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元おっさんの異世界転移生活  作者: たくさん。
第一章 勇者と魔王
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元おっさん、仲間と共にパープルシャドウ二人と戦う1

「雑魚は引っ込んでろ!【石化陣(デルタ・ペトラ)】!」


 泥のような霧状のものが次々とモンスター達を覆っていき、呑み込まれた者は為す術なく石になっていく。


 上級土魔法【地尖嘴(クラック)】と、上級光魔法【光界弾(シャイニング)】、上級闇魔法【暗黒領域(ダークエリア)】の三つの合成魔法、【石化陣(デルタ・ペトラ)】は、対象を土と光の霧に包み、ダメージを与えると共に、石化させる効果を持つ。当然最上級魔法に匹敵するほどの高威力魔法である。セントが最近使えるようになった、魔法系の必殺技の一つだ。


「ば……馬鹿な?!あの数が、一瞬で石化しただと?!」


 目の前の光景に、驚きを隠せないグレイ。


「はっ!ほっ!よっ!」


 石化したモンスター達を、ネイが片っ端から棒手裏剣で破壊していく。


「【アローレイン】!!」


 セントはミミックブレイカーを取り出して弓に変化させ、魔力の矢を降らし、ネイの援護をする。

 矢はブラウンとグレイにも降り注ぐが、グレイが召喚した異世界モンスターによって阻まれる。それでも、石化したモンスター達は、あっという間に砕け、石塊へと姿を変えていた。


「……なるほど、どうやら貴方達を侮っていたようですね。ならばっ!」


 グレイが新たに200体ほどの異世界モンスターを召喚する。しかも、今度は動く石像のような、元々石のモンスターばかりだ。


「目には目を、歯には歯を。石には石です!」


 石像部隊が、手に持った武器を使ってセント達に攻撃をしてくる。


「セント、このモンスター、かなり硬いしタフだよ!!」


 ネイが放った棒手裏剣は、的確に石像の身体を破壊していくが、石像部隊は身体の一部が砕けようが吹き飛ばされようが構わず攻撃をしてくる。そんな様子に、ネイが若干焦りのような声を発した。


「ほぅ……確かに、石像には石化が効かないな」


「感心している場合じゃないよ?!どうするの!」


「相手が石像なら、対処は二つ。粉々に砕くのが一つだが、もう一つは……」


 セントの左手に、白と黄色と赤と青の4色の光が集まり、一つになる。


「石像に宿った魂を、在るべき場所へ還す!【暗黒回帰(レボルブ・ダーク)】!」


 放たれた眩い光が部屋全体を照らし、石像部隊が一斉に動きを停止させる。その直後、石像から黒い(もや)が立ち上り、それが消えると、石像部隊は塵へと姿を変えていった。


「な、何ぃ?!」


 驚愕するグレイ。


 【暗黒回帰(レボルブ・ダーク)】は、状態異常から回復する【浄化(クリーン)】、死者の魂をアンデッド化しないように保護する【鎮魂歌(レクイエム)】、死体を灰にする【聖炎(セイントファイア)】、湿気を取り除く【昇華(サブリメーション)】の四つの補助魔法の合成魔法である。補助魔法がベースなので攻撃力は皆無だが、石像系などの魔法生物型モンスターに対しては、一撃必殺の効果がある。しかもその範囲は広く、敵味方関係なく効果を及ぼす。味方が受けると、石化や呪いから回復する効果が発動し、使いどころが限定される尖った性能だ。

 しかしながら、今回は絶大な効果を発揮したのである。


「これ以上、お前らの好きにはさせない!」


 セントは塵と化した石像部隊を一瞥し、そう言い放つ。同時に、ネイがグレイとブラウンに棒手裏剣を投げるが、やはり新たに召喚された異世界モンスター達によって阻まれた。


「またそれっ?!」


 棒手裏剣を手元に戻し、ネイは一旦セントの傍まで後退する。


「……そちらこそ、諦めて貰えるとありがたいのですが」


 グレイは口元を引き締めつつ、そう返してくる。


「……ちっ、面倒な能力だ」


 今は、一刻も早くブラウンの召喚の儀式を止めたいが、グレイが邪魔をしてくる。そのグレイも、自らの能力で瞬時に異世界モンスターを召喚し、肉盾にするため、結局二人に有効な攻撃が出来ていない。


「……どうするの、セント?このままだと、時間だけが過ぎていって、儀式が完成しちゃうよ?」


「接近出来ればこっちのものだと思っていたが……そう簡単じゃないみたいだな」


 攻撃を届かせるためには、やはりあの異世界モンスター召喚能力が障害となる。異世界モンスターごと奴らに攻撃できればいいが、グレイはそれを理解していて、こちらの攻撃を絶妙に防げるようなモンスターを召喚してくるのだ。


「それにしては妙だな……」


 ここまで何度かグレイが異世界モンスターでこちらの攻撃を防ぐ様を見てきたが、それらは全てこちらの攻撃で消滅している。


 なぜ、より頑丈なモンスターを召喚しないのか。


 その理由を推測してみる。


 より頑丈なモンスターを召喚すると、次の召喚までのクールタイムが発生するのではないか?


 もしくは、瞬時に使えるモンスター召喚には限界数が存在し、わざとこちらの攻撃で消滅するように調整しているのではないか?


 ならば、高火力の連続攻撃をして相手の出方を窺うのも、一つの手だろう。


「……ネイ、試したい作戦がある」


「作戦……?」


 セントはネイの耳元で、自分が考えた作戦を伝える。


「……うん、わかった。やってみる」


「……よしっ、行くぞ、ネイ!」


 セントはミミックブレイカーを槍に変化させ、グレイに向かっていく。ネイはその後ろに付き、グレイから姿が見えない位置をキープする。


「何度やっても同じです!」


 グレイはセントの進路に数十体の異世界モンスターを召喚し、壁とする。


「その程度で、俺を止めることは出来ない!!オオオオオォォォォォォッ、【石破ッッッ無尽】!!!」



 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!



 ミミックブレイカーから放たれた渾身の突きが、立ち塞がる異世界モンスター共を次々と弾き飛ばしていく!


「な、何だと!?!?」


 予想を上回る槍の一撃に、グレイは焦ったような顔になる。


「槍の一撃は、時に岩をも砕く!一点突破の威力を、思い知りやがれぇぇぇぇぇっっっ!!!」

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