角そのシステムのおかげで、人以外の生き物、つまりは魔物の体で冒険できるようになった。
そしてこの『MultiEndingStories』というタイトルは、人型の冒険と魔物型の冒険でシナリオやクエストのエンディングが変わると言う意味があるという。と言ってもほとんどは同じらしいが。
「おっとそうこうしている間にもうすぐ始まる時間だわ」
事前ダウンロードしていた中にあった説明書を軽く読んでいると、十分前に鳴るように設定していたアラームが鳴り出した。
説明書には、一部の種族やスキルが載っていたり、このゲームは現実の三倍の速度、つまり現実の一日はゲーム内では三日経っている事になるなど、他にもよくある注意書きが書いてあった。
一度ニューロンギアを外した私は、お手洗いや水分補給など諸々のことを終えると再度ニューロンギアをセットし、目を閉じた。
その瞬間、意識が現実から仮想へと切り替わった。
次話を20時に投稿予定です。