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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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4-1 姉の決意

新章です。

古城冬霞の姉・秋名のお話しです。

 ――文月7月。


 すっかり、初夏から夏本番になりつつ頃――…待ちに待った夏休みを待っている事に胸が、躍る毎日。

 しかし…その前にやらないといけない恒例が、首を長くして、待っている事を忘れてはいけない…勉学の試練の一つ『期末テスト』の存在。


 既に学校では、期末テストに向け猛勉強中だが…休み時間になれば、すっかり毎年定番の夏休み中に行く予定で話題が、和気あいあいと盛り上がっていた。


 中には、会話に参加せずにコンビニや本屋で買った単体マンガや週刊系のマンガ本を先生を警戒しながら読書中の生徒も居た。


 ――何人かは、家族と海外旅行に行く人。

 国内で、家族と温泉旅行に行く人。

 小遣い稼ぎに夏季バイトに専念する人。

 運動部・吹奏楽部の強化合宿に行く人。

 父方か母方の祖父母が、住む田舎に泊まりに行く人。

 成績アップのために塾の夏期講習を受ける人。

 夏休み中に行われる夏期限定のコミケに行く人や夏休み中に新しい恋を見つける!人――…和気藹々と生徒達が『夏の目標』を宣言していた。


 そんな夏休みの新たな『思い出』のページを楽しみにしている人達をよそに一人の少女は、静かに考えていた。


「――古城さん?」

「谷原さん?どうかしましたか?」

「いや…さっき、先生と先輩から聞いたけど…今年の夏期演奏コンクールを辞退するって、本当なの?」

「…はい」

「どうして?そんな…何かあったの?」

「そうですね…――スランプと、答えたらいいでしょうか?元からある悩み事が風船のように膨らんでしまって…引けなくなってしまったんです」

「…そうだったの…」

「はい…もう下手すれば、ご迷惑になってしまうと思いましたので…」

「その事…先生には?」

「伝えました…――でも、落ち着いたら途中でもいいから参加してください、と…言われてしまいました」

「そう…」


 連絡事項を話しをしていると…もう休み時間の終わりを告げるチャイムが、鳴り響いた。


 そのチャイムに合わせ、せっせと席に着く生徒や先生が来るまで駄弁っている生徒、同じく先生が来るまでマンガを未だに読書中の生徒が、また別々に綺麗に分かれる。


・・・・・


 時間が経過し、あっという間に帰宅時間になった――…期末テスト期間でもあるため…午後の全部活動は、休部。

 職員室に用が、あっても立ち入り禁止だ。


 休部という事もあり、そのまま帰り支度を済ませ終えると、期末テストに向けて塾に行く生徒やコンビニで買い物に行く生徒、教師の許可を貰い夏休み中に行われる合宿に向けての日取りの確認・忘れ物などの注意事項会議のため移動する生徒と、また綺麗に分かれた。


 行き来する生徒に少し戸惑ってしまったが…古城秋名も帰り支度を済ませ、昇降口に向かうため階段の踊り場まで降りていった。


 すると、携帯のバイブ音が鳴り…通行する人の邪魔にならないように昇降口前にあるフリースペースに向かい、携帯を確認した。


 藤野先輩と辻本さんからのメールが、届いていた。


 メールの内容を確認すると…お二人からの心配メールだった。

 夏休みに“母方の実家”に行く事を知らせてしまったので、当然だった。


 彼女は「(また心配させてしまって、すみません…でも決めた事ですので、応援してください)」と、いう内容を返信し終えると軽い溜め息を着いた。


 携帯を仕舞おうとカバンのジッパーを開けると、パスケースが目に入った。

 パスケースの中を開くと、8歳の時にピアノのコンクールに一緒に撮った、自分と…妹・冬霞の写真が入っていた。


「(貴女と撮った写真が…この一枚だけ…)」と、思いながらパスケースを閉じ…優しく撫でた。

 彼女の悩みの種である、妹であった―夕顔冬霞を『土地神様』から奪還するために機会をうかがっていたからだった。


 夏休みに入ると、毎年恒例である夏の演奏コンクールに参加し優勝をし続けていたが…今年のコンクールを辞退したのだった。


 その事実に一部の音大の関係者達は「そこを何とか…!」と、学校や自宅まで押しかけ辞退を撤回するように話し合いが、昨日まで続いた。


 何度も何度も話し合いを行われたが、納得する人が少ない事に悩んだ。

 仕方なく…事前に相談していた父方の祖父であり今は、社長を引退し音楽コンクールを含め文武の大会の会長を務めているため一喝してもらった。


 汚いやり方なのは、知っている…しかし「(時間が無い!可能性が出来たから…!賭けてみたい!)」と、いう気持ちしかなかった。その気持ちを逸早く教えたのが母だったが、もう母は「諦めなさい…秋名…」と、もう自分の生まれ故郷である村と実家に関わりたくない一心と傷心を触れられたくないのだろう…その一言しか言われなかった。


 当然、また海外出張中で、留守にしていた父にも電話口にて教えた。


 しかし、父からも「冬霞自身が決めた事なんだから」と、言葉の中で言われながら「まだ…あの時の一件で、尾を引いてるのか?」と、言われているようで仕方がなかったが私の決心が強い事が分かると私の村に行く許可を貰った。


・・・・・


 数日後――…午前中だけの授業という名の期末テストが、始まった。


 一時限目の始業時間になるまでの間、今日もクラスでは、授業中に教えられたテスト範囲を確認する生徒や今日のテストのお陰で、早く終わるから買い物に付き合って欲しいとか買い食いに付き合ってとか話す生徒等に分かれる。


 そして、チャイムが鳴り響くと同時に席に着き始める生徒やチャイムが鳴っても未だに席に着かず駄弁っている生徒と別れる。


 何分かすると先生が到着し、まだ話していた生徒は、いそいそと自分の席に着いていく…生徒の席が着くと同時に朝礼をし、また席に着く。


 生徒達が全員、席に着き終えると先生は、一列の一席ずつにテスト用紙を配り始める。


 テスト用紙を渡された生徒から次々と配られていき、最後の生徒に行き着くと同時にテスト開始時間になると同時に先生は、黙々とテストの解答を勧めていく生徒の邪魔にならないように期末テスト後に行われると授業の考案作業をしていた。


 暫くして、カリカリカリカリ…コシコシ…――と、何となく耳を澄ませると…答案用紙にペンを走らせたり、間違えたのか消しゴムを書いた場所を擦る音が、反響し…響いた。


 数十分が経過すると…同時に手ごわい解答要求のテストに諦め小さく溜め息を吐く生徒や難問が、解けなく苛立ちながらシャーペンを器用にペン回しをする生徒や予測していたのか淡々とテスト問題を解いていく生徒、もう解くのを諦め問題用紙に自作の絵やオリジナル文字を書いて眠気を覚まそうとする生徒と分かれる。


 一時限目からとはいえ、容赦ない問題に四苦八苦するが…ようやく終わりを告げるチャイムが鳴った。

 チャイムが鳴ると…同時に生徒達は、張り詰めていた緊張が切れたのか何処からか深い溜め息を吐いた。

 後ろの席の生徒が立ち上がると同時に自分の答案用紙を順に次々と回収し、教師に手渡した。


 最後の生徒から回収し終わり、その生徒が席に戻ると朝礼と同じように生徒の一人が「きりーつ」と、一言を言うと同時に生徒達がガタガタと、次々と椅子を引きながら立ち上がる。


 そして「れーい」と、一声と共に生徒は教師に向け一礼をし終えた。


 生徒達の一礼を受けた教師も軽く礼をし、せっせと答案用紙と期末テスト後の授業の下調べを行っていたのだろうノートパソコンの入った手提げタイプのパソコンバックを持ち、教室を後にした。


 先生が、立ち去るや否や…何時もの休み時間に戻った――…一時限目の時と同様に二時限目、三時限目と繰り返す。


 三時限目が、終了すると…また朝礼のように挨拶を済ませると同時に軽く教室の床掃除とゴミ捨てをすませると、既に予定が決まっていた生徒達は、次々とカバンを引っつかんで友達と一緒に昇降口に足を急がせる生徒もいれば、まだ話し足りないのか雑談を始める生徒、今日も塾なのか携帯やスマホを片手にバスの運行状態と時間を確認しながら昇降口に向かう生徒と別れる。

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