表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
78/179

7-1 舞台裏の後片付けと追憶の整理(1)

本日から『その後』のお話です。

巫女姫視点なのですが、苦手の方はお引き取りください。


よろしくお願いいたします。

 ――スゥウ…。

 呼吸音のような風の音が、吹き終えると…蜃気楼のように美しく、淡く儚げな幻想の舞台の幕は下ろされ…静かな夜に戻った。


 私は、ホタル池での一件を静かに見守っていた。

 すると『フワ…』と、一匹のゲンジボタルが私の元に来ると…静かに優しく光りだした。


「そう…無事に往きましたか…」


 私の一言を言うと、返事をするように…また光る。

 また二度三度と光り終えると…静かに飛び立ち、仲間の元へと帰っていった。


 私に“報告”をしてくれたゲンジボタルを見送ると…私は「どうか、私を恨んでくださいね…蛍、いのり」と、言葉を発した。


 ――私の言葉に蛍といのりは、私の目の前で跪いた。


 蛍は「とんでもございません、巫女姫様」と、返答をすると…いのりは「巫女姫様のお陰で…やっと、わたし達の悲願が叶いましたっ…感謝のお言葉しかございませんっ!」と、言い終えると…直ぐに二人から「ありがとうございました!」と、息を合わせて感謝の弁を述べた。


 私は、蛍といのりの感謝を静かに受け取ると「長年の“約束事”は、本日もって完了とすることを現『巫女姫』が、宣言する――…異議のある“モノ”は、述べよ」と、発言をした。


 私の“発言”を聞き入れた『モノ』達は、ほんの一瞬だけ騒いだ――…が、私が積み重ねた長年の実績と実施を目の当たりにしたので、シンと静まった。


 私は、今も口元以外黒装束に身を包んでいる――…私なりの無月を含む土地神様を守るための“盾”であり『害』をなせば殺すための“剣”である。

 矛盾していると捉えられるが、苦肉の策で編み出された“切り替えられる”最低限の攻防具だ。


 要は――。

 今の私は「反論した“モノ”は、有無を言わさず殺す」という目的を目の前で証言をしており“剣”と化しつつ、静まり返る『モノ』達に口元だけの冷笑を向けている…何せ、この『モノ』達のせいなのだから――…それくらい、許される。


 ――私から『モノ』達への“恨み”だ。


「異議なき“モノ”は、直ちに失せよ」


 また私の発言を聞き入れると、蜘蛛の子散らすように『サササ…』と“モノ”達は、一目散に退散していった。

 その様子に私は、思わず笑みを深めた…呆れの笑みを――。


 しかし、直ぐに不快な笑みを取り除いた。

 大事な日だからだ。


 私は、またホタル池の方を向き直ると「(無月…もう放しては、駄目だからね?)」と、願いを捧げた。

 私の願いを届けようとしているのか…優しく風が、私の頬を撫でた。


「――蛍、いのり」

「はい」

「何でしょうか、巫女姫様」

「…土地神様が、貴女達に授けた“印”を――…その顔は“取り除くな”かな…」

「「はい!」」

「そう…」

「巫女姫様のお心遣い、感謝いたします」

「しかしながら――…わたし達の『償い』は、終わっておりません」

「…土地神様の“役割”をするおつもりか?それはっ――」

「構いません、巫女姫様」

「あたし達の“意思”であり恩返しなのです」

「過去、冬霞を…助けられなかった『罰』を死ぬまで、全ういたします」

「蛍…いのり…」

「わたし達は、巫女姫様と土地神様に感謝しております…もう“尼”としてではなく、冬霞ちゃんの従姉妹として生を授けていただきました」

「あたしは、一時的とはいえ…孤児院で“姉”をしていました…でも、まさか…あたしの生き別れた姉が『紅染村』の尼していると聞いた時…驚きしかありません」

「もっと、驚く事があったものね…」

「うん…でも――…あたしが、駆けつけた時…冬霞は…」と、当時を思い出したのだろう…蛍は、悔しそうに胸元まで、運んだ両手を思いっきり握り拳を作った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ