6-3 二人の時間と前夜の準備をする(3)
また書き直すと思いますが、よろしくお願いいたします。
――肉親という身内なら尚更だ。
しかし、私の夫に対する『気持ち』は、ずっと変わっていない。
母と姉に「分かってほしい」という気持ちと諦めている気持ちによる変な板挟みに葛藤しながらも…何とか、書き終えた頃に…心配した夫に抱き締められた事があった。
気づかなかったが…何時の間にか、泣いていたらしい。
そういえば…と、両目が痛くて熱かった。
その後、夫に「側に居たのに…気づいてやれなくて、すまない」と、謝られてしまった。
私は「違うよ、ルイのせいじゃない」と、次の言葉を言おうとしたら夫は「いや、我のせいだ…冬霞を生んでくれた母・春菜と姉・秋名から冬霞を…」と、言いながら私の両手を優しく握ってくれた。
何度も何度も謝る夫の言葉に私は「やっぱり、ルイのせいじゃない…私が選んで望んだ事だよ」と、否定した。
それでも夫は、何度も謝っていた…私は、夫を抱き締めた。
よく夫が、私を慰める時や元気付ける時にしてくれる行動の一つだ。
夫は、私の行動に驚いていたが「…ありがとう、冬霞」と、お礼を言ってくれた。
・・・・・
そんな事を思い返していると、あっという間に食事が終わり…食器の後片付けをしていると祖父が、帰ってきた。
一時食器洗いを中断し、叔母と一緒に出迎えると、東京の銘菓『ひよ子』と『シュガーバターサンドの木』と『いもレーヌ』の入った紙袋を既に出迎えていた蛍ちゃんといのりちゃんに「お土産だよ」と、言い手渡していた。
祖父からお土産を受け取ると蛍ちゃんといのりちゃんは「ィヤッター♪」と、小躍りしながら喜んでいた。
私達に気づくと…祖父は「ただいま」と、にこやかに言うと私達も「おかえりなさい」と、言うと祖父の言葉に気づいたのか直ぐに私達の元に駆け寄り「ステキお菓子だよー♪」と、紙袋に記載されている店名をパッと、見せてくれた。
数個の紙袋を見て早々、里美叔母さんは「あらー♪早速、お茶の準備しないとね」と、ウキウキしていた。
すると、祖父に「こらこら…もう夜だから明日にしなさい」と、言うが…蛍ちゃんといのりちゃんは「これからテスト勉強するので、糖分補給が必須ですっ!」と、力を込めて即答した。
二人の力説に祖父は、困っていたが「んー…この前もそう言ってなかったか?」と、思い出したように聞くと二人は「気のせいですよ」と、また即答していた。
すると、見かねた里見叔母さんは「はいはい、とりあえず移動しましょ?冬霞ちゃん、食器洗いの方は大丈夫だから先にお風呂に入ってらっしゃい」と、言うと直ぐに叔母の言葉に過敏に反応するのが蛍ちゃんといのりちゃん。
しかし、里見叔母さんは「これからテスト勉強するんでしょ?お父さんが買ってきてくれたお菓子を出すわね」と、言うと…蛍ちゃんといのりちゃんの様子が「どうしたら…!」と、葛藤し始めていた。
そして、祖父に「二人は、里見が…何とかするから言葉に甘えてお風呂に往ってきなさい」と、誘導された。
私は、祖父と里見叔母さんのお言葉に甘えて自室に戻り、着替えを持って浴室に向かった。
数十分後に湯船から上がり、着替えを済ませ脱衣所から居間に向かうと祖父と里見叔母さんの会話が聞こえた。
会話の内容は、ショッピングモールに立ち寄り、お土産を買いにエスカレーターに向かっていたら買い物中の私の姉・秋名に逢った事を話してくれた。
そして、レストランで昼食を食べた事。
姉の知り合いの方々に会った事。
私が、書いた手紙を手渡してくれた事を話していた。
祖父達の話しを立ち聞きしてしまったが…ひょこっと、居間に顔を出した私は「お風呂、上がりました」と、祖父達に報告した。
居間には、蛍ちゃんといのりちゃんの姿がなかったが…自分達の部屋に戻り宣言通りテスト勉強をしているそうだ。
私の登場に里見叔母さんは「わかった、そぅそぅ…はい、冬霞ちゃんの分」と、二人分の祖父が買ってくれたお土産の三種を手渡してくれた。
そして「お風呂の事は、私が伝えるから早く戻ってあげて」と、言われてしまった。
私は「分かりました、ありがとうございます」と、礼を言い終えると急いで自室に戻った。
私の姿が見えなくなると…祖父は「いよいよ、明日か…」と、ポツリと寂しげに言った。
祖父の言葉に里見叔母さんは「そうですね…でも私達には、見守る事と見送る事しか出来ません」と、言うと祖父は「そうだ、な…」と、まだ寂しげな顔だったが意を決するように覚悟を決めていった。
・・・・・
お風呂上がりのせいか、まだ火照る身体を冷ましながら部屋に戻った私は、ちゃぶ台に叔母から受け取った二人分の茶菓子の準備をしていた。
すると、私の背後から優しく夫に抱き締められた。
私は「ビックリした…後ろからの抱き締めがルイのマイブームなの?」と、聞くと夫は「嫌?」と、質問返しをされてしまった。
夫の質問に私は「嫌じゃないけど…心臓に悪い…」と、言うと夫は「それは、悪かった…我の大事な妻と愛しいやや子に酷い事してしまった」と、謝りながら抱きなおしていた。
私は、しょんぼりする夫の手を私のお腹に置いた。
夫の手を置くと、お腹の中でスクスク育つ赤ちゃんは『ポコン』と、直ぐに返事をするかのように反応していた。
我が子の反応に夫の目は、丸くなっていると私は「私もこの子は、気にしていないよ」と、夫を抱き締めた。
私と我が子の行動に夫は「ありがとう」と、お礼を言われてしまった。
その後、祖父からのお土産を一緒に食べていると私は「ルイに渡したいのがあるんだけど…受け取ってくれる?」と、言うと夫は「我に渡したい物?勿論、受け取るよ」と、ワクワクとした好奇心に満ちていた。
夫の好奇心に緊張しながらも私は、いそいそとカバンから夫に結婚指輪ならぬ…手作りのビーズと天然石であり私の誕生石であるルビーを使った結婚ペンダントを取り出し、手渡した。
ペンダントを受け取ると夫の目は、キラキラと輝いていた。
そして、夫に「付けて良いか?」と、聞かれた私は「うん」と、頷くと直ぐにいそいそしながらペンダントを首に掛けてくれた。




