4-4 思わぬ再会(2)
すると、私達に気づいた辻本さんが「古城さん…?偶然ですね」と、声をかけてくれた。
秋名も「はい、本当に…」と、思わず祖父をチラッと見てしまった。
辻本さんは「あ、すみません…お食事中に邪魔してしまいました」と、祖父に謝罪をすると祖父は「いえいえ…秋名の知り合いですか?」と、質問すると辻本さんは「はい、大学の見学会に来ていただきました」と、淡々と質問を返していると「そうでしたか、もう来年から大学受験だったね」と、しみじみしていると…女性が「こら、蓬」と、言い終えると『ペン』と、軽く辻本さんの頭を叩く音がした。
直ぐに辻本さんは「すみません、菜種…つい知り合いと会ってしまいまして…」と、叩かれた頭をサスサスと摩りながら叩いた相手を振り向き謝罪していた。
スラリとした長身にシンプルで、カジュアルな服装とポニーテールが似合う綺麗な女性が、腕組みをしながら「いくら知り合いだからって食事の邪魔をして良いワケないだろ?…すみません、私の連れがお食事中に失礼いたしました」と、頭を下げ謝罪した。
女性の行動に思わず祖父は「いやいや…大丈夫ですよ」と、言うも女性は「いえ、そんな…」と、言いながら頭を下げっぱなしの謝罪をし続けているのを慌てて秋名も「い、いえ…そんな…頭を上げてください」と、言うと女性は「本当にすみません――…ほら、食べ終わったんだから行くぞ」と、言いながら辻本さんの右腕を引っ張ると辻本さんは「ま、待ってください~…前にメールで話した子なんですよ、菜種」と、慌てて言うと辻本さんの話しを聞いた女性は『ピタッ』と、直ぐに止まり「…マジ、か?蓬?」と、ゆっくりと辻本さんの方に向き直し聞きなおした。
女性の問いに辻本さんは「はい」と、頷きながら即答していた。
すると、辻本さんの腕を引っ張っていた手を放した女性は「マジか~…どうりで、なー…」と、言いながら髪をクシャッと握るように掻き分けた…と、思ったらジッと鋭い視線になり「蓬…話に聞いてたけど、やっぱ行くの止めときなよ」と、淡々とした一言を出した。
女性の思わぬ一言に辻本さんは「えっ?どうしてです、菜種」と、慌てて聞くと女性は「この子の妹様…ご自身の『意思であり希望』で、動いてる…要は“人の恋路を邪魔するな”で“邪魔すると馬に蹴られて死ね”と、言えば分かるでしょ?」と、また淡々とした解答を辻本さんに与えた。
淡々とした女性の言葉に辻本さんは「えっ!し、しかしっ…!」と、何か言おうとするたびに女性は「悪いが、拒否権と決定権は存在しない…それどころか…妹様は、過去の謝罪を籠めているし…さっきも言ったけど、他所様の恋路を邪魔行為をするつもりか?」と、また淡々と辻本さんに返答をし合っていた。
呆気に取られていると女性は「あ、変な事を言い続けてしまいすみません…私、無患子菜種と言います、蓬とは小学校時代の腐れ縁と言いますか…幼馴染の者です」と、簡単に自己紹介をしてくれた。
すると、辻本さんが「以前、話したと思いますが…例のオカルトに詳しい方です」と、付け加えると無患子さんは「確かにオカルトといえば、オカルトだが…巫女家系の分家って、だけなんだが…」と、言うと辻本さんは「それでも凄いですよ!あの時だって」と、言いかけると無患子さんは「大した事じゃないだろ?虫の知らせを言っただけだし…たまたまだろ?」と、面倒くさそうに言うと辻本さんは「その“たまたま”が多い気がしますが…」と、言うと無患子さんの上着のポケットから振動音が鳴っていた。
その振動音に厭きれながら無患子さんは「まーたダイレクトメールかな?」と、厭きれながらボソッと言いつつも上着のポケットから携帯を取り出し画面を確認した。
携帯の画面を見た無患子さん表情は、一瞬だけ険しくなったが…軽く考えた後に携帯を見てカチカチといじり終えると「ごめん、蓬…ちと野暮用が出来たから…本屋さんで、落ち合う?」と、辻本さんに聞くと「分かりました…先に新作の本と甥っ子に頼まれたマンガのお使いを済ませておきます」と、言うと無患子さんは「ありがとう、出来るだけ早く終わらせておく…ついでにレストランの勘定をさせてもらうよ」と、悪戯っぽく伝票を引ったくり足早にレストランの会計場に運んだ。
無患子さんの行動に辻本さんは「戻ったら1階のフードコートにあるソフトクリームでもご馳走しますかね…」と、困惑しながら呟いていた。
そして、また改めて「お食事中に申し訳ありませんでした」と、ペコリと頭を下げ謝罪した。
たった一日で、女性と男性の交互に謝罪に秋名は「い、いえっ…そう何度も謝られても…!」と、あたふたしていると祖父が「何時までも立たせているわけには、いきませんので…席にどうぞ」と、辻本さんに席を座るように促した。
辻本さんは「いえ、そんな…」と、断ろうとしたが祖父が「分家とはいえ、無患子家のご息女のご友人ですので」と、意味深く言うと辻本さんは「ご存知なんですか?」と、また断ろうとしていた姿勢をコロッと変え、いそいそと席に着いた。
その辻本さんの様子に祖父は「――大昔にお世話になった霊能者なのです」と、話した。
辻本さんは「大昔というと…もしや?」と、聞きづらそうに言葉を漏らすと祖父は「…全てじゃないでしょうが…秋名からお聞きになっているんですね?我が家に伝わり続ける“存在”を…」と、言うと辻本さんは、少し黙り俯いたまま「すみません…」と、謝罪した。
その謝罪に祖父は「謝る必要は、ありませんよ」と「他の方が見たらおかしいのは、明白ですが…――事実なのです」と、話し続けた。
祖父の言葉を聞いて秋名は「事実だからって何なの?何で、好き好んで生まれたわけじゃないのにっ…冬霞も同じはずなのにっ…!」と、憎悪を含ませた物言いを言いながら祖父を睨んでいた。




