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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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5-8 ある“青年”の昔話(8)

立て続き投稿です。

よろしくお願いします。

 その行事が行う前に…また、我の住む場所が狙われた。


 ――これで、二度目だった。


 今度は、何処かの大富豪だった。

 どうやら国の命により村付近での道路整備の工事のついでに投資した一人だったらしく、視察して早々に貴族一家と同じように発言した。


 開いた口が塞がらなかった…が、また惨殺すると村人達が爆走してしまうため、大富豪の周りからジリジリと締め上げるように“不幸”を与え続けた。

 赤紙を受け取り戦死扱いされていた父親と兄を再会させ、親兄弟の戦死による莫大な保険金を豪遊生活をしていた大富豪の大慌てっぷりは、見物だった。


 その結果、思い通りになったが…その大富豪の母親が、あの『土地神の花嫁』の時に借金苦で村の強制的に一時的に嫁がせた娘の一人だった事を知った。

 その娘の残された家族の事を何とかしたかったため、また子供に化けて訪ねていた。


 病気がちの両親を治したり、幼い弟妹に簡単な読み書きを教えたり、他の子供達に混ざりながら一緒に遊んだりの簡単な世話をさせてもらった。

 すっかり病気が、治った娘さんの両親に感謝され「礼をしたい」と、言われたが断り…さっさと姿を晦ました。


 その後の娘の両親は、我を探すために…近隣や村長に事情を話したら口々に「土地神様じゃないのか?」と、あっさりバレてしまった。


 直ぐに娘の両親は、一緒に我の住む社にまだ病み上がりだというのに…身体を鞭打ちしながら参拝し、感謝の言葉と必死に掻き集めたのだろう賽銭を奉納しようとしたところを我は、また子供に化けて姿を現す事にした。


 我の姿を見て早々…ひれ伏し続ける両親の手をそっと置き「気持ちだけを受け入れる、そのお金で病み上がりの身体のために使うようにな」と、言い消えると娘の両親は「ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!」と、また感謝の嵐だった。


 ついでに世話をしていた時に娘の家族を苦しめていた借金地獄にした取立て達は、その家族だけでなく他の家庭を壊しつつある手荒な事を何度もしていたので『躾』を与えたら暫くの間、来なくなった。


 その取立てが来ない間、何とか借金を返済出来る金額まで溜め込みに成功した家族は、一家総出で借金の返済金を出向き叩き付けたと思ったら借用証を奪い取ると同時に激しく『ビリビリッ』と、激しく音を立てながら破り捨て床に叩きつけ踏みつけた。


 家族は、気が済んだのか疲れからか息が荒く呼吸しながら娘の父親が無理矢理、呼吸を整えながら銭貸しを睨みつけ「二度と借りんっ!」と、声を荒げた。


 娘の父親は、銭貸しに言いたかった事を無事に言えた事に満足し「お邪魔しましたっ!」と、また声を荒げ終えると連れて来た家族と一緒に素早く銭貸しの事務所を後にした。


 銭貸しの雇っていた取立ては、家族総出と剣幕と出来事についていけず呆気に取られ身動きが取れなかったが、直ぐに状況を理解した幹部の一人が後を追おうとしたところを銭貸しが、止めた。


 ――何故なら『我』の存在。


 我の警告を無視したため、銭貸しの親戚の鰻上りで成功を収めていた事業の倒産。

 自身の愛娘である三姉妹の内、長女が流行り病で亡くしたと思ったら…今度は、次女が交通事故で死去したからだ。


 相次いで親族の不幸と愛娘を次々と亡くしているため、すっかり我の存在を実感し恐れていたからだった。

 自分の妻と親戚に「土地神様に今までの悪行をした事を謝罪しに行くぞっ!」と、口々に怒鳴られたらしい。


 後に村長宛に銭貸しから謝罪文と『謝罪金』と書かれた多額の寄付金を送ってきたらしい。


 村長が我の元に報告してくれた。

 その数日後、村長宅に銭貸しが家族と共に改めて謝罪という事で更に多額の寄付金を包み訪ねたらしい。


 金銭は、困るものではないが…あまりの多額の金銭に驚きから流石の村長は断ったが、銭貸し一家が「ご迷惑をかけた土地神様へのけじめですのでっ!受け取ってくださいっ!」と、ひれ伏したまま、頑なに寄付金を村長に押し付けながらそそくさと村を後にしたそうだ。


 銭貸しからの思わぬ二度も受け取ってしまった多額の寄付金の一部は、我の住居である社の建て直しと周りの整備、植樹された木々の管理確認や除草作業、村の歩道や道路の整備等に費やさせて貰ったが逆にお釣りが何度も来る結果に収まってしまった。


 そして、何時の頃だったか…まだ巫女と出会う二十年前だろう。


 銭貸しの寄付金のお陰で、村の風景が徐々に変化し続けているが、我の住む社だけは変わらせずに何時もの勤めをしていた時に若い男女が参拝しに参った。


 社に着いて早々、女性は「お久しぶりでございます、土地神様」と、言いながらひれ伏した。

 女性と一緒に来た男性も同じように土下座をした。


 突然の事に驚いたが…女性は、静かに語りが再び驚いた。

 例の銭貸しに苦しめられていた家族の娘で、恒例行事となっていた我の『土地神様の花嫁』で、逃がし続けた娘の一人だった。


 女性は、今流行の新品の洋服を身に包んでいたが、スカートの膝下部分が汚れているにも拘らず何度も何度も額に地面が着くほど頭を上げずに感謝の言葉の嵐だった。

 男性も同じように「土地神様のお陰で、素晴らしい出会いの末に婚礼いたしました」と、娘と男性の婚礼報告をしてくれた。


 後に娘は、事の経緯の事を話してくれた。


 村から逃げ切った娘は、無事に上京し、住み込みの喫茶店で働いていたが、喫茶店の常連客だった婦人に気に入られ、喫茶店の店主の勧めもあり承知した。

 その婦人と共に着いた場所が富豪家で、住み込みのメイドとして新契約したそうだ。


 その雇い主が人情深い富豪家で、他にも自分と同じように家を飛び出した若い男女の住み込みの使用人の人達も居たが、快く歓迎され自分と同じように実の子供のように良くしてもらったそうだ。

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