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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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1-9 少女、好きな人“達”との再会

※遅くなってしまい、申し訳ありません。

よろしくお願いいたします。

 私の姿を見るや否や「おかえり、冬霞」と、笑顔で出迎えてくれた。


 私は「ただいま、お祖父ちゃん」と、言うと…抱き締めながら「おかえり、おかえり」と、頭を撫でながら家に入った。


 既に私の部屋が、用意してあるらしく…祖父に案内してもらった。


 てっきり、泊まりの時に何時ものように母屋の一室である蛍ちゃんといのりちゃんと相部屋かと思ったが着いた…その部屋は、まだ祖母が生きていた時に使っていた離れの部屋だった。


 一見、茶室のような部屋だが…とても広い。

 何でも祖母の実家が、茶道家だったらしく…祖父が、似せて作らせたらしい。


 その部屋に丸い窓と障子があり…その窓から覗く竹林がとても鮮やかな深緑色が、とても綺麗だったので…祖母の許可を貰い上がらせてもらっていた。


 その部屋で、よく友達に送る絵葉書作りとか夏休みの宿題である絵日記や工作等でお世話になっていた。


 嬉しかったが、祖母との思い出のある部屋のため祖父に本当に使っていいのかと聞くと、祖父は「いいんだよ、鞠も望んでいるから」と、言ってくれた。


 祖父の言葉に私は「分かった、使わせてもらうね」と、答えた。

 すると、パタパタと音を立てながら…足音が、近づいてくた。


 何となくだが…足音の主が、分かっていた。


 祖父も分かったらしく「全く…もう少し、落ち着かないものか…」と、少し飽きれながら私と一緒に足音の主を待った。


 そして、部屋に入って早々「冬ちゃん!」と、軽く息切れしていたが元気な声が、響いた。

 その声に私は「蛍ちゃん!」と、答えると蛍ちゃんは、抱きついてきた。


 和気藹々としていると祖父に「長時間の移動で、疲れているだろうからその辺にな」と、言うと「は~い」と、渋々と離れたが直ぐに腕を抱き「お祖父ちゃん、冬ちゃんにアレを見せていい?」と、言うと祖父は「まだ届いていないよ、蛍」と、答えると「ええぇ~っ!もう~…もう少しで、お祭りなのに~!アレしないと始まらないじゃん~!」と、祖父に駄々捏ね始めた。


 駄々捏ねた蛍ちゃんに祖父は「仕方なかろう?どこぞの悪ガキが花嫁衣裳を汚したのだから」と、溜め息を吐きつつ困り果てながら言うと何故か、蛍ちゃんがソワソワし始めた。


 すると――…蛍ちゃんのポケットからバイブ音が、鳴ると「あ、母さんからだ」と、そそくさと部屋を後にした。


 蛍ちゃんの行動に祖父は「全く…知らないと思っているのか、蛍は…」と、言いながら部屋を出る前に私の方を向き直し「ゆっくり休みなさい」と、言われ私は「うん」と、答えると部屋を後にした。


 さっき、蛍ちゃんが言っていたのは、祭り前の準備であり合図であり伝統の一つで『土地神様との仮祝言』の花嫁衣装の事だろう。


 花嫁衣裳といったら“白”が、中心だったらしいが…今の世の中は、色の種類やデザインが豊富で凄い。

 友達のイトコさんが、結婚するらしく…資料を見せてもらったのだが、本当に綺麗で衝撃を受けたのを今でも憶えている。


 その土地神様の花嫁衣裳は、白無垢だが『白』ではなく『紅』で作られている。


 紅花染めで作られた特注品で、当時の紅花といったら高価な代物だと草木染の特集テレビでやっていたのを見ていたので憶えていた。


 お祭りと花嫁衣裳を見るのを楽しみにしつつ、持ってきた荷物を整理した。

 とりあえず、困らないようにパジャマと2~3日分の肌着等の衣類、友達から貰った手紙を分けた。


 ――すると『フワリ…』と、風が吹いてきた。


 私が、来る前に換気していたのか…丸い窓からソヨソヨと風が、入ってきた。

 私は、立ち上がり窓を閉めようとすると竹林から人影が此方を覗いていた私は「あっ」と、慌てて竹林がある所に足を運んだ。


 竹林に着き、息切れしながら辺りを見回していると『フワッ…』と、温もりのある何かに抱き締められた。


 一瞬、驚いたが“誰”かを知っているため「意地悪しないでよ、お兄ちゃん」と、言いながら振り返ると「ごめんごめん、驚かせようと思って…つい、な」と、軽い悪戯っぽく微笑む口元と漆黒な黒髪に白くキメ細かい肌、臙脂色掛かった紅色の両目を持った綺麗な青年が立っていた。


 ――私は“兄”と呼んでいるが、実の兄じゃない。


 村で知り合った人であり…私の『好きな人』である。

 そう思い返していると、また彼に抱き締められた。

 不意打ちだったため私は、思わず暴れそうになるが…ガッチリ身体を固定され硬直した。


 すると、ゆっくりと彼から伝わる体温と優しく桜の馨る。

 そして「まだ言ってなかったね、おかえり」と、愛しそうに私の耳元で囁いた。


 その囁く声に私は、更に硬直する。


 硬くなる私に彼は「どうした?冬霞…我に愛らしい声を聞かせてくれ」と、催促しながら頭を撫でつつ左頬に右手を置いた。


 ほんのりと伝わる手の温もりと紅色の眼が、優しく見つめる。


 彼の声と囁きに私は「ただい、ま…」と、変な掠れた声を出していた。

 自分の声に思わず顔を俯くと彼は「うん、おかえり」と、言いながら懐に押し込めるように抱き締めた。


 彼の行動に「お、お兄ちゃんっ…流石に苦しいよ」と、訴えても「我が満足するまで、ダメ」と、また意地悪に微笑む。

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