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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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5-1 ある“青年”の昔話(1)

あけましてあめでとうございます。

今回から『土地神』様のお話しを書かせていただきますが…暴言・暴力シーンがございますので苦手な方は、お引き取りください。

新年早々、申し訳ありません。

よろしくお願いします。

 我には、記憶も“心”が無い――。


 二度も“心”が壊れたからだ。

 記憶の方は…何時の頃、生まれたのか…?

 何者だったのか…?

 それすらも分からない…いや…ただ、単に憶えていないだけかもしれない…。


 でも…我もかつては『人間』だった事は、おぼろげだが憶えている。


 我は、今もだが…この昔から…この忌々しい両目の色のせいで、屋敷の堀の壁越しから同じ年頃の連中から暴言の嫌がらせを受け続けていた。


 知らないはずなのに?

 隠していたのに?

 何故か?…理由は、直ぐに分かった。


 何時だったか…我の自室にて、蘭医の先生に両目を診てくれていた時に奉公人である女中が『条約』を破り、治療中の我の両目を見て早々に絶叫を上げながら逃げ出した。


 今でも思うが…絶対に故意だろう。


 その女中は、逃げ回りながら大声で、他の使用人や家の周辺に住み人達に血相を変えて「鬼!鬼!鬼の子がいる!」と、言いふらしたそうだ…その結果だった。


 言いふらした下手人である奉公人は、当然、わずか3日にて強制解雇された。


 この奉公人…後で、知らされたが…元の職でも見聞きした本当だろうが、嘘だろうが、お構い無しの噂をばら蒔き、自らの首を絞める行為し続けていたようだ。


 その好奇心旺盛過ぎな性格が災いした結果とも知らずに…知らせを受け、遠出から来た親を引き連れ「解雇を取り下げろ!」と、玄関先で大騒ぎを引き起こした後に事情を知った親は「申し訳ございません!」と、平謝りをしながら自分の娘を叱咤の繰り返した後、自分の生まれ故郷である農村で償いの意味を込めて一生働かせる事と関わらない事を記した念書を書いてもらい幕を下ろした。


 当然、騒ぎを聞きつけた。

 この奉公人を紹介した所からも謝罪の訪問があり…その時に元女中の悪評を知らせてくれた。


 しかし、この元女中は…親と一緒に連れて帰るまでの間、最後の最後まで「私は、悪くない!」とか「子鬼を退治する手助けをしただけなのにっ!」と、全く反省の色が見られなかったため…親の監視の下、自宅謹慎になっていたそうだ。

 荷物を纏め終えると、直ぐに夜逃げのように何時の間にか住んでいた女中寮から姿を消していた。


 本当に厭きれる行動と言動しかしていなかったので、どうして雇えたのか…?と、疑問が膨らむばかりだったが、他所から来たためか…このような悪評まみれであっても詳細等を調べないのが当たり前な世の中。


 問題を起こす人でも生活に困っているのは、重々承知しているし理解をしているが…契約すら守れない者を何時までも雇ってあげられる懐の広さは、持ち合わせているのは限られているのが現状だろう。

 煮えきれない現実に目を瞑るしかない事実の毎日が過ぎていく中。


 我の心が壊れたのは、後の事…――母が肺病を患い、治療空しく…この世を去ってしまった。

 しかし、悲しみに暮れる暇は、なかった。


 まだ母を亡くして、日が浅く、悲しみを癒えないのにも関わらずに…まだ我が幼いせいと寂しい思いをせぬために再婚を急いだ父のせいかもしれぬ…。


 しかし、その再婚した後妻は…まだ十七歳という若さ。

 以前の問題女中と同等の“曲者”だった。


 十代特有の若さと奔放さと我儘が災いし、仕事の内容も全く知らないくせに口出ししまくった大馬鹿女にも関わらず…父の“後妻”という立場に立ち向かえず、耐え切れずに次々と下男と女中が辞めていき始めた。


 中には、祖父の代から仕えてくれていた重役の下男達も含まれていた。

 その人達には、我の目を見ても気にせずに優しく接してくれた唯一、我が『心』を開いていた人達だったため哀しかった。


 その辞めさせた後妻の言い訳は「古臭い」とか「流行らない」とか「煩わしい」とか…言う、下らない理由で勝手に辞めさせられていた。

 流石の父に叱られていたが、叱られたのが気に食わなかったのか…腹いせに鼈甲の髪飾りや高級着物を買い漁っていた。


 流石に厭きれ過ぎて、開いた口が閉じない日が無かった。


 そして、ついに我を更に邪険に扱うようになった。

 時々、ちょっかいを出す程度だったが…他にちょっかいを出す人がいなくなったからの我に対する馬鹿女の『躾』の始まりだった。


 本当に厭きれた事を憶えている。

 食事は、不幸中の幸いにも与えられていたが…殴る嵐の毎日だった。

 そんな虐待を耐える毎日を癒してくれたのが、母の形見である翡翠の帯止め――…だったが、その帯止めに目を付けられたと思ったら奪い取られた後…売られてしまった。

 売った事を嘲笑しながら態々、報告してくれた。


 悔しくて…。

 哀しくて…。

 寂しくて…。


 他に言える“負”の言葉が思いつかないほど、本当に厭きさせる事をしない馬鹿女だった。

 仕舞いに父の留守中に連れ込んでいた男に命令をしながら「アンタみたいな縁起の悪いガキが居ると愛する旦那様との“愛の結晶”が出来ないから~…棄てるわね」と、また嘲笑しながら言われた。


 ――耳を疑った。


 今までの間…これでもかと言う位、馬鹿発言と暴言と暴力に耐えていたが許せなかった。

 そして、何時の間にか馬鹿女を睨んでいたらしく「何?その面?」と、また殴り続けられた。


 その殴られた拍子に口の中を切ったのか血反吐を吐こうが、お構い無しに男にも「鬱憤晴らしに殴りなよ」と、吹っかけ殴らせ続けた。

今更ながら修正いたしました。

よろしくお願いします。

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