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元おっさんの異世界転移生活  作者: たくさん。
第一章 勇者と魔王
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おっさん、異世界に転移させられる

「……ここ、どこだ?」


 気がついたら、男は寝間着姿で広い草原の真ん中にいた。周りは背の低い植物が生い茂っているだけ。

 そのとき、ピコーン、と何かが反応したように、男の目の前に地図が現れる。


「ヌル草原…そういう名前の場所なのか…」


 男は表示された地図を見ながら、独り言を呟く。


 地図は男の疑問に答えたと判断したのか、自然と消える。


「場所はわかったとして、ここ、おそらく日本じゃないよな…」


 日本には、ヌル草原という名前の場所はない。いや、地球ですらないのかもしれない。


「これは俺の夢なのか?だとしても、現実感がありすぎる」


明晰夢、ということも考えられるが、肌を撫でる風、空気の匂いがそれを否定している。


「まさか、異世界…?」


 男――時渡閃斗(ときわたりせんと)は内心喜んだ。なぜなら、異世界転移にずっと憧れを抱いていたのだから。


「どんな世界かわからないが…とりあえずステータスを確認するか」


 閃斗に応えるべく、半透明のウィンドウが現れる。


名前 セント・トキワ レベル1

職業 旅人

スキル 無し

魔法 旅魔法

耐久力 S

魔力 S

筋力 F

体力 E

器用さ A

知力 S

精神力 S

素早さ E

称号 異世界転移者


「名前が時渡じゃなくて、トキワか。略してんじゃねーよ、って突っ込みは置いといて。確かに異世界っぽいな。だが、なんだ…この凸凹なステータスは…。耐久をいかして前衛になっても、体力がイマイチだし、かといって、後衛になっても、旅魔法じゃ何もできないぞ…」


 旅魔法の詳細を開くと、


旅魔法:旅をするのに役立つ。その気になれば、世界のあらゆる場所へ移動が可能。ただし、自分が行ったことのある場所に限られる。


「その気になれば、っていってもなぁ…そもそも、この世界の行ったことのある場所って、ここしかねぇし…」


 閃斗はうんうん唸り、頭を抱えた。そこで、ふっと閃いた。


「そうか、弓を使えばいいじゃん。あ、でも筋力がないとそもそも弦を引く力が弱くなるか…じゃあ、ダメじゃん」


自分が使えそうな武器を考えていると、なにかが近づいてくる物音が聞こえてきた。


「むっ…敵か?」


 閃斗改め、セントは視界に入ってきたウィンドウを確認する。


「はぐれゴブリン…?」


 体長およそ80センチ。緑の肌で、頭に小さな角を生やした二足歩行の生物がこちらに向かってきていた。手には武器らしい棍棒を持っている。

 対するこちらは、生身。体格差があるとはいえ、やや不利だ。


「…まぁ、やってみるか」


はぐれゴブリンは、セントの前で止まり、隙を窺うようにこちらを見ている。

セントは何かを待っているように、身構えたまま動かない。


 2分ほどにらみ合いが続いたあたりで、はぐれゴブリンがしびれを切らしたのか、棍棒を振りかぶってきた。


「…甘いな」


セントは相手の左側へ体を移動し、右手で相手の手首を掴む。

そのまま自分の左側に回し持ってきて、左手で棍棒を掴み、右肘を相手の喉元につける。

さらに、遠心力でバランスを崩している相手を、力のベクトルを上に向かわせることで手首を外側に捻り、武器を奪いつつ投げ飛ばした。

合気道の技のひとつ、小手返しだ。


 地面に叩きつけられたはぐれゴブリンは、ギャッ、と悲鳴を上げる。ダメージがあるのか、なかなか起き上がれないようだ。


「悪く思うなよ?」


セントは棍棒ではぐれゴブリンの頭を何度も思いっきり殴ると、やがて動かなくなった。


「ハァ…ハァ…やった、のか…?」


肩で荒く息をするセントの全身が、はぐれゴブリンの返り血で赤く染まっている。襲われたとはいえ、やはり生物を殺すのは、あまり気持ちのいいものではない。


ステータスを確認すると、レベルが1上がって、2になっていた。さらに、スキルに体術が加わっている。ただ、能力の表示は変わってなかった。


「…もしかして、スキルって結構楽に覚えられるのか?」


淡い期待を持つが、ここで気づいたことがあった。


体術レベル0


「体術レベル0?つまり、スキルにもレベルが存在するってことか。じゃあ、魔法は…?」


確認のため再度ステータスを見ると、やはり、旅魔法の横にレベルが表示されていた。ただ、そのレベルが1になっている。

 これまでの変化をまとめると、この世界について少しわかったことがあった。


・まず、スキルや魔法は覚えるのは簡単かもしれないが、使っていかなければレベルは上がらない。


・敵を倒せば、おそらく経験値が入り、レベルが上がる。


・この世界で何かを経験していくと、それに伴い、ステータスの表記が変化していく。


 もしかしたら、これからもっと知らなかったシステムが開示されていくかもしれない。


「とりあえず…腹減ったな。まずは、人のいるところへ移動しないと」


 地図を呼び出し、近くにあるらしい街へ向かう。


 だが、予想以上に時間がかかり、結局日が暮れても街に辿り着けなかった。


「くそっ、あとどのくらいあるんだよ…」


そうぼやくと、再びピコーン、という音が鳴り、目的地までの距離が表示された。


「あと70キロだと?!おいおい。マジかよ……」


おそらく、夜通し歩いてやっと早朝に到着できる距離かもしれない。ただ、ここまで来るのに、それなりの敵に遭遇していた。その分、疲労がたまっている。


「でも…進むしかないよな」


 戦闘でレベルはそこそこ上がり、スキルも増えた。ただ、空腹と脱水で、そろそろ限界に近い。


 一歩一歩、確実に進んでいく。


 しかし、徐々に意識が遠退いていく。


 もう、ダメかと思った時。


 遠くに、小さな明かりが見えた。


「…どうにか…あそこ…まで……」


そこで、セントは意識を失った。











  

     














セント・トキワ レベル8

旅人レベル2

体術レベル1 棍棒術レベル2

旅魔法レベル3

耐久力 S+

魔力 S+

筋力 D-

体力 D-

器用さ A+

知力 S

精神力 S

素早さ E+

称号 異世界転移者 世界を学ぶ者

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― 新着の感想 ―
[一言] 「かといって、後衛になっても、旅魔法じゃ何もできないぞ…」 旅魔法の詳細を開くと、 旅魔法の詳細を確かめる前に、どうして「後衛になっても、旅魔法じゃ何もできないぞ…」と考えることができたの…
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