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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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6-4 二人の時間と前夜の準備をする(4)

書き直しと書き足しに手間取ってしまい、遅くなってしまいました。

申し訳ありません。

よろしくお願いいたします。

 ペンダントを身に着けてくれた夫は「ありがとう、冬霞」と、嬉しさからか今にも泣きそうな顔をされてしまったが…私は「手作りの結婚ペンダントで、ごめんね」と、謝ると夫は「とても嬉しいよ、冬霞」と、言いながら抱き締められた。


 夫からの抱きつきに驚いたが…私は「うん」と、少し照れてしまった。

 その後…明日の『祝言』のための準備があるため、寝る準備をし共に就寝した。


 しかし、緊張で寝付けなくて何度も寝返りをしたり誤魔化すが…頭の中では『結婚』と『幸せ』の文字がチラつかせ、まるで妨害するかのように寝付かせてくれずに…困っていると、夫にスルッと胸の中で固定されてしまった。


 夫から馨る…優しく仄かな桜の馨りが、私を包んでくれた。


 夫の香りに癒されていると、あんなに頑なにへばり付いていた緊張が簡単に消え去り、足止めされていた睡魔が遠慮なく襲われながら「おやすみなさい…ルイ…」と、夫に伝えると「おやすみ、冬霞…いい夢をな」と、囁きながら私の頭を撫でてくれた。


・・・・・


 ――翌朝、カーテン越しから陽の光が差し込みながらスズメや小鳥の囀りが聞こえた。


 寝ぼけた頭と目を覚めると、昨夜と同じように夫に抱き締められたままだった。

 私は、気持ち良さそうに寝息を立てている夫を起こさないように出来る限り慎重に抜け出し、朝の支度をし始めた。

 部屋を静かに出て、回路のカーテンを開けると、暖かな日差しと見事な青天。


 まるで、お天気が今日の『祝言』を祝福しているかのようだった。


 嬉しかったので、思わず合掌し「(ありがとうございます)」と、お天気に向けて感謝を伝え願った。

 その後は、普段と変わらない時間を過ごした。


 時間までの間、蛍ちゃんといのりちゃんが私とお腹の子供のために絵本を読み聞かせてくれたが…時々、蛍ちゃんといのりちゃんが…衣紋掛けに掛けられている私が、着る花嫁衣裳であり紅花染めの赤無垢を見ていた。


 寂しげに見つめる二人に私は「蛍ちゃん、いのりちゃん」と、呼びかけると…二人は「「!な、何?冬ちゃん」」と、息ピッタリな反応した。

 私は、ロングパーカーのポケットから二つの小箱を取り出し「早いけど…私から誕生日プレゼント」と、差し出した。


 差し出された小箱を二人は、驚いていたが直ぐに今にも泣きそうな顔になりながらも私から小箱を恐る恐る受け取ってくれた。


 二人は「開けて、いい?」と、聞くと私は「勿論」と、答えると直ぐにラッピングのリボンを外し小箱の中身を見て、大粒の涙を流した。

 小箱の中身は、蛍ちゃんといのりちゃんの誕生石と小物の付いたブレスレット。


 二人は、直ぐにブレスレットを付けて私に見せ「ありがとう!大事にするね!」と、言い終えると「ふぇっ…」と、限界だったのか大泣きされてしまい慰めるの大変だったが、私の気持ちを受け取ってくれた。


 落ち着きを取り戻した蛍ちゃんといのりちゃんと過ごしていると、いよいよ準備の時間になってしまった。

 私を呼びに着た里見叔母さんに付き添われながら…着替えるため結婚衣装のある部屋に移動し襖を閉めた。


 私は、用意された椅子にちょこんと座り待機していたが…緊張に襲われた。


 前世の時もそうだったが…仮祝言の時にも花嫁衣裳を着たが、やはり緊張するものだ。

 そんな私に里見叔母さんは、仮祝言と同じのように勇気付けの魔法に掛けられながらテキパキとメイクと結婚衣装の着付けを…あっという間に完成させた。


 祖母直伝の着付けを受け継いだ里見叔母さんの手際の良さに…感服する一瞬だ。


 着替え終えると、様子を見に来た蛍ちゃんといのりちゃんに感動されながら式の時間を待っていると、何となく…左手の薬指から覗く指輪が光り、ふと思い出す。


 ――遡ること、約4時間前。


 私が、彼に手製の『結婚ペンダント』を渡して…彼が“最後の勤め”を無事に終えて、帰宅した時だった。

 彼から「もう…冬霞から受け取っているが…」と、言いながら私に申し訳無さそうに…私の左手を優しく掬い上げた後――…漆黒の指輪を私の薬指に静かに嵌めてくれた。


 私の左手の薬指には、彼の“友人”さんからの贈り物――。


 美しいオニキスの指輪で…中央部分に大きな赤い宝石『レッドダイヤモンド』が、埋め込まれた一品が、目に入った。


 私は「(彼と…同じ、綺麗な紅色…)」と、思わず見惚れてしまったが…彼から赤い宝石の名前を聞いた時、硬直してしまった。

 間違いがなければ…この『レッドダイヤモンド』は、希少であり高価。


 ――結婚指輪…と、彼から伝えられた。


 既に私の手製ではあるが“結婚ペンダント”の事を嬉しさから…彼の友人さんに自慢したらしく…いや、恥ずかしいです!


 そして――。


 硬直状態で、心の葛藤をしている私を他所に…彼は、持ち上げられた私の手は…そのまま、彼の唇に優しく置かれた。

 彼の行動に…また赤面してしまった。


 まるで、恋愛小説やマンガの名場面のようだ。

 彼に…何度もしてくれているが…嬉しいけど、恥ずかしく、恐れ多いっ…。

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