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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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5-6 ある“青年”の昔話(6)

立て続き投稿です。

※また暴言・出血シーンを書きましたので、苦手な方は、お引き取りください。

よろしくお願いします。

 我は、父の遺髪を受け取った。

 下男と女中の姿が見えなくなると…我は、父の遺髪が埋まっている場所を直ぐに掘り起こし、遺髪の入った箱を社の中に移動させた。


「今宵から雨が降るから…」と、言いながら箱を大事に抱き締めた。


 その後も父の思いを引き継いだ、女中と下男の参りが続いた。

 後に子々孫々、受け継がれていたが…やはり、年月が経つと同時に足が、運ばなくなっていったが…時代の変化と共に別の土地に行く者が増え、先祖の遺言を引き受けた子孫達が我と父に供養にと国との交渉し御神木として梅や桜の木々を植樹をしていった。


 ――嬉しかった。


 我も父も先に亡くなってしまった母と祖父母も好きな花だったから…しかし、せっかく植えてくれたが“時代の変わり目”と、言わんばかりに回避不可能な戦争が起こってしまった。


 江戸の後期から明治の世になるにつれ、戦を機に元々の異国から一部の流通から全国に行き届くように一気に加速する世に変貌を遂げ始めた。


 しかし、未だ頑なに受け入れようとしない地域が多かったが…逆らえない圧力と権力が津波のように飲み込まれ変化していった。


 特に服装や髪型が大きいだろう。


 元々、天皇家や貴族等しか着れなかった洋服が一般の人達にもと着続けていた着物から洋服に変わった。


 男の髪型は、断髪令が下り…先取りではないが、髪形を整えず丁髷や髪を一本に纏めた髪型ではなく、髪を調えながらバッサリ切る短髪に変わっていった。


 ――しかし、中には「断髪行為は、切腹と同等!」と、根強く残っていた武士の人達が抗議したが思いが…届くわけなく、泣く泣く受け入れる者が居れば中には「断髪は、恥じ!」と、言い残し切腹や首を吊る自殺する者、断髪令が下っても反発として受け入れない者がいたが…その受け入れなかった者の末路は、決まっている。

 必ず役人により強制的に断髪されるからだ。


 女性も同じだが、まだ『自由』を楽しむ者は、少なかった。

 まだ洋服は、高級品だったため…手に出せないので、変わりに着物と断髪した女性達が、目立ち始めた。


 しかし、断髪をすると決まって…親に「恥さらし!」と、罵られながら絶縁された者が多く…行く宛てのないまま町に向かえば、最先端という『流行』として好機の目があれば、親と同様に「恥じ者!」として白い目で、見られる“見世物”のような存在になっていった。


 国が『受け入れた』からという名の泣き寝入りのような結果の日々が続く中…早く受け入れた急ぎ足で、時代がガラリと変わるが…人間の心は、まだ抵抗心からかゆっくりとした牛の歩みで離れ離れのようだった。


 母国である日本特有の文化が次々と殺される感覚だったが、成すすべがない。

 次から次へと新たな文化や食事、衣服、髪型、政治等がトントン拍子に変わっていったと思ったら何時の間にか失われたはずの日本特有の文化が復活したりの繰り返していった。


 そんな二転三転と変化し続ける文明に「(何かしたいんだ?)」としか、思わなかったが…我も我で何時の間か開拓した新たな山村の『土地神』として、祭り上げられていた。

 その変化の対応と忙しさが酷かったが…自棄になっていたのを憶えている。


・・・・・


 あの時に捨てられてから…新たな『山霊という名の土地神』となり、既に50年の歳月が…あっという間に流れていた。


 時代と共に離れ離れだった村が…国の命により合併し、一つの山村だが人里となった。

 その山村に住む村人の人達の多くは、合併する前から参列してくれていた村人が中心だった。

 そんな変わり続ける時代の中で、父が建ててくれた社を大事に管理してくれた。


 月に一度か二度ほど、草取りや建て直しが必要な部分が見つかると直ぐに実行を移してくれていたので、当たり前だが、その礼に野菜や米、果物の実りを好くしたり、必要とあれば雨乞いを施し住みよい豊かな人里としては、何時の間にか誰もが憧れる有名な人里になっていた。

 そんな中、我の住む場所が二度ほど狙われた。


 今、思い返しても腹が立つ…一度目は、ある貴族一家だった。

 村人達からの反対運動があったようだが聞き入れずに何の断りもなく、住居に踏み弄りながら「この辺りに建つんだぞー」と、言いながら意気揚々と自分の子供達に自慢していた。


 この貴族一家を見て早々に「(馬鹿か?)」と、しか思えなかった。

 そんな連中を見ながら…不意に殺した後妻を思い出した。

 あの後妻と同様に馬鹿発言と行動しかしなかった。

 嫌な記憶に対し苛立ちと腹立ちしか起こらなかったため、一家纏めて殺した。


 我を見た連中の顔――…とても苦笑ものだった。


 初めは「私の所有地に無断で、入ってくるな!」と、罵倒していたが…我が『土地神』と知ると、嘲笑し始め、また罵倒し始めた。


 我の堪忍袋が切れる前に諭しながら帰りを進めても聞かなかったので「早いが…我の食事にする」と、静かに言うが…聞くわけがなかった。


 仕舞いに「出て行けっ!」と、男に石を投げつけられそうだったので…石を持った男の右腕を破裂させた。

 破裂した拍子に血煙と血飛沫が螺旋を描くように舞い散りながら…周りに居た家族と使用人の顔と服がベットリと浴びた。


 突然の出来事に我以外の連中は「えっ?」と、言いたげより先に目を丸くしながら自分達の今の置かれた状況を嫌でも知った後に「ぎゃああああっ!」と、悲鳴のような絶叫を上げながら尻餅をした者がいれば…未だ状況が分からずにキョトンと呆然と佇む者、自分の父親だが…血の感触が気持ち悪いのか、泣きじゃくる子供達、嫌でも状況を理解し自分の主人の元に駆け寄り手当てをしようにも恐怖からか、かじかむ指のため上手く手当てが出来ず止血を失敗し続けていた。


 一方、腕を破裂させた男は、鋭く鈍い激痛のせいか…悲鳴を上げれずに歯を『ガチガチッ』と、鳴らしながら…恐る恐る我を見上げた。

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