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元おっさんの異世界転移生活  作者: たくさん。
第一章 勇者と魔王
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元おっさん、仲間と共にパープルシャドウ二人と戦う2

「そう簡単にはいきませんよ!来なさい、大盾兵士(シールドソルジャー)!」


 セントの攻撃が届く直前、グレイは新たな異世界モンスターを召喚する。


 ビジュアルは大きな盾を持ったガイコツだが、その大きさは約4メートル。その盾により、セントの槍は防がれる。



 ガキィィィィィィィィィン!という音が響き、グレイが笑みを浮かべる。


「……ふふふっ、甘い!甘いですネェ!!その程度の攻撃では、この大盾兵士(シールドソルジャー)を突破出来ませんヨォ!!」


「まだまだぁぁぁっっ!【連華衝】!【五月雨突き】!!」


 セントの怒涛の連続突きが大盾に放たれるが、大盾はビクともしない。


「ハハハッ、無駄無駄ムダァァァァァァっ!!!」


 ピシッ……


「……ん?」


 何かに罅が入ったような異音が聞こえ、グレイの頭に疑問符が浮かぶ。


 そして次の瞬間。


 バリィィィィィィィィィィィン!!


 ドゴォォォォォォォォォォォン!!


「ぐおぉぉぉぉぉぉぉっ?!」


 大盾が砕け、大盾兵士(シールドソルジャー)と共に、グレイが後方へと吹き飛ばされる。


 グレイは壁に激突する前にどうにか態勢を立て直し、黒い霧となって消えていく配下を眺め、忌々しそうな顔になる。


「……おのれぇ……!なぜ大盾兵士(シールドソルジャー)の盾が破れたのだ……?!」


「言ったはずだ!一点突破の威力を見せてやる、と!!」


 セントがやったことは、単純。ただ、盾の破壊しやすそうな箇所を弱点予測スキルで予測し、そこを集中的に突いていただけだ。あとは、突きの力に耐えきれなくなった盾が破壊され、その衝撃がグレイに及んだまで。


「……じゃあね、おじさん」


 ドスッ!


「なっ……?!まだコストが……」


 いつの間にか背後に回っていたネイの短刀と短剣が、グレイの背中から胸を貫かれていた。夥しい血が流れ、地面に赤い池を作り、膝を付く。明らかに致命傷だ。


 ネイは武器を引き、セントの傍へ戻ってくる。


「……ぐっ……ふふふっ……いいでしょう、私の負けを認めましょう」


 グレイは懐から紫の液体の入った小瓶を取り出す。


「ですが……タダでは終わらせません!」


 小瓶を地面に叩きつけ、中の液体をぶちまけると、そこに数え切れないほどの魔法陣が生まれた。


「儀式は必ず成功させてみせる!それまでの時間稼ぎは、私の命を持ってやり遂げて見せましょう!!」


 グレイの叫びと共に、魔法陣から異世界モンスターが次々と召喚されてくる。同時に、グレイの身体が燃えていった。


「こいつ、自分の命を魔力に変えて、モンスターを召喚しやがった!!」


 その数、最低でも500以上。中には、ゲーム内では中ボスクラスのモンスターまで含まれている。


「数は力なり!圧倒的な力の前に、ひれ伏すがいいでしょう!!ハハハハハハ…………」


 高笑いと共に、グレイの身体が消滅する。


 残されたのは、多数の異世界モンスター達。それらが、セントとネイを敵と認識すると、すぐさま一斉に襲いかかってくる。


 セントとネイは、向かってくる異世界モンスターを迎撃するが、倒した先から新たな異世界モンスターが再び召喚されてくる。


「チィィィィィッ!最後の最後に、面倒な置土産を残しやがってぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」


 【払車斬】でまとめて蹴散らしたいところだが、この技の欠点は自分以外の全てを斬り捨てるところだ。セント一人なら問題ないが、今回はネイまで巻き込んでしまう可能性が高い。


「倒しても倒してもきりがないよ?!これじゃあ、儀式が完成しちゃうかもよ!どうするの、セント?!」


 蟻型の異世界モンスターを棒手裏剣で撃退したところで、ネイが焦ったような声を出す。


「どうする、って言われても……どうにかするしかないだろ!」


 迎撃で冷静な判断力を欠いているセントには、目の前の敵に対処するだけで精一杯だ。

 しかし、ここで助け舟が出た。


――――ふふん、セー君、ここは私の出番じゃない?

(心姉?!)


 投影魔法【幻影構成(ビジョントレース)】により、心音の姿が現れる。


「ココネさん?!」


 突然出現した心音の姿に驚くネイ。


『セー君、困ったらすぐに聞いて、って言ったじゃない?自分で考えるのもいいけど、年上のお姉さんを頼るのは、決して恥ずかしいことじゃないんだから』


 出現早々、襲いかかってくる異世界モンスターを、合成魔法【氷結影走(アイシクル・シフト)】で氷漬けにしつつ、心音は戦闘に加わる。


『モンスター召喚のカラクリは既に解析鑑定済よ。あの紫の液体に込められた魔力が尽きるまで、ずっとモンスターの一定数をキープして召喚するように設定されているようね』


「なるほど……なら、それまで耐えればいい………とはいかないか。おそらく、儀式が完成するまでの時間は簡単に稼いでくれるだろうな……」


 芋虫型の異世界モンスターを貫きながら、攻略を考える。


『そうね。推定5000体は覚悟しなきゃならなそうね』


「5000?!無理過ぎじゃない?!」


 今ネイが倒したので、およそ20体ほど倒したことになるが、あと4980もの数を相手にしなければならない。


「確かに、相手にする現実的な数じゃあないな……」


 セントが新たに3体倒したが、それでもまだ4900以上も倒さなければならない。


『でも、500体を一気に倒すのを10回やれば、5000には届くわ』


「そんな都合のいい方法なんて……いや、待てよ……」


 あるわけない、なんて言おうとしたところで、ふと思い当たるものがあった。

 心音はそのセントが思い浮かべたものを、同意するように頷く。


『そう。あれなら、おそらく出来るはずよ』


「そうか……その手があったか……。さすが心姉だ」


 狼型の異世界モンスターをまとめて5体倒したところで、セントはネイに声をかける。


「ネイ!巻物を使うぞ!!」


「えっ?!あれ使うの?!勿体無くない?!」


「いや、こういう時こそ使うべきだ!そのためにお前に渡したんだぞ!!」


 確かに、巻物はかなりの貴重な素材を使って作っている。しかし、その分効果範囲と威力は十分だ。少なくとも、中ボスクラス以外の雑魚は瞬殺出来るだろう。その中ボスクラスも、何度かダメージを与えれば倒せるはずだ。


「うん!わかった!!」


『使う隙は、私とセー君が作るわ!』


「頼んだぞ、ネイ!」


 セントと心音が、ネイの周囲に群がる異世界モンスターへと向かっていく。


『どきなさい!【暴風玉(ストーム・スフィア)】!!』


「はぁぁぁぁぁっ!【スウィング】!!」


 心音の放った合成魔法【暴風玉(ストーム・スフィア)】は、風魔法【ウインドストーム】と水魔法【バブルボム】、闇魔法【ダークスフィア】の3つの合成魔法だ。バスケットボール並の黒い球体が敵の頭上にいくつも現れ、弾けると同時に嵐のような暴風が解放される。暴風に晒された異世界モンスターは、一部は消滅し、耐えた者も動きを封じられる。

 そこにセントの槍技が炸裂し、数を減らしていく。


 動きが止まったところで、ネイはアイテムボックスから、セントから受け取った巻物を取り出し、敵陣へ投げつける。


「いっくよー!!【雷迅】!!」


 動きが止まったモンスターの群れに幾つもの稲妻が降り注ぎ、少なくない数が黒い霧となって消滅する。


「おぉ……予想よりもずっと強力な威力だったな……」


 新たに召喚された異世界モンスター共を相手取りながら、セントは呟く。


『あと9回よ!』


「ああ!」


「これなら、いける!【火遁】!【水遁】!【土遁】!」


 セントと心音が時間を稼ぎ、ネイはひたすら巻物を投げていくこと、数回。

 残るは、手負いの中ボスクラスの異世界モンスターのみ。


「これでっ!!終わりっ!!」


 巻物を投げ、ついに異世界モンスター共の殲滅に成功する。


「あとはブラウンだけだ!いくぞ!」


 ブラウンもまた、巻物の効果範囲に入っていたため、多少ダメージが入っている。そう踏んで攻撃を仕掛けようとしたところで、無慈悲な一言が発せられた。


「……いや、ここまでだ」


 見ると、ブラウンの描いていた魔法陣が完成し、光を放っている。


「ちっ……間に合わなかったか……!!」


「さあ、出でよ!異世界の戦士よ!!」


 魔法陣の光が一層増し、何かが召喚されてくる。


 光が収まると、そこには一人のプラチナブロンドの少女の姿があった。


「さあ、異世界の戦士よ!奴らを殺せ!!」

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