7-2 舞台裏の後片付けと追憶の整理(2)
二つ目の投稿です。
よろしくお願いいたします。
「…貴女達は…」
「「はい」」
「土地神様にっ…直ぐに悲願を申しましたっ」
「土地神様の“目”と“耳”に…そして“手足”として…」
「あたし達にとって、冬ちゃんは『大事な家族』なのですっ…我儘だと、呆れられますことでしょう…でもっ!」
「…巫女姫様…どうか、どうか!わたし達の“印”を取り除かないでください!お願いいたしますっ!!」
「蛍…いのり…――分かっているのですね?その“印”は“呪い”である事を…」
「「はいっ」」
「あたし達の『悲願』です!」
「…そう、ですか…――分かりました、お二人の意思を受け取りました…巫女姫として、継続の令を下します」
「「御意!巫女姫様!」」
――私は、蛍といのりに分からないように唇を軽く噛んだ。
悔しかった。
いくら本人達の『希望』であっても…許される一件ではない。
古城蛍、古城いのり姉妹――…彼女達も“前世持ち”だ。
彼女達は、無月の『最初』の嫁姫・冬霞殿の過去で、お世話になった二人…――戦争孤児院にて、姉代わりをしていた“蛍”と、引き取り先である尼寺の尼として母であり姉代わりをしていた“いのり”の二人は、戦争中に生き別れた実の姉妹だ。
そして、無月殿が妻の“冬霞”殿の生まれ変わらす禁忌術を施す条件として『護衛』として名前を引き換えに同年に生まれ変わったのだ。
蛍は…――孤児院で運よく引き取り先が見つかり、冬霞殿と離れ離れになってしまったが…引取り先にて当時の新聞にて、生き別れた姉と孤児院で離れ離れになった妹分・冬霞殿の載った記事を見た。
姉と冬霞殿の安否が、分かった瞬間の行動は、早かった。
丁度、村で行われる月一の路上露店市の3日間の期間限定の売り子の募集広告を見つけた。
9歳で孤児院から引き取られた“蛍(妹)”は、早9年の歳月を流れ…あっという間に18歳となっていた。
18歳――…本来20歳が、成人なのだが戦後のため急遽『仮成人』として捉えられ育ての親元を放れる社会に出る準備をしていた。
多くの女性は、結婚に行くが“蛍(妹)”は、何度も縁談があったものの…まだ20歳になっていない理由をつけ、結婚に行かなかった。
代わりに孤児院で習得をした計算が得意だったので、そろばんを使った経理を含めた事務や雑用を難無くこなす、キャリアウーマンのような存在だった。
しかし、会社と言うのは『男社会』の巣窟…女と言う理由で、馬鹿にする時代の真っ只中。
勤めていた会社の先輩から同期に後輩…上司にまで「早く結婚をしろ」と、パワハラ&セクハラ染みた圧力を与えられたが“蛍(妹)”は、ある一部の社員が横領している事を突き止め…証拠と共に社長に訴えた。
正確にて精確な証拠と書類を目にした社長は、直ぐに信頼を置く探偵を雇い調査をさせた。
調査の結果は――…“蛍(妹)”が、持ってきた証拠と書類の通りだった。
探偵からの調査結果書類を元に横領をしていた人物達を呼び出し、尋問した末に窓際部署に強制移動させられた。
本来であれば、解雇のはずだが…当時、似た事件が起こっていたのだ。
帰宅時に密告をした者を解雇された者が、襲い掛かったという傷害事件が発生したばかりだったため、あえて解雇にせずに減給・窓際部署に移動という苦肉の策を出すしかなかった。
そして、その事件を引き起こした加害者の性格と酷似していたのが――…会社の資金を横領をしていたのが“女”と言う理由で、女性社員に圧力を掛けていた上司と先輩だったからだ。
しかし、人間の『心理』と言うのは…異常だ。
何が起こるか解らない世の中だったからだ――…何故なら、まだ“ストーカー”という言葉が当たり前ではなかったからだ。
だが“蛍(妹)”は、戦時中に習得した『危機察知』が、働きつつも…既に務めていた会社を辞めて姉と『妹』の冬霞の居る村に向かった――…しかし、待っていたのは…嬉しい再会と、聞き入れたくない嫌な現実だった。




