元おっさん、初めての依頼を受ける
翌朝。
セントはルーと共に、冒険者ギルドへ向かっていた。目的は、クエストと呼ばれる仕事の依頼を受けるためだ。早朝を選んで来たため、まだ人はまばらである。
昨日世話になったあの受付嬢の窓口へ向かうと、二人に気づいた彼女は立ち上がって挨拶をしてきた。
「おはようございます、勇者様、セント様。本日はどのようなご用でしょうか」
昨日よりはずっと柔らかい表情で迎えてくれた姿に一瞬戸惑うが、すぐに目的を伝えることにする。
「オープンクエストはありますか?できれば採取か討伐があれば、受けたいのですが」
オープンクエストとは、冒険者ランクに関係なく受けられる依頼である。セントはまだ受注の仕方がわからないので、今回はルーに任せることにした。
「はい、ございます。回復薬の材料となる薬草と、麻痺治し薬の材料となるシビリ草の採取。必要数はそれぞれ5。状態と数により達成報酬が上乗せされる依頼です。受注手続きをいたしますか?」
「はい、お願いします」
「畏まりました。期限はございませんので、必要数が揃い次第、お持ちくださいませ。野草図鑑はお使いになりますか?」
「野草図鑑?」
セントの疑問に、ルーが答える。
「採取クエストの場合、依頼品に関連する図鑑をギルドから借りることができるんだ。慣れてくればなくても問題ないけど、折角だから借りていこうか」
「そうだな……じゃあ、頼むよ」
「承知しました………こちらになります。納品の際にこちらの返却もお願いします」
受付嬢が足元にある本棚から一冊の本を出してくる。
「万が一紛失されたりしますと、報酬が減少しますので、お気をつけください」
「わかった」
野草図鑑を受け取り、ギルドを出る。
「さて……どこから探索したらいいものか……」
「ヌル草原にもあると思うけど……今回は南のレーゼの森に行ってみないかい?出現するモンスターは主にGランクの兎種だから、ヌル草原より安全に探索できるよ」
「どうしてGランクモンスターが多いんだ?」
セントはなにか気がかりでもあるのか、確認のためにルーに聞く。
「レーゼの森は、レード防衛のため強力なモンスターが現れないように、定期的に討伐部隊がモンスターを間引いているんだ。そのうち冒険者ギルドにも、定期クエストとして依頼されると思うよ?」
「なるほど、そんな理由があったのか」
納得したセントを連れて、二人はレーゼの森へ向かっていった。
レードを出発して、徒歩約10分。二人は木々が生い茂るレーゼの森へやって来た。
森という割には、木漏れ日が多く入っていて、森の中は比較的明るかった。
セントはルーに先導してもらい、地図をウインドウで表示しつつ、探索をしていく。
途中に草陰からモンスターが飛び出してきたが、慌てることなく対処していく。
出現モンスターは、毛色が白いホワイトラビット、茶色のブラウンラビット。いずれもランクGモンスターで、そこそこ素早いところを除けば、初心者でも楽々に討伐できる。行動も体当たりしかしてこないし、耐久も一撃与えれば大体倒せるくらい脆弱なので、セントは先に回避して、攻撃後の硬直で動きの止まった相手に、まどろみの棍棒を振り下ろすだけの単調な攻撃でどんどん倒していく。
「セント、だいぶ兎種に慣れてきたみたいだね」
「まぁな。これなら、楽に狩れるな」
「なら、今度は素材を傷つけない戦い方に挑戦してみようか。兎種は毛皮が素材として売れるから、極力頭狙いの一撃で仕留めた方がいいよ?ついでに、解体の練習もしようか」
兎種の素材は、主に毛皮と肉。たまに爪も取れることがあるが、短くて加工も難しく、それほど需要はない。
「まあ、やってみるか」
ちょうどホワイトラビットが現れたので、挑戦する。
作戦としては、相手の体当たりに合わせてまどろみの棍棒を頭に当てる。シンプルだが、なかなかタイミングが合わなくて苦戦した。
「結構技術がいるな…そうだ、攻撃後の硬直以外で動きを止められれば……」
思い付いたのが、投影魔法。昨日は鏡を出したが、それでは抵抗された際に素材を傷つけてしまう。ただ、兎種の動きで気付いたことがあった。奴等は体当たりの際、頭から突っ込んでくるのだ。
(なら、攻撃を逆に利用してやれば……)
閃いたのは、空気の見えない壁。空気であるが故に、鏡のように破片が散らないし、圧縮していけば、それなりの固さを誇るはずだ。
すぐにセントは詠唱を始める。
「……風よ、我が呼び声に答えよ。光よ、その姿を示せ」
詠唱を始めたことに警戒したのか、ホワイトラビットはセントから距離を少し取る。
「……水よ、風を纏い、大気となって結合せよ。火よ、光と風の鎖となれ」
詠唱しながらも、相手の動きを見極めて回避できる用意をしておく。
「風よ、光よ、壁となって顕現せよ!【大気壁】!!」
セントとホワイトラビットの間に、見えない壁が出現する。
壁の存在はセントにしかわからず、相手は変化に気づけない。好機だと勘違いしたのか、助走をつけて体当たりをしてきた。
当然壁にぶち当たり、助走があった分、自分に返ってくる反動も大きい。
すぐさまセントは怯んでいる相手の背後へ転移し、こちらに気づかれないうちに頭を殴り付ける。
ガンッ、という音と共に、ホワイトラビットは絶命する。
それを見ていたルーは、パチパチ、と拍手を送った。
「見事だね!相手の行動を利用して、素材を傷つけないで相手を倒すなんて」
「相手が良かったな。まぁ、今回はたまたま、ってことで。ただ、他の相手に使うには、かなり工夫が必要だろうな」
「確かに。ちなみに、今回使った魔法は?」
「【大気壁】。昨日使った【幻影鏡】をベースにして、構成を変えてみた。一応言っておくが、今回もたまたま閃いて、試しにやってみた、って感じ。上手くいって良かったよ」
「……また、聞いたことのない新しい魔法だね。セントって、もしかして、魔法の才能あるのかもしれないね」
「それは多分、異世界転移者だっていうお陰だろうな。才能があるのとは少し違うかもしれん」
才能のある者とは、それこそシルバのような存在だろう。セントは何度かシルバの魔法は見させてもらっているが、ほとんど無詠唱で様々な魔法を繰り出しているのだから。
「それでも、やっぱり凄いことだよ。魔法って、一つ使えるようになるまで、かなりの時間がかかるんだ。僕もいくつか使える魔法はあるけど、一つ覚えるのに一ヶ月くらいかかったからね」
「そういうものなのか……」
また一つ、この世界の常識を覚えたセント。
「とりあえず、今は解体作業に入ろう。セント、さっきの魔法、僕らの周囲に展開できる?」
「やってみよう」
セントは自分達の四方と上下に、【大気壁】を展開する。
計六回の展開で気付いたが、この魔法は約10分ほどで効果が消えるようで、効果が切れそうになると、淡い光を発し始める。
ルーに解体のやり方を教わりながら、効果が切れた箇所に再び魔法を放つことを何度か繰り返し、ようやく作業を終えることができた。
なお、効果継続中のものは、セントが自分の意思で自由に消すことができる、ということも判明したのだった。
セント・トキワ レベル16
旅人レベル5
所属クラン グラスウィード
ブレイドパーティー所属
体術レベル4 武器操術レベル1(棍棒術レベル4 剣術レベル1 斧術レベル1 短刀剣術レベル2 小手術レベル1 爪術レベル1 槍術レベル1 細剣術レベル1 小剣術レベル1 弓術レベル1 投擲術レベル1) 盾術レベル1 手心レベル2 回避術レベル2 詠唱強化レベル2 思考加速レベル2 空間把握レベル2 解体術レベル1 解析鑑定レベル1
旅魔法レベル6 治癒魔法レベル0 投影魔法レベル3
耐久力 SS
魔力 SS+
筋力 B-
体力 B-
器用さ S+
知力 SS+
精神力 SS+
素早さ B
称号 異世界転移者 世界を学ぶ者 武芸者 術戦士




