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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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4-2 思わぬ再会(1)

 下校中の学校から出ると…下校中の生徒達が、行き来し混雑していた。


 中には、忘れ物に気づき…校内に戻る生徒や軽い悪ふざけをしながら歩く生徒達。

 携帯やスマホのネットを開きながら午後に打ってつけのオススメ・スポットを見比べる生徒達。

 塾に行くためバス停に向かう生徒達や先輩や違う学校に通っている男子生徒と付き合っている子に恋バナを聞きまくっている生徒も居た。


 ガヤガヤと賑わう生徒達をよそに秋名は、足早に学校前のバス停に向かった。

 向かう途中に友達に会い、呼び止められ買い物とかを誘われたが、用事を理由に断り、また足早にバス停に向かった。


・・・・・


 学校前のバス停に到着し、すかさずカバンからスマホを取り出しネットで「(あの辺の宿とホテルの予約っと…)」と、宿泊サイトを開くと同時にバスが着いてしまった。


 どうやら道路工事の影響で、交通時間が何時もより早い運行になっていた事を忘れていた――…ともあれ、何時もより早く来た事と予定していた買い物が出来るので越した事なかった。

 次々と乗り込む乗客の順番が回り、席に着き出発を待った。


 最後の乗客が乗り込み、席に着くと…バスの開閉音の後に聞き慣れたアナウンスと運転手さんの『出発いたします』の音声が流れバスを走らせた。


 バスが、走ること数分。

 バスの窓の外を何気に覗くと…町中は、もうお昼休みなのだろう。


 営業回りのサラリーマンやOLさん、学生さんが歩道を行き来している当たり前の光景に秋名は「(私達は…あの時で時間が停まったままになったのに…)」と、切なくなり挫けそうになるものの「(早く元の当たり前に戻りたいよ)」と、決意を胸に目的地の到着を待った。


 目的地を待つ間―当たり前だが、バス停留場が停まる度に次々と乗り降りする乗客が混雑する。時に一気に降りたり、乗ったりの繰り返す。


 そして、ついに目的地のバス停留場のアナウンスが流れると、直ぐに降車ボタンを押した。


 降車ボタンを押して数分間。

 バス停留場が近づくと同時に、お決まりの注意事項のアナウンスが流れると秋名は、いそいそとカバンの中からパスケースを取り出し降車をする準備をしながらバスが停まるのを待った。


 待ちに待った目的地であるショッピングモール前のバス停留所に到着し、乗車用と降車用のドアが開くと次々と乗客が、行き来する。


 その乗客に交じって、秋名も降車し目的地であるショッピングモールに足早に向かう。


 バス停からほんの1~2分しか経っていないのに変な息切れに襲われそうになったが、グッと堪え、また足早にショッピングモールの自動ドアをくぐり、1階ロビーフロアの目的の店の案内板を確認しながらエスカレーターに向かい乗り、3階にある旅行カバンを扱っている専門店に足を運んだ。


 店に着く前にも「(早く着いて!早く着いて!)」と、自分の心が無理に身体に言い聞かせて前かがむような変な歩き方になっていたが気にしていられなかった。


 秋名は、旅行用カバンを取り扱っている専門店に足を運んだ。

 毎年恒例だった、ピアノのコンクールに向けての夏合宿で使っていたトランクタイプのスーツケースが長年、使い続けていたせいもあり古く破損してしまったので買いに来たのだった。


 専門店に着くと店員さんの「いらっしゃいませー、ごゆっくりどうぞー」と、お決まりの挨拶を受けながら店内に入った。


 店内に入ると何人かのお客さんが来店しており、夏休み前だからだろう旅行に行くためにキャリーバックやボストンバックを見比べながら店員さんに相談をしたり見立ててもらったり商品の質問をテキパキと回答し、オススメの商品を説明したりしていた。


 秋名も何回か来店しているが「(旅行用のカバンって、意外と種類が多いんだなー…このトランクケース、アンティークで素敵だけど…)」と、思いながらキャリーバックが売っているフロアに足を急がせた。


 キャリーバックも種類豊富で、色のバリエーションも多く目を釣りしていると「ぅん?秋名?」と、声を掛けられた。

 思わず秋名は「え?」と、声を掛けられたほうを振り向くと「あっ…」と、間抜けな声を漏らした。


 ――思わぬ再会だった。


 ショピングモールのレストランフロアにあるイタリアンレストランに入ると店員さんに「いらっしゃいませー、何名様でしょうか?」と、祖父は「二名です」と、聞くと店員さんは「二名様ですね?当店は、全席禁煙となっていますが…」と、申し訳なさそうに話すと祖父は「タバコは、吸わないので大丈夫です」と、答えると店員さんは「畏まりました、個室座席とカウンターがございますが、どちらがよろしいですか?」と、聞くと祖父は「どちらがいい?秋名」と、聞かれ「座席…」と、何となく答えた。


 店員さんは「畏まりました、ご案内いたします」と、言いながら小型ワゴンを引いて空いている座席に案内し、私達が席に着くと「ご注文が決まりましたら、そちらにある呼び鈴を押してください」と、言うと祖父は「分かりました」と、答えると店員さんは「失礼いたします」と、一礼をし小型ワゴンから二つの空のグラスを取り出し水差しから水を注ぎ入れ終えると再び「失礼します」と、断ってからテーブルに水の入ったグラスに続き箸とスプーンとフォークの入ったカトラリーボックスを中央に置き「ごゆっくりどうぞ」と、一礼して小型ワゴンを引いて持ち場に戻っていった。


 店員さんと祖父とのやり取りが終わる一方、秋名の心の中では「(まさか…こんな町中で、会うなんて…)」と、思いながらも心のどこかで祖父との再会を喜んでいる自分に驚きを隠せなかった。


 母の父である祖父に再会するのは、あの時の冬霞が『七五三』の『七の儀』母の絶縁宣言以来だった。


 祖父も秋名と同じ、久しぶりに会ったからか嬉しそうだった。

 あの時、母が凄い剣幕で酷い事を言ったのにも関わらず…ニコニコと微笑んでいた。

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