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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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7-5 舞台裏の後片付けと追憶の整理(5)

ご無沙汰しております。

よろしくお願いいたします。

 初めは「何処から手を出せば」だったが…数日間の間で“何が”必要なのかが自然と分かっていった。


 ――あっという間に『仮』であるが、集落が出来た。


 そして、その集落を一時拠点にし…新たな集落作りを繰り返した。

 繰り返しを更に繰り返した結果――…町が出来ていた。


 初めに作った建物の一部を生活用品の売る店になっていたり、薬局になっていったり…念願の病院も作られていた。


 週に一度のペースで、新たにお店が増えていった。


 しかし、何時しか働いて寝るだけの生活に満足が出来ない者達が、次第に増えていってしまい…どうしても“安らぎ”を求めて考え出されたのが『キャバレー』といった酒場であり娯楽を作った。


 ――屋台も、その一つ。

 ソバと、暖簾に書かれているが…小麦粉を使った麺料理、いわゆる“ラーメン”店が急増しだした。


 戦後当時、お酒や小麦粉、牛肉等を含む物産が、規制を敷かれていた。


 しかし、多くの者が「食べたい」という三大欲求に駆られ…中には、現職の軍人や警察官の人までが手伝い…横流しを秘密裏に取引を行っていた。


 当時の“いのり(姉)”も一時は、キャバレーのウエイトレスとして働いていたが…当時、亡くなった家族と一緒に参拝した寺の尼様と再会し、もう18歳となっていたが…養子になった。


 一緒に暮らし、良くしてくれた仲間に別れを告げ、尼として猛勉強を果たした――…そして、養母である尼様から『紅染村』の尼寺の尼として任命された。


 ――任命された村での暮らしにも慣れた頃…養母から連絡があった。


 尼を引退した養母が、経営をしている戦後孤児が暮らす「孤児院に行かないか」と、いうお手伝いの誘いだった。


 直ぐに“いのり(姉)”は、直ぐに「行きます」と、返事をした――…翌日、養母と一緒に孤児院に着いた。

 孤児院の子供達と挨拶を済ましながら“いのり(姉)”は、ふと…複数の子供達と一緒に花壇に水をあげている一人の女の子を見つけた。


 思わず“いのり(姉)”は、まだ探しているものの『妹』を見ているようで…養母に声を掛けられるまで、泣いていると気づかなかった。


 孤児院での手伝いと言うのは、主に自分の名前が苦無く書けるように“読み書き”から始まり…次に料理の必須な材料の下ごしらえや野菜の皮むき、洗濯や裁縫といった『家事』を教えるというものだ。

 そういった簡単作業が、出来る子供達を一時的に雇っている世の中だった。


 まだまだ遊びたい盛りだというのに『働かないと死ぬ』という、戦後孤児の考えが何時の間にか定着してしまった。


 ――その中でも“いのり(姉)”が、気になっていた女の子が…異常だった。


 女の子の名前は『冬霞』という…まだ幼いながらも大人顔負けの勤勉で、子供が子供を辞めた印象を持ったのだ。


 苗字が、気になったので話しを聞いたところ――…戦時中、奇跡的に病院に駆け込む事が出来た大怪我を負った母親に看護婦が、名前を聞いたところ母親から「冬か…」と、我が子に手を伸ばしながら「大丈夫だから、ね」と、一言を言い終えると…亡くなってしまったという。


 後から亡くなってしまった母親の持っていた少量の荷物から女児の名前の書いてある母子手帳が見つかった。


 残念ながら苗字の部分は、酷く汚れており…解らなかったが、後に判明した。


 冬霞殿の父親は、赤札によって借り出されたっきり…消息不明――…だっだか、その後の調査によって死亡が確認。


 ご親族も戦争によって、消息不明――…となっていたが、その後の調査によって死亡が確認された。


 冬霞殿の出生を知った“いのり(姉)”は、胸が締め付けるように苦しかった…自分と同じ、自分の目の前で親を亡くした――…似た境遇だったからだ。


 冬霞殿が、あまりにも“いのり(姉)”の生き別れてしまった妹に似ており…思わず、重ねてしまっていた。

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