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元おっさんの異世界転移生活  作者: たくさん。
第一章 勇者と魔王
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元おっさん、ダンジョンを調査する

 ツーベル採掘場跡までの道のりは順調で、予定通りの時間に到着することができた。

 早速セントとネイは、ダンジョン調査へ向かうことにする。


 ツーベル採掘場跡は、鉱山型のダンジョンだ。全三階層で、出現モンスターはGランクのクリアスライムのみ。ただ、臆病な性格なので、遭遇しても勝手に逃げていく。

 セントはそのクリアスライムを、【大気檻(エアボックス)】で捕らえ、撃破していく。


「セント、それ、わざわざ倒す意味ある?」


 気になったネイが、セントに尋ねてくる。


「大アリだな。こいつのレアドロップの油が、巻物の材料になるからな」


「そうなの?」


 その答えに、セントは呆れる。


「……ネイ、お前、俺が渡した素材リストをちゃんと見てないだろ」


「……てへっ」


 舌をチロッと出してとぼけるネイ。


「……ったく。これを使って、ネイも素材集めを手伝ってくれ」


 セントは収納から透明な球体を何個か取り出し、ネイに渡す。


「これは?」


「CSボールと名付けた。クリアスライム専用の素材収集道具だ。これをぶつけて倒せば、素材である僅かな油を吸収して集めることができる」


「へぇ〜……」


 おそらく、クリアスライムの素材はセントくらいしか需要がないだろうから、売りに出すことはまず無いだろう。


 試しに、ネイが見かけたクリアスライムにCSボールを投げる。すると、クリアスライムが弾ける瞬間にCSボールが光り、手元に戻ってくる。

 戻ってきたCSボールの中を見ると、一滴ほどの透明な液体が入っていた。


「この中身が、クリアスライムの油?」


「そうだ。普通に倒していれば、ほぼ気づかないだろうな」


 クリアスライムの油は、油としては燃えにくく、しかもすぐに無くなってしまうため、実用性に欠ける。しかし、バニシュモスの生糸を浸すと、ほんの僅かな衝撃に反応し、すぐに記憶した形状になるという特徴を持つようになるのだ。


「今回はたまたま油が採取できたが、いつも採れるわけじゃない。必要数まで貯めるのに、かなり時間が掛かる」


「そうなんだ……」


「今は無理に探す必要はないが、遭遇したクリアスライムは、確実に倒していこう」


「わかった」


 二人は遭遇するクリアスライムを倒し、ドロップを集めながら探索を進めていく。


「うーん……やっぱり罠とかはないみたいだけど、なんていうんだろ……奥から嫌な感じがチクチクしてくるみたい」


 ネイが獣人特有の鋭い感覚で、ダンジョンの僅かな異変を感知し、そんなことを言ってくる。


「そうか……やはりネイを連れてきて正解だな。俺の魔力感知や気配察知では気づけない異変を感じ取れるなんて」


 さすがはネイだ、と思いつつ、セント達は奥へ向かっていく。


 そして、ついに最奥の空間へ到着する。そこで、二人が見たものは。


「……何にもないね」

「ああ、何もないな」


 部屋の真ん中に、外への脱出魔法陣があるだけだった。


「おかしいなぁ……確かに奥から嫌な感じがしたんだけど」


 首を傾げるネイ。


「俺の魔力感知や気配察知にも特に反応は無いな……いや、ちょっと待て」


 セントの視線の先は、何の変哲もない、ボロボロの巨大な岩。その中に、よく見なければ分からないほどの鉱石らしきものの一部があった。


「こいつは、もしかして……」


 セントが触れようとした瞬間、嫌な予感が走り、思わず手を引く。

 そして、解析鑑定をすると、何らかの影響で妨害される。


「どうかしたの、セント?」


「……やはり、ネイの感覚は正しかったぞ。この岩だが、何かを施されたような跡がある…………なるほど」


 岩の隅々まで鑑定していくと、ようやくその原因が分かった。


「何かわかったの?」


「ああ。これはおそらく、【パープルシャドウ】の一人が仕込んだ罠らしい。不用意にこの岩に触れると、この部屋にいる者は例外無くこの岩に引き寄せられ、岩諸共ドカン、ってなるらしい」


「なに、それ!危険過ぎない?!セント、どうにか出来ないの?」


「……難しいな。この罠はスキルや魔法的なものの干渉でも反応するらしい。いっそ、罠を発動させてしまったほうがいいかもしれんな。……命は保証しかねるが」


「遠距離からの魔法攻撃で岩を破壊するのはどう?」


「無理だな。鑑定の結果、おそらく、ダンジョンそのものまで破壊するほどの爆風が発生する。今出来ることは、この岩に近寄らせないように注意喚起をしたり、壁を作ったりするくらいだな」


「そっか……」


「ま、保険を掛けて俺が壁を作っておくよ」


「うん、任せる」


 セントは周囲に転がっている大小様々な岩を重ね、壁を築いていく。一つ一つ積んでいくのも面倒なので、まとめて収納し、一気に取り出す。保険を仕込んだ後、仕上げに【固定化(セット)】を掛けておいた。


「これでいいだろ」


「さっすがセント!」


 パチパチと手を叩き、セントをたたえるネイ。


「しっかし、【パープルシャドウ】め。マジで面倒な罠を仕掛けていきやがって」


「そいつら、何のためにこのダンジョンに罠を仕込んだのかなぁ?」


「さぁな。罠で犠牲者を出せば、勇者がやってくるとでも思ったのかもしれんな。真意はさすがに俺にもわからん」


「そっかぁ……」


「とりあえず、ここでの用事は済んだし、とっととダンジョンを出てドワーフの集落ノーインに行くか」


「うん、そうだね」


 二人は脱出魔法陣に乗り、ダンジョンの外へ出る。


「んじゃ、転移でドワーフの集落へ飛ぶぞ」


「わかった」


 ネイが自分に触れたのを確認し、セント達は一気にノーインへ到着する。転移してきた場所は、中央部のハマーが使っている家の一室。


「よう!待ってたぜ!」


 二人を待っていたのは、この家の主のハマー。


「タイミングが良すぎないか、ハマー?」


 ついツッコミを入れるセント。


「細けぇことは気にすんな!それより、アバート鉱山の話だろ。リビングに来てくれ。俺は茶を用意する」


 そう言うと、ハマーは部屋をさっさと出ていく。


「相変わらずだな……」


 若干呆れつつ、セントとネイは部屋を出る。


(……それにしても、あの鉱石……)


 セントは、罠が仕掛けられていたあの鉱石が気掛かりだった。

 そして、それに対してもある鉱石の名前が頭に浮かんでいた。

 しかし、それが地元民が利用しているダンジョンにあるはずがない、と思い直し、意識から遠ざけようとする。


(仮にそうなら、奴らが持ち込んだのか……或いは、そこにあることを突き止めて罠を仕込んだか……ま、考えてもしょうがないな……)


 セントは思考を切り替え、アバート鉱山についての情報を整理するのだった。

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