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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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1-2 少女の回想・発端(1)

※今回から暴言ネタが含まれています。

苦手な方は、御引き取りください。

 何故、その村に向かっているのか?大きな理由は、極めて単純に…ただただ私が好きな場所の一つで、ある日を境に母と姉が「もう行かない!」と、いう理由で行かなくなってしまったが…私が祖父と叔母、従姉妹達に会いたいからだ。


 何故、行かないのかと母にいくら理由を聞いても「行かないったら行かないの!何度も言わせないで!」の一言で、終わらせられた。


 どうしてだろう?毎年、春休みとかの大型連休に当たり前に行っていたのに…私の居ないところで嫌な事が遭ったのか?その事も聞いても話さないだろうから別にいいとしても…私は、村だけでなく、お祖父ちゃんも(さと)()叔母さんも好きだし、従姉妹の(けい)ちゃんといのりちゃんとも仲が良かったから、やはり会いたい気持ちでいっぱいだった。


 でも正直な話し、お祖父ちゃん達よりも…何かに『惹かれる』感じがしたからと…好きな人が、そこに居るからである。


 私は、ふと新幹線の社内の窓に映る自分の顔を見て少し頬の辺りが赤くなっている事と微笑んでいる事に気づき、慌てて誤魔化すように新幹線に乗る前に駅内にあるコンビニで買ったミルクティーを飲んだ。


 ミルクティーを飲みながら、またふと思い出した。


・・・・・


 母と姉が行かなくなる前の事…それは、春休みを利用して母の実家に泊まりに行き、毎年恒例の行事である私を含めて従姉妹達との『七五三』の最後の儀が終わった直後だった。


 母屋の別室で、従姉妹の蛍ちゃんといのりちゃんと一緒にお喋りしながら七五三用の衣装から私服に着替えていた時の事、居間で寛いでいたはずの母が凄い勢いで、障子を開け怖い顔をしながら私を睨み近寄った。


 突然の母の行動に私は「お、お母さん?どうしたの?」と、恐る恐る聞くと直ぐに『ガシッ』と、私の右手首を掴み凄い強い力で振り回されながら部屋から連れ出そうとしていた。


 痛みに耐えられずに私は「待ってよ、まだ着替えが終わってない!痛い!」と、訴えても母は頑として聞き入れず玄関に向かっていた。

 痛みを我慢して恐る恐る玄関を見ると、既に帰る準備をしていた姉が待っていた。


 すると、バタバタと慌てて駆けつけてくれた里見叔母さんが「何してるの!姉さん!(ふゆ)()ちゃんが泣いてるじゃない!」と、母から私を引き離そうとした瞬間、母は叔母を殴り「煩い!もう我慢ならない!父さんもアンタも…何考えてるのよ!」と、逆に叱り付けた。


 ――意味が分からなかった。


 母の迫力に戸惑いながらも母は、私を姉に引き渡すと直ぐに倒れ伏せる叔母に再び怒鳴りつけ始めた。


 騒ぎを聞きつけた祖父にも今までの鬱憤を晴らすように怒鳴りつけ始めた。


 今まで、聞いた事も見た事のない母の声に怯えながらも姉は、母の言う意味が分かっていたのか淡々と私に着替えを整えながら…春とはいえ、まだ肌寒く山奥の村であったため冬用のアイボリー色のコートを羽織らせた。


 何が何だか分からない私に靴を履かせ終えた姉を見た母は「実家だったけど、もう帰ってきません!私達家族は、貴方達と縁を切ります!」と、祖父と叔母に向け、絶縁宣言をした後に泊まる予定だったはずの荷物を持って靴を履いた。


 母の剣幕に呆然とする私は、更に何が何だが分からずに姉が全身を使って覆い隠されながら玄関前に移動したと思ったら母の絶縁宣言を合図に母と共に実家を後にした。


 玄関から出ると足早に…あらゆる交通手段をフルに使い都会である自宅に戻ったのは、朝の4時になっていた。

 私だけじゃなく姉も母もクタクタだったが直ぐに寝室で、泥のように眠った。


 目が覚めると昼になっていた「(幸い春休みだったから良かったけど…)」と、思っても母に対し恐怖とモヤモヤとした気持ちが生まれていた。


 それからというのも春休みの間、何処にも出かけさせてくれなかった。

 寝ても覚めても見慣れた自分の部屋で過ごさせた。

 心配してくれた友達が訪ねて来ても「風邪を引いてね~」と、母が勝手に断っていた。


 春休みが開け新学期が始まると早々に母は、私にGPS機能が付いている子供ケータイを持たせ、行動を制限把握したがるようになりながら成績も悪くなかったのに塾や興味の無い稽古を習わせるようになった。


 そのため…友達とも交流が、減り続けた。


 流石に不審と不満に思い、思い切って理由を聞いたが…母は「貴女のためなの!」と、しか言わなかった。


 ――ますます、分からなかった。


 姉にも私と同じ事を受けているのかと質問してみたら「貴女のためだよ」と、まるで録音が出来る機械人形のように母と同じ言葉を聞かせられた。


 思わず「えっ?」と、聞き返したが何も言わず宿題の作業に姉は、戻った。


 母と姉の言葉に何時にも増して、またモヤモヤとした気持ちが風船のように膨れ上がっていくのを感じずにいられなかった。


 父に相談しようにも…当時、単身赴任で北欧中央に行っていて電話料金が高くなるからと父と母が、姉と私に父自身からの重要連絡じゃないと電話に出ちゃいけないと強く言われていたから『約束=掟』として、守り通していた。


 あの春休みの一件と、新学期早々の母の行動と言動に不審に思いながらも淡々と言われた事をこなすしかなかった。

ご迷惑をおかけしました。

脱字を見つけましたので、修正させていただきました。

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