5-2 ある“青年”の昔話(2)
また暴言・流血シーンを書いてしまいましたので、苦手な方は、お引き取りください。
よろしくお願いします。
――どのくらい殴られ続けたのか?
分からない…何時の間にか、気絶していたらしく我が目を覚ますと真っ暗な麻袋の中…耳を澄ますと、騒がしい虫の鳴き声が響き渡っていた。
目を覚ますと…同時に全身が、激痛に包まれた。
痛みに耐えながら我は、何とか動く指を麻袋を探り続けると「(ご丁寧に麻袋に入れられてるが…幸か不幸か、使い古しで…穴だらけだ、破けるな…)」と、思い立ちながらも…全身痛かったが、我慢し外が気になっていたから直ぐに麻袋に開いたあった穴を中心に『ビリビリッ』と、簡単に破く事が出来た、が…息苦しさもあったから痛みを退け跳ねるように飛び起きた。
目に映ったのは、どこかの森の中に居た。
何時まで、気絶と言う名の眠り続けたのか…大人よりも背の高い森林の枝から覗く空の様子は、どっぷり真夜中だった。
あまりの急な出来事に「(本当に棄てた、か…)」と、思いながら継母のクズっぷりの厭きれから来る清々しい気持ちの方が強かった。
広い森の中で、一番大きな幹を持つ樹木に背もたれをし痛みが引くのを待つしかなかった。
痛みが引くまでの間『ガサガサッ』と、激しく草木が揺れ飛び出してきたのは、野うさぎやイタチだったが…我の血の臭いを嗅ぎつけてきたのか、野うさぎを追ってきたのか分からないが…3匹~4匹の狼の群れが我を囲った。
狼の口からは、空腹なのか…ヨダレが、凄く地面をポタポタと流れ落ちていた。
だが、そんな狼の群れを見ても我は、何も思わず…考えずに深い溜め息しか吐かなかった。
時折、ウロウロと左右に移動したり、にじり寄ったりしていたが…何の反応を示さない我に痺れを切らしたのか、1匹の狼が飛びかかろうとしたが『何か』を察知したのか、いそいそと群れを引きつれ森の奥にと姿を消していった。
狼達の様子に我は「(狼の次は…熊、か?ハァー…本当に笑える人生だ)」と、嫌気の自暴自棄になりかかった時――…フッと、視界が真っ暗になった。
既に夜で、暗く…目が慣れて薄暗いものの木の形とか見えていたのにと、思っていたら『声』が聞こえた。
その『声』は、耳から入ってこないが…我の頭と心に直接、話しているようだった。
その『声』に理由を聞かれたが…痛みで、喋れなかったから心で…思った事を話してみた。
「(――継母と連れ込んだ男にぶん殴られ続け、何時の間にか痛みで気絶して…気がついたら麻袋の中で…その麻袋を破って、出たら此処に居た)」
『・・・・・』
「(分かるわけない、か…心を読めるわけが――)」
『復讐シタイカ?』
「(…え?)」
『モウ一度、問オウ…復讐シタイカ?』
「・・・・・」
その『声』の主からの思わぬ誘いだった。
しかし、見ず知らずの誘いを飛びつくと痛い目に遭った人が居た話しを思い出し、試すようで悪いが「(…手伝ってくれるのか?)」と、その『声』の主に聞いた。
すると『オ前ガ望ムナラ、ナ…』と、その『声』の主は、答えた。
我は、願ったりの誘いだが…悩んだ。
見ての通りの子供だし…衣服は、破れていないものの全身は、殴られた痣から来る痛みで身動きが取れない有様だと、話した。
すると『声』は『問題ナイ、我ガ乗リ移リ傷ヲ癒シ動ケル体ニスル』と…――。
その『声』の主の正体と企みを知ったのは、後だったが…継母に対する“復讐”する心が強かったため、深く考えず『声』の主に「乗り移っていい」と、ようやく痛みが引き…少し掠れた声だったが伝えた。
我の返事を聞くや否や『声』の主の重みが全身に掛かった。
まるで、微温湯の中に放り込まれるような感覚だったのを憶えている。
何時まで、目を瞑っていたのか…その『声』の主の言葉通りに殴られて痛かったはずの傷と痣が綺麗に消え動ける身体になっていた。
しかし、目がおかしい事に気づいた。
何がおかしいか…それは、まだ夜だというのに朝や昼のような視界…複数色に映っているからだ。
思わず我は「(声の主の力、か…?)」と、何となく確信し森を後にした。
主の力のお陰で、直ぐに屋敷に戻る事が出来た。
部屋に戻ってみると、我が使っていた部屋が継母の部屋になっていた。
祖父母から譲り受けた茶道の茶器や書道の道具は、捨てられていた。
極めつけは、使いやすかったのか…亡き母が使っていた鏡台を勝手に引っ張り出し設置しており我が物顔で、悠々と身なりを整えていた。
そして、継母は、父の子供か…あの男の子供か知らないが、身篭っていた。
嬉しそうに自分のお腹を優しく撫でていた。
母になれば、性格が変わるとか聞いた事があったため…試しに出てみた。
だが、我の顔を見るなり継母は「はぁっ?なんで?なんで、いんのよっ!」と、驚きながら声を荒げ何時ものように罵声と罵倒し始めた。
そんな継母を見て、我は「(やっぱり、な)」と、心に呟き継母の腹部を指差した。
――何となく行動だったが…指差すと同時に直ぐに反応があった。
突然、継母の顔色が一気に真っ青に変化しながら腹部を押さえながら耐え切らない激痛に悶え苦しみながら絶叫が部屋に響き渡った――…と、思ったら『ブチュッ』と、まるで…熟した鬼灯の実が潰れるような音と共に腹が破裂した。
腹部から破裂した臓器が散乱し、ドクドクと勢いよく噴出し、溢れ流れ出る血液が部屋中を濡らした。




